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[Side Story] 久しぶりの帰省④
■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
久しぶりの帰省④
みなさま、
はとばみなとです。
舞さん、リビングの真ん中に置かれたテーブルの窓側の席に座ると、ゴロンと横になって思い切り伸びをしました。
「あー、なんか、なつかしーー。」
家にいた頃にいつも座っていた場所です。
「さあさあ、とりあえず、お茶でも飲んでね。」
お母さんが温かいお茶を入れてくれました。
「んー、おいしい。」
お母さんも座りました。舞さんの隣です。萌さんが向かい側に座りました。実はこの態勢は、舞さんと萌さんが小さい頃から良くありました。舞さんや萌さんが泣きながら帰って来た時とか、何か悩んでいる時とか。受験生の時は毎日のように、この態勢で話して、進路の相談とか将来やりたいこととか聞いてもらっていたのです。
「それで、何かあったの?」
お母さんが真剣な、でも、優しい眼差しで尋ねました。
「実はね、」
舞さんが話し始めました。ノースポール・プロジェクトに参加したことを。そして、来年、年が明けたらすぐに、ノースポールという大きな宇宙船に乗って、宇宙に出かけるということを。
そう、宇宙なんです。
「すごいじゃない、お姉ちゃん。」
萌さんは、純粋に驚いているようです。
「まるで、映画とかみたいじゃない。」
「うん。そうなんだよね。」
でも、お母さんは、少し不安そうな顔をしています。
「その、ノースポール・プロジェクトって、本当に信用できるのかしら? 何かの詐欺とかじゃないの、大丈夫?」
そうですよねーー。普通に考えたら、怪しさが炸裂してますよね。未来から来た宇宙船とか、異星人の侵略とか。どう考えても日常から掛け離れています。その辺り、舞さんが話を続けました。
「んー、あたしも最初は全然信用してなかったの。でも、その、未来から来た宇宙船というのが本当にあったのよ。みんな、見せてもらったの。フェリーくらいに大きくて、でも、ボロボロで。何かの爆発っぽい穴も開いてて、ほんと、壊れてるの。」
大雪基地で保管している『未来の宇宙船』は、プロジェクトからオファーさせてもらった方達には、基本的には、必ず見てもらうようにしています。もちろん、舞さんも見ていますし、中にも入ってもらっています。
『百聞は一見にしかず』
なので。一度見てもらえれば、本当のことだと理解してもらえるのです。
「それって、ハリボテとかじゃないの? 映画の撮影だと、そういう大きなハリボテも作るんでしょ?」
・・・、ま、まあ、そうですけれどね。でも、『未来の宇宙船』は間違いなく本物なのです。
「んー、そう言われるとつらいけど、でも、見た限りでは、ハリボテなんかじゃなくて、ちゃんと中身もあったのよね。コンピュータや通信コンソールも。通信コンソールも、確かに、見覚えのあるキーや、ボタンもあって、本物に間違いないと思うの。」
でも、お母さん、まだ、不安そうな顔をしています。
「本当に安全なのかしら? 宇宙って空気もないんでしょ? 引力もなくて体が浮いてしまうし、食事も普通のご飯じゃなくて、チューブで吸って食べるような宇宙食なんでしょ? あなたはそういう食事でもいいの?」
お母さんが疑問に感じるのももっともです。というか、誰でも感じる基本的な疑問だと思います。
「それがね、その、ノースポールっていう、私も乗り込む宇宙船は、人工的に重力を発生させるんだって。だから、食事も普通のご飯が食べられるらしいの。その、同じノースポールに乗り込む予定のシェフの人達が、日高基地のレストランで食事を作ってるんだけど、とっても美味しくて、みんなから、とっても人気があるの。」
舞さん、食事の話を、とってもうれしそうにしました。そう、確かに、日高基地のレストランのメニューは、どれも美味しいし、みんなの評判もとてもいいのです。
それから、ノースポールの艦内に重力があるというのも本当です。ですから、これまでの宇宙飛行士が行ってきた、無重力の訓練は受けなくても、ノースポールの艦内だけならば、何も問題なく生活することが出来るのです。
(つづく)
■宇宙巡光艦ノースポール
ただいま、kindleからの電子書籍の発売を進めています。
現在、以下のように、4冊が発売済、1冊が発売予定となっております。
※全巻、Kindle Unlimited に対応しております。
※続刊を隔週木曜日に発売すべく、鋭意、取り組んでおります。
■2024/4/18日(木)、発売予定!
・第2章 宇宙巡光艇シーライオン
- 第1節 静かな海、太平洋
シーライオンの飛行テストの第1段として、地球の大気圏内で、太平洋を一周回るテスト飛行を行います。
■発売中!
・第1章 イントロダクション
- 第1節から第4節【発売中です】
小杉さんとライラさんが、ノースポール・プロジェクトに、どのように参加したのか、そして、そもそも、なぜ、ノースポールという宇宙船が建造されたのか、物語の発端を描いています。
以上、ご購入頂いて、読んで頂けますとさいわいです。
よろしくお願いいたします。m(_._)m
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2024/04/14
はとばみなと