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[Side Story] 鵜の木君②
■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
鵜の木君②
みなさま、
はとばみなとです。
【作者から】
今の中学は、どんな感じの雰囲気なのでしょうか。一応、私も子供がいて、子供の通っていた中学に行ったことがあります。まあ、その時に見た限りでは、平和に、生徒みんなが充実した学校生活を送っているようには見えました。
ただ、私の記憶の中、つまり、私の中学時代には、校内には、いわゆる、不良グループがいたりしました。
まあ、中学が荒れていた時代だったようですね。
そんなわけで、かなり古くさい、時代錯誤的な話になっているかとは思いますが、こんな時代もあったということで理解してもらえると幸いです。
というわけで、
閑話休題。
「待てーっ!」
教室中に別の男子生徒の声が響き渡りました。
「何でそんなことするんだ。誰が何を好きになったって構わないだろ!」
一人の男子生徒が立ち上がって、その3人組を怒鳴りつけたのです。握りしめた両手の拳が、ブルブルと震えています。
「なんだ? お前もこいつの仲間か?」
リーダー格の男子が、その男子生徒の目の前に立つと、低く鋭い声で、凄みを利かせながら、脅すように睨み付けました。
男子生徒も黙ってはいませんでした。よほど、怒りがこみ上げていたのでしょう。一歩も引くことなく、まくしたてました。
「仲間ならどうするっ! 人が夢中になっているものをバカにするなんて、許せない!」
もちろん、この男子生徒の言っていることの方が正しいのです。周りで遠巻きに見つめる他の生徒達。他のクラスの生徒も集まり始めて、ギャラリーはどんどん増えていきます。
ただし、多くの生徒が望んでいるように事が運ぶとは思えませんでした。3人組に果敢に挑んでいる男子生徒は、学年で断トツの優等生。
見かけで決めるのも悪いのですが、どう考えてもケンカに強いとは思えません。
「おもしれーじゃねーかよーっ!」
リーダー格の男子が、その優等生の男子の胸ぐらを掴んで引き寄せました。
「ば、ばかやろー、」
恐怖におののいているはずの男子生徒が、絞り出すように小さな声で呟きました。
「へーー、何か言ったかぁーー?」
リーダー格が、わざと聞こえないふりをするように不敵な笑みを浮かべて睨み付けました。
「ば、ば、馬鹿やろうっ!」
今度は男子生徒が大声で怒鳴りつけました。
「はははっ、そうかい、そうかいっ。」
リーダー格は、そう言うと、胸ぐらを掴んでいた右腕を思いきり押し出しながら、掴んでいた胸ぐらを離しました。
「うわぁー・・・、」
男子生徒は後に突き飛ばされて、そこの席の机と一緒に仰向けに倒れ込みました。
「生意気なんだよ、ちょっとくらい成績がいいだけで。」
倒れていた男子生徒が、よろよろと立ち上がりました。
「だ、だから・・・、」
そう呟くと、男子生徒は、果敢にも、右の拳で殴りかかるように飛びかかりました。
「何だって言うんだよ!」
周りで見ていた生徒達は息をのみました。
しかし。
所詮、男子生徒は、その、リーダー格の敵ではありませんでした。
「うわぁー」
リーダー格は、男子生徒の右の拳を掴むと、あっという間に後ろ手に捻り上げました。
「い、痛い・・・。」
リーダー格は、勝ち誇った声で男子生徒に言いました。
「だから、黙って、引っ込んでりゃあいいんだよっ。」
リーダー格は男子生徒を掴んでいた腕を離すと、右足で思い切り蹴り飛ばしました。
「うわぁっ、」
男子生徒は今度は顔面から机に突っ込んで、うつ伏せに倒れ込みました。
「人をなめんじゃねえんだよっ!」
リーダー格がその倒れている男子に蹴りを入れると、残りの2人も加わって袋だたきにしてしまったのです。
「うわっ・・・、」
「きゃーっ、」
周りを取り囲んでいた生徒から悲鳴が上がりました。
その時。
「こらーっ! お前たち何をやってるっ!」
学年主任の先生が、人だかりができている教室の前にある階段を駆け上がってきました。
「わー、」
騒ぎを見物していた生徒のほとんどは、大急ぎで自分の教室へと戻っていきました。
実は、こういう現場で、先生というのは全くの無力なのです。まず、現場に居合わせることは滅多になく、騒ぎが大きくなって、だいぶ時間が経ってから、やっと駆けつけるのが精一杯なのです。
まあ、実際問題、現場に居合わせたとしても、たとえ、どんな状況であれ、先生が生徒に対して手を上げでもしたら、ただでは済まない世の中になってしまっているようですから。
一体何が正しいのか、何が正義なのか。おかしな世の中になったと思うのは、作者だけでしょうか。
さて、完全に後手後手の、犠牲が出てしまった後の対応ではありますが、倒れて気を失っている男子生徒は、担架に載せられて保健室へと運ばれていったのでした。
(つづく)
■宇宙巡光艦ノースポール
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■宇宙巡光艦ノースポール
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2024/02/23
はとばみなと