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[Side Story] ノースポール、浮上!④

■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
ノースポール、浮上!④

みなさま、
はとばみなとです。

 川崎さんは、操縦席の横に行きました。

「そのまま、今の姿勢のまま下りたいので頼む。」
「格納庫の建物は、ノースポールといっしょに動くっていうことで良いですか?」

 ライラさんの、その質問に、鵜の木さんが答えました。

「はい、大丈夫です。でも、できるだけ、ゆっくりお願いします。」
「わかったわ。」

 さあ、いよいよ、降下開始です。ドライブパネルの推進力に巻き込まれて浮上してしまった第1ドックといっしょに、地上に戻らなければならないのです。

 川崎さんが、地上の管制室に伝えました。

「ノースポール、降下開始する。」
「管制室、了解です。」

 ニコラさんが答えました。その、応答する時に、マイクのミュートが解除されて、管制室のスタッフのざわめきが聞こえ始めました。

「ライラ、始めてくれ。」
「了解です。」

 ノースポールが、ゆっくりと高度を下げ始めました。ライラさんは、操縦桿のサブコンソールの表示と、操縦桿に一番近い左側手前のディスプレイに表示した、艦底部監視カメラの映像を見比べながら、微妙に操縦桿を操ります。

「高度30を切りました。」

 地上では、第1ドックの基礎部から数十メートル離れて、作業員や見物のスタッフが見守っています。

 みんな、空を見上げて、降下してくるノースポールと、第1ドックの建物を見つめています。ケーパッドにセンサーをつないで、降下してくるドックの建物の位置を精密に測定しているスタッフもいます。

 もしも、バランスを崩したりしたら、ドックの建物だけ地上に落下する事態も考えられるのです。そんなことになれば、ドック内の通路に残されたスタッフも犠牲になってしまうでしょう。

「高度20。」

 小杉さんの良く通る声が響きます。管制室のニコラさんは、実は、マイクがオンラインのままになっていて、

『いいぞ、そのまま。』

と呟いているのが、ノースポールのブリッジにも
筒抜けです。

「高度10。」

 それを聞いたライラさんは、降下速度をさらに落としました。秒速数センチほどでしょうか。パッと見、動いているかどうかさえわからないほどの超低速です。

「こちら、地上監視班。位置ピッタリだ。そのまま頼む。」
「ノースポール、了解。」

 小杉さんが答えました。

 ライラさんは、艦底部カメラの映像を凝視しています。瞬きもしていないようです。

「高度、0.5」

 この、0.5というのは、50cmのことです。普通はこんな高度はカウントしません。間違いなく、前代未聞の珍事なのです。

「高度、0.3・・・、」

 ライラさんは、足下のペダルを微妙に戻しました。もう、ここまでくると、完全に職人芸です。

「高度、0.2・・・、0.1・・・、」

 突然、ドックの建物が、ギシギシギシッと、大きくきしみ始めました。通路にいるスタッフが、辺りを見回しました。

 果たして、第1ドックの建物と、ドック内の通路に取り残されているスタッフはどうなってしまったのでしょうか。

(つづく)

■宇宙巡光艦ノースポール
以下のように、4冊が発売中です。

小杉とライラはどのようにして、ノースポールに乗り組むことになったのか。ノースポールは、なぜ、建造されたのか。

物語の発端を知ることが出来ます。

ぜひ、ご購入いただけますとさいわいです。
よろしくお願いいたします。m(.)m

なお、次巻、発売予定です。
■宇宙巡光艦ノースポール
・第2章 宇宙巡光艇シーライオン
・第1節 静かな海、太平洋
・発売日 2024年04月18日(木)

2024/04/06
はとばみなと

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