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「キツネノテブクロの咲く頃に」第3話 #ファンタジー小説部門
あらすじ・第1話→https://note.com/maneki_komaneko/n/n6e4ebdef1b6b
前回→<2>ボクは鏡にうつらない(2)
** 記事の終わりに目次と各話へのリンクがあります。 **
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キツネノテブクロの咲く頃に
<3>ボクは鏡にうつらない(3)
(約7400字)
姉さまとの旅は、とっても楽しかった。国ざかいをこえてからもずっと、姉さまとボクは森の中を進んで、たまに道に出ることがあっても、とおりすぎるだけで、道を歩いたりはしなかった。だけど旅のはじまりとちがって、夜じゃなくて昼、太陽が出てる時間に歩くようになったから、ボクはいろんなものを見つけて、もう声を出してもよかったから、それがなんなのかをぜんぶ、姉さまにたずねた。
「これは川、小川。すいとうを出して、この川の水をくむの」
「待ちなさい、それには毒がある。ドラゴンベリー、ドラゴンのひなのためのベリーだから」
「あの鳴き声は、ニジイロツグミ。すばしこいあれは、ヨナキリス」
「ほら、あれがオドリギツネ。あの手袋の持ち主よ。いいえ、満月の夜にしか、踊らない。いまは二本足にはならないわ」
すごい、すごい、すごい。本の文字や絵でボクはべんきょうしてたのに、ボクはぜんぜんわかんなくって、姉さまはボクより、たくさんのことを知ってる。
それに姉さまは、すっごく、すっごく、強いんだ。
「あれは。魔妖、ギンオオカミ。わたしたちをかみちぎり、くらおうとしている。目を閉じてはだめ、ゆだんしてはだめ」
姉さまは剣を抜き、飛びかかってきたギンオオカミにむかって、ひゅん、と剣をふるった。ギンオオカミがどさり、とたおれたところに飛びのって、ギンオオカミの体に剣をつきさした。
「われを生かし地にたおれる者のたましいは天上をゆく」
姉さまは、そうつぶやいてから、剣を抜いて。ふるえたまま動けなくなっていたボクのそばに、もどってきた。
「いちぞくの、祈りのことば。今日負けて地にたおれたのはこのギンオオカミ、けれどそれは、わたしだったかもしれないから」
それから、だまって森を歩きはじめて、いっぱい時間がたってしまってからボクは、姉さまにたずねた。
「ギンオオカミはどうして、ボクたちをくらおうとしたの? 森には、ギンオオカミの食べ物はないの?」
「ふだんは、森にすむ生き物を食べている。魔妖は生き物がおびる魔を、それをくらうことで身の内にとりこむ。それが、聖なる魔にゆるされなかった、生まれながらにしてその身の半分を魔にくわれている生き物としての、魔妖のしゅうせいだから。そして、」
姉さまは立ち止まり、ボクを見つめて、言った。
「おまえとわたしも、魔をおびている。だからギンオオカミには、おまえとわたしが、うまそうに見えたのよ」
「うまそう、に?」
「おまえとわたしは、ギンオオカミがふだん食べているえものより、多くの魔をおびているから」
ギンオオカミにはボクたちが、とってもおいしそうに見えたのかあ……。
また歩き出しながら、思い出して、せおい袋から手鏡を取り出した。革ひもをくびからかたにかけ、せおい袋をせおいなおしてから、鏡をのぞいた。
とたんにボクは、ちゅうに浮くように、顔から地面にぶつかりそうになっていて……姉さまが、ボクを受けとめた。
「鏡を見て、足もとを見ないから、つまづいたのよ」
「……ごめんなさい」
「鏡は、割れてないかしら?」
姉さまに言われてハッとして、でも鏡は割れてなかった。
鏡を見るときは、よくかんがえなくっちゃいけないや、とボクは思った。
+++
「鏡にうつらない子がいる国に来たけど、やっぱりボクは鏡にうつらないね」
きのう姉さまからおそわった火の起こしかたを、姉さまの前でやってみせたあと。
たき火は、イタチノエンタクっていうやっぱりヘンな名前の、平べったくてかたい、大きなまるいキノコのそばでおこしたんだけど。そのキノコによっかかってすわって、火にあたりながらボクは、手鏡をのぞいていた。
「鏡にうつらない子に会ったら、どうしてなのかわかるかな? わかったら、ボクは鏡にうつるかな?」
となりにならんですわっている姉さまはだまって、ボクのはなしを聞いていた。
「ママのいる城に帰るのは、鏡にうつるようになってからがいいな……」
鏡のおくのほうから、欠けはじめの月がボクをのぞいてる。鳥や虫がどこかで、ひっきりなしに鳴いてる。ボクはとなりにいる姉さまにわざとよりかかって、それから姉さまを見る。姉さまは、がいとうのフードをかぶってるから、顔が見えなかった。
「もうすぐよ」
フードの中から、姉さまの声がした。
「もうすぐ、もくてきのばしょに着くわ」
「鏡にうつらない子がいるんだね!」
姉さまは、またなんにも言わなくなった。ボクは姉さまの顔が見たくなって、月と星がうつっていた手鏡を姉さまに向けようとして、だけど姉さまの手がゆっくりと手鏡をふせるようにした。
ボクは手鏡を背中によけてお尻を上げ、姉さまと向かいあわせになるように、しゃがんだまんま動いて、手とひざを地面につき、フードの中の姉さまをのぞきこむ。
ボクの顔は、姉さまに似ているんだって、姉さまは言ってた。
それなら。
いつかボクが、鏡の中にボクを見つけるときは、こんなふうなのかな?
「姉さまはこうやってボクを見たら、鏡を見てるみたい、って思うの?」
ボクがたずねたら、姉さまの目が少しだけ大きくなって、それからまた細くなった。
「思うわ。でも、思わない」
ボクがくびをかしげてると姉さまは、ボクのおでこにキスをした。
「鏡には、キスしたいと思わないから」
「フフフッ、姉さま! フフッ、あのね姉さま、ボクは姉さまのことが、大好き!」
「わたしもよ。わたしの、やさしい子」
ボクがキスを返すと、姉さまはボクをぎゅうっ、と抱きしめて。
ボクが眠るまで、たくさんたくさん、頭をなでてくれたんだ。
+++
森の中のその小屋のまわりには、ボクがよく知ってる花がいっぱい咲いていたから、見つけてボクは、すぐにかけだした。
「姉さま! 見て、キツネノテブクロ! おんなじ、紫色だね!」
姉さまはだまって目を細める。ボクはこの色が好き。城のキツネノテブクロの茂みでも、姉さまにそう言ったことがある。あのばしょがボクと姉さまのお気にいりのばしょになったのは、それからなんだ。
小屋からギィ、という音がして、草をふむ足音が聞こえてきて。
ボクは旅のあいだずっと、姉さま以外のだれかに会ってなかったから、たぶん姉さまはそれをさけてるんだってわかってたから、しゃがんで花を見ていたボクはあわてて立ち上がって、姉さまのそばにかけよった。ボクが大きな声を出しちゃったから、どうしよう、と思ったけれど、姉さまは、だいじょうぶ、というようにボクの手をとってつなぎ、それから足音がするほうをまっすぐに見た。
小屋のかどを曲がってあらわれたのは、女の人だった。
頭に布をかぶっていて、布からは編んだ髪の毛がのぞいてて、くびのとこにも布を巻いてて、スカートの上にはエプロンをしてる。布とエプロンと服の色がいろんな草の色で、髪の色も枯れ葉の色で、森の中みたいにごちゃごちゃしてるなって思った。
「おや。アンタだったのかい」
女の人は姉さまを見て言い、それからボクを見た。
目が細くって、瞳の色はよくわかんない。
なんとなく、森で見たオドリキツネの顔に似てる。
つないでいたボクの手をきゅっとにぎって、姉さまが言った。
「わたしの弟よ。さあ、魔女よ。これで、けいやくのぎむをはたしてもらうわ」
「……フフッ」
女の人が笑って、けどボクには、姉さまが言ったことがよくわからなくって。でも『魔女』ってことばだけ、わかった。
……魔女? この人は、魔女なの?
ボクは本で読んでたから、魔女ってことばは知ってる。うわあ、ほんとうに、いたんだ!
笑ってる女の人を見つめながら、こんどはボクが、姉さまの手をぎゅっ、とにぎってしまって。
姉さまは魔女のほうに顔を向けたまま、ボクの手をにぎりかえしてくれた。
「もちろん、約束は守るさ。でもまぁ、まずはお茶にしようじゃないか。つかれているだろう? お茶を飲んで、少し眠るといい。話は、それからだ」
魔女はそう言って、くるりと背をむけて歩き出し、姉さまとボクはそのあとをついて行った。
小屋の中に入って、がいとうをぬいで木のいすにすわって、姉さまとボクは、魔女のお茶を飲んだ。木でできたカップの中のお茶はあったかくて、でも舌がザラザラする感じで、ボクはあんまり飲めなかった。姉さまも魔女もだまったまんまで、ボクは口をひらいていいのかわかんなくって、でも小屋の中に見たことがないものがたくさんあって、きょろきょろとながめていた。たながあちこちにあって、たなにはビンや本がいっぱいならんでて、それに、見たことがないヘンなものがたくさんあった。
魔女に言われて、階段を上がって小屋の二階の部屋に来たボクと姉さまは、旅のあいだじゅうずっと着ていた服をぬいだ。魔女に持たされた水差しにはお湯が入っていて、姉さまとボクは、たらいにお湯をうつして手と顔を洗って、布で体をふいた。
とちゅうで魔女が部屋の外に来て、かごを置いていった。姉さまはかごを部屋に入れると、中に入っていた、雨の日の雲みたいな色をした布をボクにわたしてくれた。広げてみると、ねまきのチュニックで、かぶって着てみると、この小屋のにおいが強くなったかんじがした。
顔を上げると、うしろをむいた姉さまが、ねまきの背中から髪の毛を引っ張り出したところで、ボクが「姉さま?」と声をかけると姉さまが、長い黒髪をふわんとさせて、ふりかえる。
ふわん、と。ねまきのすそも広がって……これって、うーんと……あっ、わかった!
「姉さま! これ、キツネノテブクロだよ!」
首をかしげる姉さまの前で、ボクは姉さまがふりかえったときみたく、くるん、とまわってみせた。
「ほらね、おんなじかたち! こうやって咲くんだ!」
言いながらボクは姉さまにくっついてみせて、姉さまの顔を見上げたら、姉さまの目が細くなってたから、ボクはどんどんうれしくなった。
それから、その部屋の小さなベッドに、姉さまといっしょに横になった。ボクはいつのまにか眠っていて、目がさめたらもう、明日になっていた。目を開けると姉さまがボクを見下ろしていて、「おはよう、やさしい子。日はもう空の階段を下りはじめたけれど」と言った。
「おはよう、姉さま」
「起きて食事を済ませたら、わたしがうそを言わなかったことを、しょうめいしてあげる」
「うそ? しょうめい?」
「おまえが『しんじられない』と言ったから、旅に出たのよ?」
寝ぼけてたボクの目がそれで、パチッ、とさめた。
ボクはとうとう、鏡にうつらない子に、会うんだ!
+++
きのうお茶を飲んだテーブルに、ビスケットと、ミルク色のスープがあって、魔女はいなかった。姉さまとボクはいすにすわって、食べはじめた。いもがとけてるスープは甘くて、けどビスケットはかたかった。おなかがすいてたから、スープでふやかして、食べちゃったけど。
ボクは、鏡にうつらない子のことが聞きたくって、うずうずしてて、食べおわるとすぐに、姉さまにたずねた。
「どこにいるの? したくをしたら、そこに行くの?」
ボクと姉さまは、きのういっしょに着たねまきのチュニックのまんまで、もしそうならボクは急いでしたくをしなくっちゃ、と思ったんだけど、姉さまはくびを横にふった。
「手鏡を。ここに、持ってくるといいわ」
ボクは言われたとおり、二階の部屋にもどって、二階のボクのせおい袋から手鏡を出して、革ひもをくびからかたにかけてから持ち手をつかんで、部屋から出た。
……でも。
どうしてだろう、姉さまがヘンな気がする。
旅の前に、姉さまが『鏡にうつらない子は、ほかにもいる』んだって言ったとき、ボクは『しんじられない』って言って、だから姉さまはボクを、ここまでつれて来てくれた。旅はたいへんだった。姉さまは弱いボクをずっと守ってくれてたから、もっともっとたいへんだった。ボクはいまごろになって、気づいた。ボクにあんなことを言われた姉さまは、悲しくなっちゃったかもしれない。
ボクはくつ下だけはいた足で、ギシギシを音をたてる階段をおりながら、どうしよう、って思う。すわってる姉さまの横に立つと姉さまは、くびをすこしかたむけて、ボクを見上げた。
「どうかした? どこか痛むのかしら?」
ボクは口をつぐんで顔を横にふって、あっ、って思って姉さまにたずねた。
「姉さま、姉さまは? 痛いところがあるの?」
「ないわ。けれど、なぜそんなことを?」
「だって姉さまが、」
ギイィ、という音がした。扉を開ける手が見えて、つぎに、ひざの高さくらいのかごが入ってきて、そのかごを押しこみながら、魔女も小屋の中に入ってきた。
「ふう。おや、食事はすんだのかい?」
魔女は重たそうなかごを引きずりながら、姉さまとボクを見て、言った。
「いま食べ終わったところよ」
「そうかい。つぎは、もう少しマシな物を用意できそうだよ」
答えた姉さまに魔女が、かごの中身をボクたちに見せながら言い、かごの中は葉っぱのいろんな緑色でいっぱいになっていて、そのすきまに中身の見えないビンと、黄色いイチゴがたくさん入った袋が見えた。
そこで。
姉さまがいきなり、ボクに言ったんだ。
「さあ。おまえと同じ、鏡にうつらない子が、帰ってきたわ」
+++
ボクの口から「え?」という声が出て、その口のまんまボクは姉さまを見て、カゴの中からビンを取り出していた魔女も、手を止めて、姉さまをじっ、と見た。
帰ってきたのは、魔女。
だから……魔女が?
ボクとおんなじ、鏡にうつらない子?
「手鏡を、魔女に見せてやりなさい」
ボクはつかんでいた手鏡を持ち上げようとして、その前に魔女を見た。魔女はボクを見て、魔女の細い目が少しだけ大きくなった。おそるおそる魔女にちかづいたボクは、かたからひもをはずして、鏡を魔女に差し出した。背の高さがボクたちとおんなじくらいの魔女が鏡を見て、それから「へぇ」と言った。
魔女はそれから、ボクと並ぶように立って、鏡にボクをうつそうとした。
ボクは魔女といっしょに、鏡をのぞきこんだ。
魔女は、鏡の中にいなかった。
魔女は本当に、鏡にうつらない子なんだ……。
びっくりしているボクからはなれた魔女は、こんどは姉さまのほうへ歩いていって、姉さまもいすから立ち上がって、鏡をのぞいた。魔女は「なるほど」と言い、姉さまの顔の前に手をかざしてヒラヒラさせた。
「アンタはしっかり、うつってるのに、アタシとぼうやは……ほら、アタシのこの手もうつってないね。フシギなもんだ」
「ねえ! どうすれば、鏡にうつるようになれるか、知ってる? 鏡にうつったことは、ある?」
ボクは魔女にたずねた。魔女は、となりに立つ姉さまを見た。
姉さまは魔女を見て、それから魔女が持つ鏡を見て、鏡を魔女の手から取り上げた。
魔女はボクを見て、言った。
「あるさ」
「っ、ほんとう?!」
魔女は姉さまからはなれて、窓のちかくのたなに歩いていき、たなに置いてあった物に手をのばした。そしてそれを重たそうに両手で抱えて、テーブルにそうっと、けどゴトリ、と音を立てて置いて、かかっていた布をはずした。
木でできてるそれを持ち上げて、はんたいに向けるように回して置いて、それでまたゴトリ、音がして。
そして、それを見ると。
それは、木のわくにはめられた、鏡だったんだ。
ボクは魔女の顔を見て、それから鏡を見て、鏡とちゃんとむかいあわせになれるところに立って。鏡の高さにあわせて、ひざを床につけてボクは、そうっと鏡をのぞいてみた。
ああ……そこには。
だれかが、うつってる。
姉さまでも、魔女でもない、だれか。
赤茶色の巻き毛、ぎゅっとしてる口。
春に見つける新しい葉っぱみたいな、黄緑色の瞳。
髪も目も、色がぜんぜんちがうのに……姉さまに、似てる。
これが。これが、ボクなの?
……うしろから、そっと抱きしめられた。
姉さまの髪のにおいがして、姉さまのうでがボクのかたから、ボクのあごの下をとおって、こっちがわのかたをつかむ。
姉さまはなにも言わなかったから、ボクはもういちど、鏡を見た。
そこには姉さまとボクが、いっしょに鏡にうつっているはず……。
「……姉さま?」
鏡の中がしんじられなくって、ボクは姉さまのうでの中で、ふりかえる。ちゃんと、姉さまはここにいる。もういちど前をむいて、鏡を見る。
姉さまが、いない。
ボクがよく知ってる、長くてきれいな黒い髪の、ボクをやさしく見つめる紫の瞳の姉さまが。
こうやって、ボクを抱きしめてる姉さまはここにいるのに、なのに……どうして?
……姉さまが!
鏡の中の、どこにもいない!
ボクのかたを抱いてくれる姉さまのきれいな手に、力がこめられて。
なのにその手はうつってない。ボクのねまきのかたに、くしゃ、ってシワができたのに。
「どうっ、して? ボクのせい? ボクのかわりに姉さまが、鏡にうつらなくなっちゃったの?!」
「ちがうわ」
ボクを抱く手をはずして姉さまは立ち上がり、テーブルに置いていたボクの手鏡を持って、立ち上がんないまんまだったボクの横に来てひざをつき、ボクにかたをくっつけた。ならんで、顔をよせあうようにしてから手鏡をかざすと……姉さまはいて、ボクがいなかった。
「おまえが持ってきたこの手鏡は、いちぞくの鏡。そして、」
姉さまは手鏡をテーブルにふせて置いてから、木の鏡をなでた。
「この家のこの鏡は、にんげんの鏡。にんげんは、たくさんいる、だから……おまえとおなじ、いちぞくの鏡にうつらない者は、たくさんいるのよ」
「……いちぞくの鏡と、にんげん、の、鏡?」
ボクは。
いちぞくの鏡にうつらなくて、にんげんの鏡には、うつった。
姉さまは、そのぎゃくで。
だからボクは、姉さまとおんなじじゃ、ない。
……いちぞくである姉さまと、ちがう。
ほかの兄さまたちや姉さまたち、そして……ママとも、ちがうんだ。
ああ……だから。
だから、だったんだ。
姉さまがボクのほうに体を向けて、ボクも姉さまに向かいあうように体を動かした。
……鏡を、見てるみたい?
でも、ちがうんだよね?
大好きな、姉さま。
ボクは悲しくって、どうしたらいいのかわかんない。
だって、城の中で。
ボクだけが、ちがうものだったんだ……。
つづく
次話→<4>夜に溶けて飛ぶ鳥
キツネノテブクロの咲く頃に
<3>ボクは鏡にうつらない(3)
【2024.06.02.】up.
【2024.07.07.】脱字修正
【キツネノテブクロの咲く頃に・目次とリンク】
※カッコ内の4ケタは、おおよその文字数です。
<1>ボクは鏡にうつらない(1)(5300)
<2>ボクは鏡にうつらない(2)(6200)
<3>ボクは鏡にうつらない(3)(7400)
<4>夜に溶けて飛ぶ鳥(6200)
<幕間1>王国の滅亡と魔の一族の伝説(1600)
<5>月のない夜の姫君(1)(6000)
<6>月のない夜の姫君(2)(4800)
<7>月のない夜の姫君(3)(4100)
<幕間2>創世記・祝福の翼(1500)
<幕間3>夜色の翼は高くに(1800)
<8>そして、キツネノテブクロの咲く頃に(1)(7700)
<9>そして、キツネノテブクロの咲く頃に(2)(6500)
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