04 正月はチラシで酒が飲めるぞ
今年も始まったねえ。「何が?」って、駅弁大会に決まってるじゃないか!(※この文章は2015年1月9日に書きました)
正しくは「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」といって、毎年1月の初旬に約2週間、新宿の京王百貨店で開催されている駅弁の祭典だ。この季節になるとテレビでもたびたび報道されているから、知っている人も多いはず。これがぼくは大好きで、かれこれ10年以上は通っている。
おそらく、普通の人は会期中に1回か、せいぜい2回も行けばいいほうだろう。だが、ぼくとその周辺にいる“駅弁大会マニア”たちは、ほぼ毎日会場へ顔を出す。それも1日1回じゃ済まない。朝、出勤前に新宿で途中下車して昼メシ用の弁当を買い、終業後も京王に寄って晩酌用の弁当を買う。駅弁大会をやっている2週間は、だいたいそういう生活になるのだ。
駅弁大会には、各ブースの弁当を紹介する「チラシ」というものが存在する。本来は、百貨店の店頭で配布したり、周辺のエリアで新聞の折り込み広告として使われているものだ。会場を訪れたお客さんたちは、これを手にして会場を見てまわり、お目当の弁当を探すことになる。
しかし、我々のようなマニアにとって、このチラシは単なる購入ガイド以上の意味を持つ。それはどういうことか? 今年を例にとって説明しよう。
2015年の第50回駅弁大会は、年が明けて1月8日にスタートとなった。それに合わせてチラシも京王百貨店の店頭に設置されるのだが、それを待っていられる我々じゃない。店頭になくても、実はインフォメーションのおねえさんに言えば、カウンターの下から出してくれる。これを我々は「フライングゲット」と呼んでいる。
だが、それすら待てない。
そこでどうするか? まず、年が明ける前の12月上旬に京王百貨店の駅弁大会公式サイトがオープンする。そこで日々情報が明らかになっていくわけだが、下旬になるとこのサイト上にチラシのPDFデータがアップされる。これをダウンロードしてプリントアウトすれば、なんと年明けを待たずにチラシ(の複製)を入手することができるのだ。すなわち、この瞬間から我々の駅弁大会は始まっているのである!
さあ、ここからが、前回のコラムの続きだ。
チラシを手に入れたぼくは、ひとり酒場に赴いて、カウンターに陣取る。いつものチューハイもいいけれど、たまには燗酒なんかもいい。そして、おもむろに鞄からチラシを取り出し、カウンターの上でひろげると……そこはもう駅弁ワンダーランド。自分だけの駅弁大会だ。駅弁大会は、京王百貨店の7階だけで起きてるんじゃない!
これを「チラシ飲み」という。ひとり飲みの相棒としても最高だし、同行の仲間と集まってやるのもいい。つまみなんか頼まなくても、このチラシを肴に3合ぐらい酒が飲めてしまう。いや、さすがに居酒屋で飲み物だけ頼んで料理を注文しないのは申し訳ないから、煮込みとか頼んだりするのだが、どうしてもチラシを見るのに夢中になってしまって、気がつけば煮込みは冷めきってしまっている。
もうさ、毎年このチラシさえ配ってくれたら、駅弁大会は別にやんなくてもいいと思うね。