012酔っぱらいの夢が叶った日2

12 酔っぱらいの夢が叶った日(その2)

♪ラササ〜ヤン、エェ〜、ラッサ、サ〜ヤンエェ〜

とりあえずマレーシアの愛の歌などくちずさんでみたわけだが、エイヒレの姿焼きがあまりにも泥臭いので、ビールをがぶ飲みする。マレーシアで酒を注文するとしたら、まずはビールだ。

マレーシアはイスラム教の国なので、マレー系の人たちはアルコールを口にしない。その一方で、中華系やインド系など周辺諸国からの移民もたくさん暮らしており、ムスリムでない彼らは酒を飲むし、観光客向けのレストランでは普通に酒を出す。

そういえば、昼間はこの旅行に誘ってくれた友達の付き合いでももクロちゃんが出演するフェスタを見に行ってきたわけだが、とにかく会場のどこにもビールが売られていないのにはまいってしまった。マレーシア人のためのお祭りだから、会場でアルコールを売るわけにいかないのだろう。亜熱帯の気候の下、広い会場を延々と歩かされたら、そりゃビール飲みたくなる。なのに売ってない。仕方ないので、コーラばかり何杯も飲んでしまった。

昼にそんな思いをしたものだから、余計に晩酌の期待値が上がっていた。で、それを裏切ることのない、マレーシアの夜。

アジアの料理は辛いものが多いので、とにかくのどが渇く。気候とともに、ビールがうまく感じられる条件が揃ってる。しかし、マレーシアにはビールを作っている会社がないので、他国の現地法人が作っているビールを注文することになる。カールスバーグ、ギネス、シンハー。あと何があったかな。

ぼくは日本のビールはあまり好きではないのだが、アジアのビールは大好きだ。いちばん飲む機会が多いのは青島(チンタオ/中国)、その次はシンハー(タイ)。チャーン(インド)もわりと好きだ。

とはいえ、そんなにビールばかりを飲んでもいられない。さすがにマレーシアには酎ハイもホッピーもないので、紹興酒をボトルで頼む。同行の友人はそんなに酒を飲まないが、紹興酒だったらぼくは一人でもボトル1本ぐらい空けてしまうから大丈夫。

ここで友人が水を頼んだ。「ミネラルウィーターをペットボトルで」と英語で伝えている。店員さんはニコリと頷き、すぐにペットボトル入りの水を持ってきた。だが、それを見た友人がダメだと言う。スクリューキャップがすでに開けられていてたんだな。

親切で新品のボトルを開けておいてくれたならいいが、もしも、使い回しで水道水を補充されていたら、日本人の我々は確実に腹を壊す。だから、確実に新品だという確証が持てないものは飲んじゃいけないというのだ。旅慣れてるな〜。頼もしいな〜。

たらふく食べて、しこたま飲んで、一人当たり100リンギット。日本円にして2500円(当時)だ。おや? 思ったほどは安くない。本来、マレーシアの物価はもっと安いのだが、ぼくらが飲み食いしたエリアは中華系が観光客向けに出している店が集まっているところだから、こんなもんなのだろう。考えてみれば、浅草のホッピー通りも安くない。

訪ねたのは5月。Tシャツ1枚で十分な暖かさ。暗い通りを店の明かりが賑々しく照らしている。周囲の客を見回すと、多いのはやっぱり中国人。白人客もかなり来ている。彼らが会話する様々な国の言葉が混じり合って、アジアの夜の喧騒が形作られていた。

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