40 うわばみのジョナサン
俗に大酒飲みのことを「うわばみ(蟒蛇)」だなんて申しますな。若い娘を食っちまうヤマタノオロチを退治するため、スサノオノミコトは大樽に詰めた酒をオロチに飲ませ、酔っぱらって寝込んだところを叩き斬った。そんな日本神話に由来する言葉でございます。
ずいぶんスサノオってのは卑怯な真似をするもんだね。何も寝てるところを斬るこたァねえやな。それにオロチ、アンタもアンタだ。酒飲んで寝ちまうなんて、ちっとも酒が強かねえ。神話の怪物ならもっとこう豪腹さってもんがほしい。なんだって?「あっしのは豪腹じゃなくて蛇腹」だって? うるさいよ!
落語を語ってる場合じゃない。我々は昼から飲める店を探していたのだった。我々ってのは酒友1号のキンちゃんとぼくだ。場所は浅草、ROXの近く。浅草だったらホッピー通りも仲見世もある。なんならひさご通りにもいい店はたくさんある。でもねえ、この日は平日。しかも朝の10時半。どこもまだやってないんだ。
喉を枯らした2匹のうわばみは、国際通りへ向かった。こんなときに頼もしいあの店を目指して。バカ話をしながら5分ばかり南下していったところに、その店はあった。ファミリーレストランの「ジョナサン」である。
近頃はファミレス飲みが流行りだという。普通の居酒屋が営業を始める夕刻まで待てない酔っぱらいにとって、こうした昼飲みの選択肢が増えるのはとてもいいことだ。ぼくの仕事場がある神保町界隈にはサイゼリヤが2軒もあるので、そちらを利用することが多いが、本当に好きなのはジョナサンだ。できることならジョナサンの隣に引っ越したい。
ジョナサンには、焼酎のミニボトル(180ml)を頼むとドリンクバーが無料で利用できる「With Drink Bar」というサービスがあって、これが実にいいのである。
え〜、これからお酒を飲むのにジュースなんていらないでしょ? と考える貴方は甘い。ジュース1缶に含まれる糖分は角砂糖10個分に相当するほど甘いっ!
我々は注文した焼酎をどのようにするかといえば、森伊蔵じゃあるまいしロックで飲んだりするはずがない。当然、炭酸的な何かで割って飲む。そしてジョナサンのドリンクバーには、ジュース、コーラ、爽健美茶、アンバサ、メロンソーダ、ジンジャエールというように、焼酎を割って飲んだらおいしそうなものがたくさんあるのだ。なんならコーヒー焼酎だって作れてしまう。
何よりありがたいのは、プレーンの「炭酸」があることだ。
普通の居酒屋でさえ、メニューに「酎ハイ」と書いておきながら、いざ注文すると甘酸っぱいレモンサワーを出してくることがある。なんたる酒場にあるまじき愚行! しかし、ジョナサンは酒場でないにもかかわらず、プレーンな酎ハイが格安で飲める。それも早朝からOKなのだからたまらない。
ここで、ぼくが発明したジョナサン特製酎ハイ(通称:ジョナ酎)のレシピを公開しよう。
1)焼酎はグラスに2センチほど入れる(実際には最後に入れる)。
2)ドリンクバーでグラスに氷をお好みの数だけ入れる。
3)プレーンな炭酸をグラス7分目まで注ぐ。
4)ジンジャエールを1プッシュほど。
5)紅茶用のレモンスライスを1切れ。
焼酎、炭酸、レモンでいわゆる酎ハイが出来るわけだが、ここにほんの少しのジンジャエールを足すのがポイント。少量のジンジャエールの甘味とレモンの酸味が混じり合って、いわゆる下町酎ハイそっくりの味になる。これを知ってしまうと、絶対に焼酎ミニボトル1本では帰れなくなるだろう。
さあ、みんなも明日はジョナサンに行ってみよう! つーか、今日行け!
気が向いたらサポートをお願いします。あなたのサポートで酎ハイがうまい。