22 センベロ・イタリアーノ
だいたい毎日どこかしらで飲んでいる(※2015年、執筆当時の話です)。夜、仕事を終えたら酒場へ繰り出すのはもちろんのこと、ヒマなときは明るい時間から飲みに出掛けたりもする。
いつもここ、という決まった店はない。比較的よく行く店はあるが、それでも月に一度くらいの頻度だ。馴染みの店を持つことの心地よさもあるとは思うが、ぼくは好きな店をいくつもリストアップしておいて、今日はどこに行こうかなあ〜という、その場その場の店選びを楽しむこを優先させている。
行くのはほとんどが「大衆酒場」だ。居酒屋という呼称の方が一般的だろうけれど、そうすると大手チェーンの店なども含まれてしまう。ぼくはそういうところにはまず行かない。行くのは、古くから営業している個人経営の店ばかりで、そうしたところは居酒屋というよりも、大衆酒場と呼ぶのが似つかわしい。
さて、ここで話のトーンが一気に変わる。
エスカルゴが大好きです。ガーリックやハーブとともにオリーブオイルで熱したエスカルゴを頬張り、白ワインをぐいっと流し込む。最高。モッツァレラチーズとトマトのサラダには赤ワインがよく合う。ムール貝のガーリック焼き、ピクルス、生ハムとフォカッチャ……。あれもこれもと目移りしてしまう。エーイまとめて全部持ってこーい。
滅多なことではチェーン店に行かないぼくが、例外的にちょいちょい利用しているのが、日本全国に展開しているイタリアンレストランのサイゼリヤだ。アじゃなくてヤ。仕事場のある神保町にもサイゼリヤは2軒あり、実に重宝している。普段はチューハイばかり飲んでるぼくだが、ここではワインをデキャンタでいく。
サイゼリヤって店の造りがファミレススタイルだから、一人で行ってもソファ席に案内されることが多い。固い椅子の酒場と違って、このソファでゆったりと飲めるというのが、腰痛持ちにはとにかくありがたい。
そのうえ、ご存知のようにサイゼリヤはとにかく値段が安い。先のエスカルゴがなんと399円。これにワインを付けるが、ぼくは酒の味にあんまりこだわりがないので、ハウスワインで十分だ。いつも頼んでるデキャンタの大サイズ(500ml)が399円。これで合計798円という驚きの安さ。
エスカルゴだけではもの足りないので、キャベツとアンチョビのソテーなんか頼んじゃおう。これが199円。ここまででもまだ997円! いろんなせんべろ酒場に行ってきたが、サイゼリヤのせんべろっぷりには本当に感動してしまう。
唯一の欠点は、安いがゆえに子供を連れたご家族や学生さんのグループ客が多く、店内が全体的に賑やかなことだろうか。いま、気を使って穏便な表現をしました。本音を言うと「うるせー!」のだ。「お前ら公共空間で騒いでんじゃねーーー!」なのだ。
でも、店の営業方針としては、ぼくみたいなオヤジのひとり客よりも、むしろ学生グループや家族連れの方が本来のターゲットだろう。それは承知している。だから、おじさんは「うるせー!」なんて口には出さず、隅っこで一人しみじみとワインを楽しむのだ。壁の変な絵を眺めながら。
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