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映像の世紀 バタフライエフェクト

バタフライ効果は、力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とは、その後の系の状態が大きく異なってしまうという現象。カオス理論で扱うカオス運動の予測困難性、初期値鋭敏性を意味する標語的、寓意的な表現である。 ウィキペディア

NHK 映像の世紀のバタフライ・エフェクト、「ベルリンの壁崩壊 宰相メルケルの誕生」「ロックが壊した冷戦の壁」を見た。どちらも素晴らしかった。

宰相メルケルの誕生

メルケルが東ドイツ出身であることは知っていたが、51歳という若さでドイツ初の女性首相となり、16年間国をリードしたこと。もともとは「魂の抜けた」物理学者で東西ドイツの合併を気に政治家を目指したことなどは知らなかった。最近では対コロナ施策が称賛された数少ない政治家ではないだろうか。

映像の世紀ではTVに初登場した「民主主義の出発」報道官時代から紹介される。30代のどちらかというと大人しそうな女性。これが首相に選ばれ、2期当選、と、どんどん垢抜けて自信ありげな顔に変わっていくのが印象的だった。

エピソードの中では、同時代に東ドイツで育ち、ちょうどメルケルの青春時代にも大ヒットとなった「カラーフィルムを忘れたのね」のニナ・ハーゲンとの初顔合わせのシーンや、プーチンと同席した際にプーチンが犬をわざと犬の怖いメルケルの足元の放ったことを、「KGBのよくある手口」と言っていたことやなどが紹介されていて政治家として変化、成長しつつ、根本に東ドイツで育ったことを持ち続けたメルケルの強い人間性、自由を尊ぶ気持ちがよく現れていた。首相退任時の楽隊の演奏に「カラーフィルムを忘れたのね」を選んで楽隊がとまどった、というエピソードともにそれに聴き入るメルケルの映像もしっかり残っていて、このあたりは胸を打たれる。

ロックが壊した冷戦の壁

連続して見たのが同じ時代を描いたロックが壊した冷戦の壁。ニナ・ハーゲンもまた登場する。

私が必死で洋楽を聴き出した1980年代前半より少し遡る時代にデビッド・ボウイがベルリンで活動していたことは全く知らなかった(1977~79年頃)。デビッド・ボウイといえばビジュアル系ロックのイメージが強かったので、メッセージ性の高い歌を歌ったり、あえて東ドイツに向けてスピーカーを鳴らしていたことなどは意外だった。

このエピソードで大きく取り上げられているのが、本国アメリカではそこまで売れなかったが異国の地、チェコスロバキアで大ブームを引き起こしたルー・リード率いるベルベットアンダーグラウンド。ビロード革命を率いて新生チェコ最初の大統領となったハヴェルが彼らとの親交を重んじ、ホワイトハウスに招かれたときにコンサートが行われた、というのも素敵なエピソードだった。

「ロックが壊した冷戦の壁」というと大げさなようでいて、実際にロックが若者の気持ちを揺さぶりエネルギーを呼び起こすというのはそのとおりだと思う。程度は違えど、私自身10代で洋楽、ロックを知ってアメリカ、イギリス、オーストラリアに憧れ、英語を学んで海外にとにかく行ってみたかったところから社会人がスタートしている。労働者の音楽代表oasisが大きなブームを巻き起こしたのもその一つだろう。

残った映像を紡ぐことで、一見関連のないことがバタフライエフェクトとして歴史を動かしているのではないか、という問題提起は、TV番組にしかできない素晴らしい企画だと思う。


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