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現代社会を解像度高くみるためのキーワード:「評判の再分配」と「貨幣空間の拡大」

「評判の再分配」はこれからのトレンドだと思います。

お金に関しては税金という制度があって、 金持ちからはごっそり取ると。 まぁ、一部のお金持ちは節税をしていますが、 年収1000万とか年収1億円ぐらいまでは、 ごっそりと税金取られるという状況で、 お金の再分配は実現しているんですね(完璧ではありませんが)。 それが社会が変化してきて、テクノロジーの発展によって、 ネットやデバイスが普及し、広告システムが普及し、 個人が評判をお金に変える社会になりました。


評判で食っている代表的な人といえばHikakin(ヒカキン)がいますね。 ヒカキンは評判を積み上げるのがうまくて、 長年にわたって評判経済の中でうまく立ち回っています。 ヒカキンのように派手に遊ばない人は大丈夫なんですが、 ただ、「やんちゃなタイプ」はどこかで揚げ足を取られる。 例えば、パワハラがバレてしまうとか、 過去に女の子と派手に遊んでいて、そのときの復讐をされる。 最近でも松本人志、わかしん、長渕剛などの著名人が告発されていますよね。 事実関係については僕は分かりませんが、 ただ、そういうふうに復讐されているという現実がある。
こういう告発がなぜ増えてきたのかというと、 そこに「見返り」があるからです。 評判や好感度をお金に変えている人を糾弾すれば、その分その人から評判が取り除かれて、 地位が下がるわけです。 そうすると、社会を構成しているメンバーは相対的にステータスが上昇する。ということなので、 誰かを道徳的に叩くと得をするんですね。ゲームのように「ポイント」をゲットできる。そういう仕組みなので、評判が良くて、好感度が高くて、 それで稼いでいる有名人で、何らかの落ち度がある人はこれからどんどん叩かれると思います。 これからも告発やキャンセルは頻発すると思います。 いまは一部の週刊誌とか、一部のインフルエンサーが告発を一挙に引き受けていますが、もっと小さなプレイヤーも出てくると思います。キャンセル・告発が普通になってきますからね。


アメリカでは訴訟社会といって簡単に裁判するんですね。 それと同じように日本でも、みんなが気軽に告発するようになります。今後2、30年でそういう環境になってくる。 職場でパワハラされた、セクハラされたってなったら、 メディアやインフルエンサーに垂れ込むって形で、 日本各地で連鎖的にそういう動きができてくる。


なぜ告発がカジュアルになってきたかというと、 1つは先ほど言った「評判経済」だからです。 評判がある人を糾弾することによって、「評判の再分配」が起こる。 もう一つが、「貨幣空間の拡大」です。 貨幣空間というのは簡単に言うと、「お金を介した人間関係」です。 人間社会にはもう一つ人間関係のスタイルがあって、それが「政治空間」ってやつで、 こっちは家族とか友達とか恋人との関係ですね。 金銭ではなくて、義理とか人情で人間関係を送っていくスタイルです。 社会にはこの2つの人間関係のスタイルがある。貨幣空間と政治空間。 政治空間は昭和とか平成ぐらいまで主流でした。 それが経済の発展やグローバル化、それからテクノロジーの進歩で、 「政治空間は非効率」「お金にならん」ということになってきて、 貨幣空間(すべてをお金で処理していく人間関係)のほうが効率がいいということになり、 これを採用するようになったんですね。アメリカは日本よりも「貨幣空間」が広いです。幅をきかせています。アメリカは貨幣空間に全振りしている。日本もそれを追っている。真似している。貨幣空間(お金を介した人間関係)をどんどん広げています。


こうなってくると、どういう社会になるか?義理とか人情とか、そういうコミュニケーションが、 嫌になってくるんですね。 「効率が悪い」と感じてくる。お金にもならないのに、 嫌いな人と一緒にいて、気を使わなくちゃいけないって。一度、貨幣空間の快適さを知った人間からすると、嫌で仕方がないんですよ。 例えば、Uber Eatsというのがあります。 あれは貨幣空間の象徴で、お金を払いさえすれば、 家から出ずに、おいしい料理が届く。ものすごく便利なサービスです。 政治空間ではどうするかというと、 自分の親や親戚とかでご飯を作って、みんなで食べるという、そういう生活だったわけですよ。


どっちが楽かというと、断然UberEatsですよね。 UberEatsのほうは誰に忖度するわけでもなく、誰の機嫌をうかがうわけでもなく、 ボタンをポチッと押しさえすれば、美味しい料理が家に届く。 これが、貨幣空間の快適さです。 これを味わった人は、政治空間から距離を取りたくなる。 というわけなので、「政治空間が縮小して、貨幣空間が拡大する」、 そういう大きな流れなんですね。


この貨幣空間の拡大に伴って、何が副産物的に生まれてくるかというと、 「自由な個人」です。貨幣空間が大きくなればなるほど、自由な個人が増える。 「人と一緒にいる」ということは、そこに金銭が発生しないですよね。 例えば、友達と遊ぶ。それから恋人といる。家族といる。 その時にお金を稼げるか?お金にならないですよね。 家族の手伝いをして1万円もらうとかないですよね。 だいたい無償労働ですよね。政治空間はほとんどが無償労働。 貨幣空間がこれだけ拡大している中で、政治空間に長く居続けると、 どんどん貧乏になってしまう。


お金が入ってこないと、貨幣空間で活動できない。 貨幣空間は、お金がないと何もできません。日本全体で貨幣空間が拡大している中で、 お金がないということは、非常に生きづらくなってくるんです。 なので、個人としてはどう考えるかというと、非生産的な活動をどんどん排除したい。 お金にならない人間関係を排除していって、その結果どうするかというと、 「個人」になるんですよ。一人でいる時間が長くなるんですね。 最近ニュースでもありましたけど、 「友達といるのが好きか、それとも一人でいるのが好きか」って聞いたときに、 かなり多くの人が「一人でいるのが好き」と答えるようになっているんですね。 これはもう、貨幣空間が拡大しているので当たり前なんですよ。 貨幣空間が主流の社会においては、一人でいたほうが効率がいい。 なぜかというと、一人でいた方が経済活動に加われるからです。 政治空間に長くいると、お金を稼げない。 その分貧乏になってしまう。なので、ここからはできるだけ離れたい。 というわけで、一人になって経済活動に加わる。つまり働く。 個人の時間を多くして、その時間でお金を稼いで、 お金をたくさん得れば、貨幣空間が広がってますから、 やりたいことをなんでもできる。 家にいながらご飯を食べられる。 お金を払いさえすれば、 どこにでも行ける。欲しいものはAmazonで買える。 見たいもの全部見れる。 本も映画も音楽も全部いける。そういうことなんですね。


この貨幣空間が拡大している時代に、 個人はどうなりたいか?自由になりたいんです。 そして個々人が自由を追求している世界/社会はどうなるかというと、「利害の衝突」があちこちで起きる。 権利の主張が起きてくるんです。「職場でセクハラされる」、以前だったら、政治空間の中で処理されてました。 目上の上司の機嫌をとるのは当たり前でしたね。義理人情、タテ社会ですから。でも、いまは貨幣空間が拡大している。上司のご機嫌とりなんていう無償労働はしたくない。 だから、職場にパワハラ上司がいた場合、すぐに告発して、 そいつを抹殺する。政治空間の論理で生きている人を排除する。アメリカではすでにこうなっていますよね。一人一人が強烈に自由になりたがっているので、 みんなが権利を主張する。 そうすると、どこでもイザコザが起きるんですね。摩擦が起きる。


この摩擦は、貨幣空間が完全に行き渡ると最小化するんですが、 ただ今、過渡期なんですよ。政治空間が徐々に縮小していって、 そこに貨幣空間が侵食していっている状態。なので、「政治空間の論理:政治空間の振る舞いをしている人」が、どんどんキャンセルされていく。 一方で、貨幣空間の振る舞いで生きている人が、 権利を主張して、告発をして、職場とか人間が交わるところから野蛮な人、 つまり政治空間の論理で動いている人を、排除していっているのが今なんです。


話が複雑になってきたのでまとめると、 なぜこれだけキャンセル、告発が起きているかというと、1つは「評判の再分配」です。 評判経済になって、評判をたくさん持っている人は、ものすごくお金持ちになる。 効率的に地位や名声をゲットする。そうなると、人間社会というのは、成功者の足を引っ張りますから、 成功者を叩く。評判を落とす。 そうなると、評判が分配されるので、「よかったね」となる。 だから告発をするということ。


2つ目が、「貨幣空間が広がっている」ということ。貨幣空間とは何かというと、お金を介した人間関係。 お金で処理する関係ですね。これの対極にあるのが「政治空間」といって、ここはお金を使いません。 家族、恋人、友達。この人たちとは「お金のやりとり」を前提にしていないですよね。だいたい思いやりとか義理・人情で付き合ってますよね。家族の送り迎えをしてお金をもらうことなんてないですよね。 先進国(特にアメリカ)では、貨幣空間がどんどん拡大しています。日本でも加速しています。


なぜ加速しているかというと、「貨幣空間のほうが快適だから」です。それはUber Eatsの例でお話ししました。 ご飯を食べるときに、Uber Eatsをポチッと押せば、美味しい料理が運ばれてくる。お金を払えば、そういうのが無限に手に入る。 その快適さを味わった人間は、どんどん政治空間という煩わしい人間関係を排除したくなる。お金にならないのに「ご機嫌をとる、顔色をうかがう」、これってクソじゃね?ということで排除。その代わりに貨幣空間を広げる。貨幣空間には「気を使う」なんてことはありません。お金を払いさえすれば、何でも手に入るのでね。「貨幣空間は楽だ」ということで広まっています。

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