僕が誘拐した女は僕がずっと追いかけていた幼馴染でした
キャスター:田村保乃さんが誘拐されて今日で約一年。まだ見つかっておりません。
ニュースキャスターがテレビでそう告げる。
〇〇:もう一年か
??:早いなぁ
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1年前
〇〇:はぁ。どうすれば良いんだろ。
僕の名前は森田〇〇。今は路頭に迷っており、良くない事を考えてしまっていた。
ピンポーン
僕はあるアパートの部屋のインターフォンを押す。
??:はーい。
女性の声が聴こえ、僕は覗き穴から見られないようにしゃがみ込む。
??:はい。どなたですか?
僕は女性が出てきた瞬間にその女の口を抑え、手を取り、車に乗せた。
〇〇:ごめんな。
僕は一言そう呟いた。
僕はラブホテルの駐車場に車を止め、誘拐した女の目隠しと口枷を取った。
??:え?〇〇?
〇〇:お、おう。
彼女の名前は田村保乃。保育園からの幼馴染で高校も一緒で僕が毎日追いかけていた幼馴染。親の転勤など色んな事情で疎遠関係になっていた
保乃:〇〇、久しぶりやなぁ
〇〇:う、うん。久しぶり。
保乃:何でこんな事するん?
〇〇:い、いやそれは
保乃:保乃を誘拐してどうするつもりなん?
〇〇:そ、それは
保乃は大きな目を凝らし、僕から視線を逸らさない。
〇〇:ご、ごめん。今日の事忘れて
保乃:えー忘れないよ。ってか、忘れられないよ。
〇〇:ほんとにごめん。今から家に送るから。
保乃:もう無理だよ。
これ見て。
保乃は携帯画面を見せる。
〇〇:ま、まじか。
その携帯画面には保乃の彼氏の心配メールと警察に通報したという内容が載っていた。
保乃:取り敢えず今日はホテルで一日過ごそ?
〇〇:う、うん。
僕は保乃にバレないように1番安い部屋を選び、保乃とホテルの部屋に入る。
保乃:〇〇、元気してた?
〇〇:う、うん。保乃は?
保乃:元気やったけど、〇〇に会えなくて寂しかった
〇〇:俺も寂しかったよ。急に保乃が居なくなるから
保乃:ほんとごめんな。
〇〇:いや、俺こそほんとにごめんね。
少し無言の状態が続き、僕が口を開こうとした時に保乃が先に僕にこう言った
保乃:何でこんな事したん?
〇〇:なんかむしゃくしゃしてて。
保乃:それで誘拐したん?
〇〇:う、うん。ほんとにごめん。やっぱ帰ろ?ちゃんと警察にも謝って彼氏さんにも謝るから
保乃:多分、もう無理やで。
〇〇:え?何で?
保乃:多分、防犯カメラ見られてるし
〇〇:え?それが何?俺は保乃と幼馴染で会いたくなってって言えば
保乃:私を誘拐する時、凄い勢いで私の事襲ったんだよ?
〇〇:う、うん。
保乃:そんな映像が残ってるのに、幼馴染とか信じてくれると思う?
〇〇:でも、それは保乃が言ってくれれば
保乃:脅迫されてるって思って信じてくれないよ。しかも、私の彼氏凄くメンヘラ気質あるから絶対許さないと思う
〇〇:まじか。じゃあどうすれば良いの?
保乃:私と駆け落ちするしかないね?
〇〇:駆け落ちってそんなに大事にしたくないよ
保乃:でも、誘拐した人が保乃やなかったらどうするつもりやったん?
〇〇:そ、それは別に
保乃:ほんまは助けてくれたんやろ?
〇〇:え?
保乃:保乃が彼氏にDV受けてるから
〇〇:い、いやそんな事は
保乃:ほんまにありがとう。
保乃は僕に抱きついてくる。
保乃:会いたかった。
〇〇:遅くなってごめん。
保乃:〇〇はほんまにツンデレさんやな
〇〇:ごめん
====================================誘拐する1ヶ月前
〇〇:久しぶりに帰省したなぁ
夏鈴:〇〇、おかえり
〇〇:あー夏鈴、迎え来てくれたんだ。
彼女の名前は藤吉夏鈴。幼馴染。
夏鈴:そういえば帰ってきてるらしいよ?
〇〇:え?誰が?
夏鈴:保乃。
〇〇:え?嘘でしょ?保乃って田村?
夏鈴:うん。あんたが好きだった田村保乃。
〇〇:え?じゃあ3人でご飯食べ行こうよ。
夏鈴:いや、それがさ
夏鈴は今の保乃の事について話した。
〇〇:彼氏がDVで家に出させてもらえない?
夏鈴:うん。この前、保乃のお母さんとたまたま会ってその時に聞いたの。
〇〇:保乃のお母さんもこっちに居るの?
夏鈴:うん。保乃のお母さんは今、精神的な病で入院してる
〇〇:精神的な病って?保乃のお母さんが何で?
夏鈴:保乃のお父さん居るでしょ?
〇〇:うん。あのめちゃくちゃ優しかった父親でしょ?
夏鈴:ほんとはね、優しくなんかないの
〇〇:どうゆう事?
夏鈴:家ではモラハラが酷かったらしいの。保乃が突然居なくなったのもそれが原因らしい
〇〇:そうだったんだ。それで保乃の父親は今、どうなってるの?
夏鈴:今は保乃の父親と彼氏と保乃の3人で暮らしてるらしい
〇〇:え?それってやばいんじゃないの?
夏鈴:うん。でも、どうする事も出来ないし、保乃を家から出す事も出来ない
〇〇:まじか。
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〇〇:夏鈴に色々聞いてさ
保乃:そうやったんや。それで助けてくれたんや
〇〇:うん。こんなやり方しか思いつかなくて怖い思いさせちゃってごめんね。
保乃:ううん。大丈夫。最初に襲われた時は怖かったけど、〇〇の服の匂いで落ち着いて
〇〇:え?俺の服の匂い?
保乃:うん。会うの久しぶりなのに〇〇の匂い忘れてなかった。
〇〇:凄いな。そんなに良い匂いか?
保乃:別に良い匂いって訳では無いんやけど、なんか癖があるから
〇〇:癖?それって臭いって意味?
保乃:いやいや、そうゆう事じゃないよ。
〇〇:まぁ良い意味で捉えとくわ
保乃:うん。それでええよ。
〇〇:保乃、こんな時にこんな事言うのおかしいと思うけどさ
保乃:うん。なーに?
〇〇:俺と付き合ってください。
保乃:もうほんまに今、言う事じゃないよ。
〇〇:ご、ごめん。しかも、彼氏が居るのに
保乃:保乃の事一生守るって約束してくれる?
〇〇:え?
保乃:守れへんの?
〇〇:守るよ。一生保乃の隣に居る。
保乃:ふふ。
保乃は優しい笑顔で僕を見つめ
保乃:破ったら許さへんからな
〇〇:う、うん。
ホテルの外からはサイレンが鳴り響く。
保乃:私たち探されてるんかな?
〇〇:え?もうそんな感じになってるの?
保乃:分からへん。でも、見つかるのも時間の問題やな。早くこの街から出て行かんと
〇〇:そうだな。明日にはもう出よう。俺が一人暮らししてる家に住もう
保乃:え?〇〇、今一人暮らししてるん?
〇〇:うん。
保乃:そうなん?じゃあ明日から〇〇と同棲?
〇〇:まぁ同棲っていうか隠れるって感じやな
保乃:え?同棲やろ?
〇〇:同棲って言うとなんかカップルみたいな感じやん
保乃:え?カップルちゃうん?
〇〇:カップル?
保乃:さっき告白してくれたやろ?
〇〇:え?で、でも保乃には彼氏が居るし
保乃:もうほんとにそんなので保乃を守れるの?
〇〇:ご、ごめん
保乃:ええか?
〇〇:ん?
保乃:今日から〇〇は保乃の彼氏。保乃は〇〇の彼女。
〇〇:うん。
保乃:でも、夢だったんだよね
〇〇:何がよ?
保乃:〇〇と同棲するの
〇〇:それが夢だったの?
保乃:昔から〇〇の事好きやったから。
〇〇:え?昔から?
保乃:うん。私は小さい頃からずっと〇〇しか見えてなかったよ?
〇〇:で、でも今の彼氏は?
保乃:今の彼氏は父の会社の人と無理矢理付き合わされてるだけやから全然好きじゃないんよ
〇〇:そうだったんだ。保乃、大変だったな。
僕は自分が情けなくなり涙を流した
保乃:もう〇〇泣かんとって。保乃も泣いてまうやろ?
保乃はそう言い、再び僕を優しく抱擁してくれた。
次の日
僕と保乃は帽子とマスクを付け、病院に向かった。
保乃:お母さん、久しぶり。
保乃母:ほ、保乃何してるん?もしかして隣に居るのは〇〇?
〇〇:お久しぶりです。
保乃母:さっき警察来たよ。あんた達何してるの?
保乃:ご、ごめん。
〇〇:すいません。
保乃母:早く逃げなさい。
〇〇:え?
保乃母:もうすぐお父さんがこの病院に来るらしいから
保乃:え?ほんま?
保乃母:だから、早く逃げて。
保乃:う、うん。
保乃は僕の手を取り、病室を出ようとすると、、、
保乃母:〇〇。
僕を大きな声で呼び止め、、
保乃母:ここからの保乃の人生頼んだよ。
保乃のお母さんはそう言い、僕は深く頷いた。
夏鈴:〇〇と保乃、何してるの?
僕と保乃が病室を出ると、夏鈴が居た。
〇〇:夏鈴こそ、何してるん?
夏鈴:私、この病院にお世話になってるの
〇〇:え?どうゆう事?
保乃:〇〇やばい。お父さん来た
〇〇:え?まじ?
保乃:うん。逃げよ?
〇〇:夏鈴ごめん。また後でな。
僕と保乃は急いで病院を出て行った。
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そして、一年後。
この一年で夏鈴は病気でこの世を去り、僕と保乃は逃げ続ける生活をしていた。
保乃:〇〇、今日で一年記念日やな
〇〇:そうか。もうあの日から1年か。
保乃:ほんまに〇〇に誘拐されて良かった。ほんとにありがとう
〇〇:いや、感謝を言うのは俺のほうだよ。ほんとにありがとう。
保乃:ねぇねぇ〇〇、ほんまに今めちゃくちゃ幸せ
保乃は満面の笑みで僕にそう言う。
〇〇:俺も幸せだよ
保乃:ほんま?
〇〇:うん。
保乃:これからもよろしくな
〇〇:あのさ、保乃に言いたい事がある
保乃:え?なになに?
〇〇:自首しようかなって思ってる
保乃:え?何で?保乃の事嫌いになったん?
〇〇:ち、違う。保乃の事が好きだから。
保乃:どうゆう事?
〇〇:このままずっと逃げ隠れしてたら保乃と結婚出来んやろ?
保乃:ま、まぁ
〇〇:だから、ちゃんと警察に自首してやった事を反省して償いたい。
保乃:〇〇。
〇〇:旅行とかも2人で行きたいしね。
保乃:〇〇、それ本気で言うてるの?
〇〇:うん。また保乃を孤独にさせちゃうけど、帰ってきたら倍以上に愛すから
保乃:絶対約束やからな?
保乃は目に涙を溜めながらそう言う。
ピンポーン
家のインターフォンが鳴る。
保乃:あ、保乃出るな
〇〇:ダメだよ。そんな涙流してる状態で出れないでしょ?
僕はそう言い、保乃を座らせ玄関に向かう。
〇〇:はーい。
僕が部屋の扉を開けると、、、
??:探したぞ。
グスッ
〇〇は心臓をナイフで何回も滅多刺しされた。
保乃:〇〇、大丈夫?
保乃は玄関に向かうと、〇〇が血を流して倒れていた。
そして、玄関には、、
保乃:何でここに居るの?
保乃の事をDVしていた彼氏がナイフを片手に持っていた。
私の悲鳴で隣の部屋のおばちゃんがすぐに警察と救急車を呼んでくれた事もあり、私は無事だった。
しかし
病院にて
保乃:〇〇の嘘つき。
保乃は眠っている〇〇の横で泣き崩れた。
[終]
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