味噌汁の味だって変えられる

私の夫はアメリカ人だ。彼の三度目の日本留学で、私たちは出会った。その時点で上手だった日本語は、今は仕事で扱えるくらい流暢だし、日本文化への理解もかなりある。ときどき、いや、もうほとんど、彼がアメリカ人だと意識すらしていない。だから「国際結婚の大変さ、国際カップルあるある」みたいのは、幸か不幸かあまり感じない。おもしろくなくてごめんね。

以前、いちごの食べ方に違いがあると書いたように、大なり小なり意見が分かれることはもちろんある。トウモロコシはおやつかごはんか、お風呂の温度は熱々かぬるめか(私は熱々が好き!)、洗濯物は外に干すのか乾燥機を回すのか…。探し出したらキリがないのだけれど、ふと気付く。これって、日本人とかアメリカ人とか関係ないのかも。

その証拠に、私の父は結婚当初から母に赤味噌で味噌汁を作るように言っていたらしい。父の実家は長野。土地柄なのか知らないが父方の祖母の味噌汁は赤味噌だった。母の作る味噌汁は、白味噌の大粒麹入り。不本意ながらも赤味噌で味噌汁を作ったこともあったと聞いた。

ちなみに我が家の味噌汁は、白味噌の麹入り。夫は、私の作る料理に不満は一切漏らさないが、ハンバーグやパスタの茹で加減にはちょいと厳しい。(あと何故か米の炊き加減にもうるさい…そこは日本人として少し悔しい)

とにかく、生まれも育ちも全く違う環境で生きてきた二人、という意味では、日本人同士であっても変わらないのだ。神奈川の母と長野の父を持つ私は、もはやハーフだとすら言える。みんなハーフだ。田中家と鈴木家のハーフ。違う文化の混ざった人間だ。ただ難しいのは、その違いを受け入れること。それが私たちの場合は「アメリカではそうなんだもんね」とか「日本人はそれが好きなんだね」などと、納得しやすい。

人間の価値観は、本当に多様だ。そして一緒に生活していると「あなたはあなた、私は私」と言えない場面も出てくるだろう。我が家では、もうすでに育児について話すと、義実家も含めて価値観の違いが露骨に出ることがある。

出産後いつから外出できるか。予防接種は必要なのか。布団かベビーベッドに寝かすのか。母乳かミルクか。抱き方は、離乳食は、叱り方は…。こんなにも認識が違うものかと驚く。

みんな「子どものために、こっちのほうがいい」と信じているのだから譲れない。自分のことならいいけどね、なかなか難しいなあと感じている。

でも私たちの両親はクールなので「まあ結局決めるのはあなたたちだよ」とカードをこちらに渡してくれる。日本、アメリカ、神奈川、長野。いろんなところの、いろんな価値観を手札に加えて、あとは私たち夫婦と、子ども次第だ。

これからゆっくり決めていこう。今日の夜ごはんは私の白味噌仕立ての味噌汁にするのか。彼のやり方でハンバーガーを作ってもらうのか。いずれにせよ、作ったものは文句を言わず一緒に食べよう。きっと違う文化が混じり合った新しい料理は、私たちらしい新しい文化を作ってくれる。

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