6月15日 娘への手紙
予定日から6日遅れで、ようやく生まれてきてくれたね。もうお腹のなかのあなたを感じることができないのは少し寂しいけれど、やっとその小さな手足、かわいい顔、黒目の多い瞳に出会えて、私たちは震えるほど嬉しい。
あなたが生まれた日から、私とお父さんは毎晩泣いています。悲しいからじゃなくて愛おしいから。「愛おしい」という感情が溢れると、人は泣いてしまうみたい。教えてくれてありがとう。あなたは生まれて数日なのに、大人の心をこんなに揺さぶる力を持っている。
たくさんの人があなたに会えるのを心待ちにしていた。会った人がひと目で笑顔になる。「元気でいなきゃね」と力になる。すごいことだ。それだけであなたの人生は満点だよ。幸せな赤ちゃん、私たちのところに生まれて来てくれてありがとう。
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これから、たくさんの「はじめて」を一緒に経験しようね。あなたはまだ知らないと思うけど、この世界には美味しいもの、楽しいことが本当にたくさんだよ。全部見せてあげたいな。
何かを好きなものができたら教えてね。30近くも歳が離れている私には、その魅力や理由が理解できるかはわからないけれど、あなたのことを少しでも知りたいから。一緒にたくさんの「好き」を見つけようね。
何かがこわいときは、こっそり私たちに話してみてほしい。たいして豊富でもない私の人生経験を、フル稼働してあなたの恐怖を取り除くよ。私も知らないことなら、一緒に進むから。
世の中はまだ未熟で、「ハーフだから。女だから。」そんな馬鹿げた理由で苦しむときがくるかもしれない。幸い、私たちの周りには国籍や性別の縛りを諸共せず突き進んできた人ばかりです。そして、あなたがこれから生きていく時代は、信じられないスピードでどんどん変わっていく。私もたたかうよ。大丈夫。私たちで変えていこうね。
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まだ真っ白なキャンパスを持つあなた。そこにどんな絵を描くのか、どんな色を塗っていくのか。楽しみだねえ。いろんな人や物の影響を受けるでしょう。その最初の絵の具を渡すのが、私たちだと思うとすごく緊張する。「どんな絵を描いてもいい、好きに描いていい」そう言ってあげられる母でいたいな。
でもひとつだけ、約束してほしいのは「人のキャンパスを否定しないこと」。あなたが好きなように描いていいように、人にはそれぞれの想いがあって色を塗っている。当たり前のことなんだけど、結構それが難しいって、それなりに長く生きていくとわかる。他の人の選ぶ色、描くものを「素敵ねえ」と言える人になってください。
あなたの名前には、「色とりどりの糸を撚り合わせて、縁を結ぶ」という意味が込められています。これから、いろんな糸に出会うでしょう、いろんな色を使ってみるでしょう。あなただけの人生が始まるんだね。何でもやっていいよ。私たちが守ってあげる。絶対に味方でいるからね。それが少しでもチカラとなって、あなたが羽ばたけますように。
今は生まれたばかりの愛おしい娘へ。2018年6月15日。
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