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『恋も仕事も日常も 和歌と暮らした日本人』(浅田徹)

忙しい先生のための作品紹介。第27弾は……

浅田徹『恋も仕事も日常も 和歌と暮らした日本人』(淡交社 2019年)
対応教材      和歌
ページ数      191
原作・史実の忠実度 ★★★★★
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ★★☆☆☆
レベル       ★★★☆☆

作品内容

 古典の人々にとって、和歌がどのような存在であり、どのような状況で詠まれてきたかが解説された本です。第一章、第二章では贈答歌や哀傷歌といった貴族の個人的な和歌について、第三章では歌合や定数歌など、公の場のために作られた和歌について、第四章では軍歌や和歌にまつわる民話といった雅な世界とは一線を画した和歌について解説されています。和歌を引用しつつも、現代語訳やかわいらしいイラストもついており、全体的に平易でわかりやすい一冊になっています。

おすすめポイント 雅なだけじゃない? 生活に密着した和歌

 本書の一番の魅力は、日常的な和歌に光が当てられていることです。和歌といえば、「貴族が格式高く詠み上げる」というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。しかし実際には、仕事の愚痴や友人への軽口など、日常的な場でも多く詠まれていたものでした。このような例を見ると、古典の人々にとって和歌がいかに身近であったかがわかるでしょう。
 また、個人的には『百人一首』の作者が多く登場するのもポイントです。引用されている和歌は有名な作者によるものも多く、「和歌は『百人一首』しか知らない」という人でも、自分の知識と結びつけながら読み進めることができます。

授業で使うとしたら

前項で触れたように、本書の魅力は日常的・庶民的な和歌について紹介されているところです。しかし、授業で使うとしたらやはり第一章、第二章でしょう。平安貴族が和歌を詠むさまざまな場面が、「女のつれない返事」「世の中を悲観した歌」などと、小見出しでまとまっており、端的に説明されています。そのため、和歌について学習する際に、あるいは物語や日記の中で和歌が出てきた際に、「和歌はこのようなものだ」という解説資料として用いるのがおすすめです。一節あたり見開き6ページですが、細かく小見出しがついているので、必要な箇所だけを用いることができます。
また、歌合や歌会などについて古文常識的に知っておきたい、という場合には、第三章から抜粋して資料とすることもできそうです。

目次
第一章 贈り合う歌
恋のやりとりにかかせない贈答歌
結婚前後の歌のやりとり
和歌と手紙
旅立ちと餞けの歌
第二章 人生の節目の歌
失意と喜びの歌
追悼の歌、お祝いの歌
生活の端々で詠まれた歌
第三章 みんなで詠む歌
歌会の実際
歌合の歌
定数歌というフォーマット
第四章 私的な歌・社会の中の歌
家集を読む楽しみ
戦乱と和歌・連歌
御伽草子から民話まで
和歌と人々の暮らし

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