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ねこねこと学ぶ百猫一首!?

忙しい先生のための作品紹介。第10弾は…

アニメ『ねこねこ日本史』第3シーズン 第31話「百猫えらんで、百猫一首!」(NHK Eテレ 2019)
対応する教材    『百人一首』
原作・史実の忠実度 ★★★☆☆
読みやすさ     ★★★★☆
レベル       ☆☆☆☆☆
時間        8’59”

作品内容

 藤原定家が和歌を選出し『百人一首』としてまとめるまでのダイジェストのようなアニメです。
 国家事業として後鳥羽上皇とともに『新古今和歌集』を編纂しますが、趣味が合わず後鳥羽上皇とは仲違いしてしまいます。その後の承久の乱で後鳥羽上皇が島流しとなり、御堀川天皇の命で『新勅撰和歌集』を作成するも、選出の不自由さに嫌気がさす定家。そんな時、友人・宇都宮頼綱が、彼の小倉山荘のために自由に和歌を選んでくれないか、と声をかけ、『小倉百人一首』が誕生するまでの出来事が、猫たちのキャストによって駆け足で語られます。

おすすめポイント

 一瞬ではありますが、アニメ内に『詞花和歌集』『拾遺和歌集』(4’22)、その他複数の勅撰和歌集(4’06”)が出てくるため、『百人一首』はこれらの勅撰和歌集から選ばれたのだと分かります。また、『小倉百人一首』は藤原定家の思い通りにつくられた部分が他の和歌集とは違う、ということが印象に残るでしょう。

 アニメ中盤(4’32”〜8’14”)では、以下の7首が紹介されています。
「秋の田の〜」(天智天皇)
「春過ぎて〜」(持統天皇)
「花の色は〜」(小野小町)
「このたびは〜」(菅原道真)
「めぐり逢ひて〜」(紫式部)
「来ぬ人を〜」(藤原定家)
「人もをし〜」(後鳥羽院)

 中でもポイントとなる箇所は、小野小町の「花の色は 移りにけりな〜」の説明で、花=桜であることが述べられていることでしょう。平安時代以降には、花といえば梅ではなく桜という風潮になったことが反映されています。一言で花といってもいろいろありますが、この時代の常識では何の花を指すか知った上で読むと、より当時の解釈に近づけると思います。

授業で使うとしたら

 『百人一首』が成立した背景がわかるので、『百人一首』の概要を解説するのに導入として使えそうです。また、作中で紹介されている和歌7首は、意味が簡単に説明されているので、和歌自体の解説にも役立ちます。
さらに、勅撰和歌集について、天皇から下命されて撰者が選ぶという過程、また撰者も歌を選ぶ際にさまざまな制約があったことも触れられていますので、和歌集について学習する際にも使えるかもしれません。
 ただし、あくまで興味を引くものであり、定家の父(俊成)も当時の一流歌人だったこと、新古今集の撰者が定家一人ではないこと、紫式部の歌は友人にむけられたものであることなど、説明が簡素化されている箇所には注意が必要です。

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