『SPEC』サーガと来るべき20年代と、ようやく終わる「昭和」、幽霊としての「平成」とその身体性についてのメモ
Paraviで『SICK'S 〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿〜』の第伍話完全版まで見て、「裏乃抄〜御厨・高座・堤の裏座談会〜」を最初から見た。その後で『PLANETS』のメルマガで成馬零一さんの連載『テレビクロニクル(1995→2010)』堤幸彦(9)『SPEC』後編を読んだ。
最近読んでいたマーク・フィッシャーの著書『わが人生の幽霊たち──うつ病、憑在論、失われた未来』と成馬さんの書いた堤論における『SPEC』が描いてきたもの(身体性と呪いの力になってしまった超能力(≒SPEC))とマーク・フィッシャーのいう「幽霊」はどこか呼応しているように僕には思えてきた。
そんなわけでParaviで『SPEC』シリーズをテレビドラマからドラマのSPと劇場版について見返している。『ケイゾク』は1999年の放送開始から今年で20周年だということもあり、1月にもう一度見返していた。成馬さんの『テレビクロニクル(1995→2010)』堤幸彦編を読んでいたというのもある。
↑いまだに我が家にある「ケイゾク」コンビが表紙な『H』。
当時、劇場版をリアルタイムで観た時のブログを久しぶりに見てみると、
まあ、伊藤淳史のスペックが腕の特殊能力で爪がめっちゃ伸びて飛行機を落としたりなぜか両腕がたこの足みたいになって戦うんだけどなんか特殊能力じゃなくてただのモンスター化してない? まだ浅野ゆう子がやった氷と炎を使う一人二役で交互に敵にそれをするとミイラ化しちゃうんだけど瀬文が立ち向かっていくけどこの氷と炎が交互にみたいな件がなんだか長いしダルいんだよなあ、つうか普通に瀬文ミイラになってるだろぐらい何度もやられるから瀬文なんだかんだ一般人としては最強クラスだなっていう。
『ケイゾク』から『SPEC』に続くもの。パンフを読む限り八咫烏は『ケイゾク』最初のシーンに出てくるって植田さんが言っている。
さて、この流れどうケリをつける。
終わり損ねた九十年代を終わらせることができるか敗れ去るか、それが問題だ。
今はやはり、九十年代の呪縛としか思えない。
となると『SICK'S』という「病」と名付けられたこのシリーズに連なる最新作はやはり「平成」というよりは「昭和」から続いてきたなにかを終わらすのだろう。「平成」は「昭和」という元号の亡霊であり幽霊だった。だから、「昭和」が終わらないとそれも消えはしないのだろう。
たぶん『ケイゾク』から『スペック』の流れと時代の変化はひとつの世界だけじゃなくいくつも重なるレイヤーを行き来しながら繋がりながらそれでも自分という個をいかに解放していくかみたいな、いや、なんか違うなあ。すごくモヤモヤとしたつかみ所がないけどあるものをどう捉えるか。
震災前にドラマシリーズがあった『スペック』と震災を挟んで放映された『まどマギ』が共にファンに後押しされて劇場映画化されたわけだけど、どちらの映画版にも共通するものがあってただの偶然というよりは同時多発的に出てくる表現の試行だったのかもしれないなあ、今後評論でまとめて語られそう。
漸ノ編での雅ちゃんが読んでた野々村さんの手紙とあのバベルの塔みたいなやつを爻ノ編でまったく回収してなかったけどあれなんだったんだろう、並行世界へ届いた手紙的な感じか、それも違うのかなあ。当麻が抽象概念化してしまうと。
『〜零〜』で野々村さんとか柴田が床で寝てるみたい台詞の時に真山は殉職したとか言ってたり、時折時間が誰かによって書き換えられている可能性すらあるっていう話。『SPEC』って記憶と時間の流れについて書いているような作品だったから実は細部を敢えてズラして統制してない可能性もあるから。この物語すらも書き換えられてしまう。となるとある種の並行世界が同時多発的に存在しうるし、そこを朝倉とあの朝倉に行きましょうって言ってた女性は誰だ?は行ったり来たりしているのかもしれない。
『ケイゾク』から続いた大きな物語の終わり。しかし、世界規模というか地球規模の物語になってしまった。最後の台詞に驚きは隠せないが、僕はこういう物語が好きだと思う。映画では堤作品本当に面白いのあんまりないと思うがこれは面白いと思う。『漸ノ編』はまだいいけど、『天』はつまんなかったし、諸々と思いはあります。
つうか『劇場版 SPEC〜結(クローズ)〜 爻(コウ)ノ篇』に関しては二回観に行っていたという、1回目は深夜の最速上映でタワーみたいなところで戦ってるときにマジで地震が起きたせいで、現実と映画が一瞬シンクロしてしまってめっちゃ怖かった。
『爻(コウ)ノ篇』で、瀬文が「当麻、来世で待ってろ」と言う世紀末的なシーンは、レディオヘッド『Kid A』のラストナンバー『Motion Picture Soundtrack』を思い出させる。もう絶望的な世界で最後にやさしい希望を述べることができるなら、伝えるならそれぐらいしか言えない。たとえ来世がなくても、そういうことしかできない。
『SICK'S 〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿〜』は基本的には序破急という三部構成らしいので、今後の配信やもしかすると映画化辺りも予想されるが、最後まで見届けたい。しかし、『ケイゾク』に出てきた朝倉との決着は着くのだろうか、あるいは『爻ノ編』の最後での朝倉と一緒に行きましょうって言っていたのが『SICK'S』の御厨ってオチは、さすがにないか。ニノマエイトだと意外性がないし、どうなんだろう。
以下は『PLANETS』有料メルマガの成馬さんの連載です。これはほんとうにおもしろいし、中身が濃厚なので堤ファンは絶対読んだ方がいいやつ。
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