見出し画像

【まなスト⑦】ゆうこ博士(科学者/宇宙博士)

今回、インタビューをさせて頂いたのは「ゆうこ博士」。

ゆうこ博士は、岡山県うまれ、京都育ち。千葉工業大学研究員惑星探査研究センター(非常勤研究員)、東京薬科大学大学院生命科学部(助教授)、ご主人との海外生活を経て、2021年から「ゆうこ博士のわくわく科学教室(YUKO's Hands-On STEAM Class)」を運営しています。今回は、そんなゆうこ博士に「今までの学び体験」を中心にお話を伺ってみました!


↓ゆうこ博士のわくわく科学教室(公式HP)



「宇宙の研究」とは?

こんにちは。まず、お伺いしたのは、ゆうこ博士は大学卒業後、「研究者(科学者)」としてキャリアを歩んでこられたと思います。具体的には、どのような研究をされてきたのでしょうか。

「はい、分かりました。私の場合、大学卒業後は主に『千葉工業大学研究員惑星探査研究センター』『宇宙科学研究所(JAXA)』『東京薬科大学大学院生命科学部』の3つの場所に所属をしながら、研究を進めてきました。博士号を取得したのは『東京薬科大学大学院生命科学部』です。2013年に取得しています。専門分野は『生命科学』です。私の場合、自分の専門分野をシンプルな言葉で説明するならば『宇宙』と『生命』だと思います。例えば、宇宙に生命は存在するのか、どのような生命体ならば宇宙でも生きていけるのか、などを実験を通して検証しながら研究していました」


そうなんですね! そのように聞くと、とてもわくわくするというか、夢のある研究に聞こえますね。実際に、宇宙に生命は存在するのでしょうか? 宇宙人はいるのでしょうか?(笑)

「そうですよね(笑)。私の研究の話をすると、一番聞かれる質問はそれだと思います。その質問に対して、科学者として答えられることがあるとすれば『現段階では、宇宙人がいるということを証明する事実はない』ということです。ただ、同時に『いないことを証明する事実』もありません。なので、結論としては『分からない』というのが正確な答えです。分からないからこそ、みなさんの想像が膨らみ、楽しいのかもしれません」


そうなんですね(笑)。たしかに、宇宙という言葉を聞くと、分からないことや未知の部分が多いからこそ、わくわくするのかもしれませんね。ゆうこ博士は実際はどのような研究をされていたのでしょうか?

「宇宙研究、と言うと、これもまたイメージが膨らむかもしれません。宇宙飛行士のように宇宙で飛び回りながら研究しているように思う人もいるかもしれませんが、実際はもっと地道な研究です。そもそも科学の分野は全てそうですが、研究を進める前には『準備』をしなければいけません。何を目的に、どんな研究をするのか、ということを先行研究などを膨大に読み漁りながら、計画していきます。この段階が研究の『準備』です。その後、実際にその仮説が正しいのか間違っているのかを『検証』していきます。これがみなさんがイメージする研究で、実験もその代表的なひとつです。宇宙分野の場合、少し特殊なのは『準備』にものすごく時間がかかることです。ひとつの実験をするために『5年~10年』の時間をかけ、構想を練るのが普通です。そして、99%答えが分かっているような状態になったら、実際に宇宙で実験を行います。これは、他の科学分野と異なり、宇宙というのが特殊な環境なため、地球上で同じ環境を再現することができないからです。私の場合は『宇宙の生命』が専門分野ですので、宇宙で微生物が生きられるかなどの研究をしていました」

画像4

↑微生物の生死を確認する実験。ひとつひとつ手作業で数えます。

「科学者」のキャリアとは?

なるほど、ひとつの研究に「5年~10年」も時間がかかるとなると、相当な時間ですね。科学者と聞くと、すごく華やかなイメージもありますが、実際は結構地道なことをやっているんですね。

「はい、ものすごい地道ですね。逆に言うと、そうゆう地道な作業ができない人は研究者には向いていません。あまり知られていませんが、大学を卒業して自分の好きな研究ができる人はほとんどいません。多くの科学者は教授などの研究をサポートすることが最初の仕事です。そのような仕事を数年、数十年やった後で、はじめて自分のテーマを研究することができるようになります。その意味では、科学者はすごく地道な仕事だと思います」


意外ですね、科学者と聞くともっと自分の好きなことばかりをやっている人というイメージがありました。実際は、そうでもないのですね。例えば、ノーベル賞を取るなど、そのような領域にいる人はどのようにキャリアを歩んでいくものなのでしょうか?

「ノーベル賞というと、かなり別次元の話になりますが(笑)。科学者の一般的なキャリアでいうと、教授を目指すことがひとまずの目標になります。ただ、教授になるにもかなり時間がかかります。自然科学分野でいうと『ネイチャー』や『サイエンス』という論文集があるのですが、それに掲載されるような研究をいくつもしなければいけません。そのような論文集に掲載されることが科学者としての『実績』になります。その上で、科学者の世界でも『人間関係』は大事なので、そのような要因によって教授になれるかどうかが決まっていきます。このあたりは普通の会社と似ているかもしれませんね。昇進するためにはやはり『人脈』が必要です」

そうなんですね、なんだかリアルな話ですが、科学者も大変なんですね。そう聞くと、ますます科学者がすごい仕事に感じてきました。


「海外大学」での生活。

さて、少し話が変わりますが、ゆうこ博士は、ご主人も研究者であり、ご主人の研究の関係で数年、海外で生活をされていたようですね。そのころの話を少し聞かせて頂いてもよいでしょうか。

「はい、私の夫も研究者をしており、その関係で約2年間、アメリカ合衆国のコネチカット州のイェール大学近辺に住んでいました。私自身はイェール大学で研究活動を行っていたわけではありませんが、そこでの生活を通して『日本とアメリカの教育の違い』を強く感じました。まず、一番大きいのが『ダイバーシティ(多様性)』についてです。人種のサラダボウルという表現もあるくらい、アメリカには多様な人種、考え方を持った人がいます。肌の色や宗教なども異なります。その中で、大学という機関でも多様性を受け入れること、が重視されています。私は研究者の配偶者という立場でしたが、同じような『研究者のパートナー(性別問わず)』『インターナショナルスカラー』の人たちに対して、大学が専用のコミュニティ施設を作っています。その施設では大学生などがボランティアで英語を教えており、より早く地域での生活に慣れるようにサポートしてくれます。また、州立の同様の施設もあり、私も利用していました。とにかく、アメリカ国籍ではない人も幅広く受け入れるという環境が、日本とは全く違っていました」


そうなんですね、それは日本の大学では考えにくいですね。トップの国公立大学でも同じような施設はないですし、そもそもそこまで配慮するという考え自体が、日本にはないようにも思えます。

「アメリカの場合、日本と異なり、私立大学が中心であり、卒業生からの寄付金が大学の財政を大きく支えています。そのような事実からも、日本よりも「大学」や「大学を支える地域」への愛着が大きいと思います。イェール大学に関しても、周辺の地域はイェール大学の関連施設によって、多くの雇用が生み出されています。その意味で、大学が地域を支えているのは事実だと言えます」


ありがとうございます。ところで、日本とアメリカの教育の違いは、感じる部分はありましたか?

「良い意味で、アメリカの教育は『適当』だなと感じました。これは悪い意味ではなく、とにかく『学ぶ側の主体性』を大事にしているという意味です。日本の場合は、良く言えば『親切』ですが、悪く言えば『大人が与えすぎている』ようにも感じます。アメリカで受けた英語の授業は、本当に先生がふらっと来て、授業時間内だけおしゃべりをして、帰っていく、そんな感じです。時間外の学習は自分でしてきてね、という感じです。もちろん、学校にもよるでしょうが、日本とは大きく異なるように感じました」

画像3

画像4

現在の活動「科学教室」

日本に帰国後は、地域で「ゆうこ博士のわくわく科学教室」を運営しています。それまでの「研究」から、「教育」へと活動が変わっていったのは、どういったきっかけだったのでしょうか?

「実は、教育に関してはかなり前から関心がありました。博士課程のころから、夏休みなどの期間を利用して『子ども向けの実験講座』をやっていました。今の教室の原型、みたいな感じですね。今思えば、自分には『研究』より『教育』のほうが向いているのかもと感じていたのかもしれません。少なくとも、研究者として一生、生きていくという風には思っていませんでした。その後、アメリカで日本とは違う教育に接し、より日本の教育に足らないものを感じるようになりました。そのような経緯で、科学教室をはじめています」


そうなんですね、たしかに日本とアメリカを比較すると、日本の教育が変わる必要性が肌で分かりますよね。ゆうこ博士の活動は「科学雑誌」にも掲載され、テレビ番組にも出演されています。今後の活躍が楽しみです。本日は長い時間お話を聞かせて頂き、ありがとうございました!


画像2


いいなと思ったら応援しよう!