「袖」という空間
ベトナムフェスティバル2021、初めて本格的に舞台制作に携わらせてもらった。
ステージ袖から見る演者たちはきらきらしていて、この角度は特等席なのだと知った。
そんな「袖」という空間について、私が感じたことを書いていこうと思う。
まず、まっさきに思いつく袖の役割とは「人やモノの待機・入りはけ」だろう。
しかしその物理的な役割のほか、精神的にも大きな役割があると私は思う。
「精神的役割」。それはつまり、「袖=出演者がより良いパフォーマンスをするための仕上げの空間」ということだ。
そのために、袖のスタッフは、各演者の様子を察して声をかけたり(かけなかったり)空気を作ったり(放っておいたり)することで、気持ちを整えるお手伝いをする。
何かトラブルがあった際の対応のほか、袖で演者に「いま、盛り上がってますよ~!」「お客さんたくさんいますよ!」等と伝えて気分を盛り上げたり、「行ってらっしゃい!」と笑顔で気持ちよい声がけをすることがいかに大切か。
現に今回のフェスティバルでは、袖で私とと交わしていた会話を演者がMCに取り入れ、観客が湧いた場面があった。袖スタッフの仕事はパフォーマンスの良し悪しに影響し得るということを実感したのである。
私自身、ギターやダンスをやっており、様々なステージに立ってきた。本番直前の袖で声をかけてくれたり、背中をバンと叩いてくれた仲間のおかげで良いパフォーマンスをできたことが何度もある。
観客として舞台を訪れると、見えるのは演者とごく一部のスタッフのみである。しかしその傍らには、演者を絶妙なコンディションへともっていく「袖」が必ず存在するのだ。