思いの節
楽しい会話をしてないければ、死んだも同然。口から産まれたのではないかと感じるほど、おしゃべりな友人がいる。彼は面白かどうかというよりかは、非常に頭の回転速度が早いと言える。
どの点で早いのかというと、会話中の一つずつのワードから関連しているいくつかの無関係な事象を思いつき、会話の中に織り交ぜてくれる。それが、単純な会話ではなく、より深みとコクを生むような会話になるため、興味深いという意味で彼との対話は楽しいのだ。
つい先日、居酒屋にて、その彼と話をした。
最近どうよ、残業が多いと前回は言っていたけれども、変わらずかね。
単純に残業や仕事の状況について、答えてくれれば良いものの、彼はこう答えた。
そう、呪いがねぇ。つい先日、残業をし続けないと、死んでしまう呪いにかかってしまったのだよ。でも、残業も長いわけではなく、いまは私がしたい仕事で時間を使っているから、楽しいことをして、お金をもらっているなんて、神様が許してくれないだろう。来年の初詣では、呪いの意味がなくてごめんなさいと謝っておこう。
返答が長い。
というか、こいつは何を言ってるんだ。初詣?呪い?でも、ここで、そうなんだ、と一蹴するのは簡単だ。せっかくなので、話をあわせてみよう。
なんだ、呪いにかかってしまったんだね。それは、どうしたら解呪できるのだろうか。キスをするのか、それとも、特級呪物でも使わなければならないのか。
古典的な物語から、最近の漫画での流行り物も組み入れて、反応してみた。
何いってんだてめぇ。てめぇなんかとキスしたら、唇が腫れ上がって、全身に毒素が周り、呪いで死ぬ前に死んでしまうわ。
ひどい。ひどすぎる。呪いの次は毒か。というか、私が毒なのか。毒舌すぎないか。
そうだ、君が毒なんだ。だから私も君に毒を吐いた。毒は同じ毒を持って制さなければならないからな。
というような感じで、本当にどうでもいい話だが、単純な往復の話より、興味深いものになる。深みがあるかというと、前言撤回の余地があるかもしれないが、寡黙な人や、聞いたことに対して素直に返答する人に比べれば、この時間は有意義で、終わってほしくないとも思える。
何も考えて内容で、考えているそんな、なんでもない日常が、今日もまた終わっていく。