アーティストビザ取得の道のり 〜作業編〜
2019年5月にニューヨーク州立大学にてダンス専攻を卒業した後、NYCに引っ越し2019年12月に弁護士との最初のミーティングをし、
2021年10月 移民局により承諾
2021年12月 最終面接通過し、ビザが正式に降りた!!!!!
という、パンデミックを間に挟みながら 2年越しでやっと通ったアメリカで働くための就労ビザの過程 を書き記しておこうと思います!!
アーティストビザって何?
O-1 Visa: Individuals with Extraordinary Ability or Achievement. 科学や教育、事業、スポーツの分野における顕著な外国人や芸術(ビジュアル・アーツとパフォーミング・アーツなどを含む)、映画、テレビで優れた才能を持つ個人に発行されるビザ。
このうち、O-1B Visaは芸術、パフォーマンスにおいて(映画/映像は別カテゴリ)「extraordinary卓越した」者に降りるもので卓越能力者ビザ、アーティストビザなどと呼ばれています。
渡辺直美さんがこのビザを取得して、ニューヨークに移住したというニュースがありましたね!! スポーツカテゴリーではイチロー選手もこのO-1ビザでアメリカで活躍されています。
このビザのとにかく難しいところはいくら日本国内で活躍実績があってもアメリカで知られて且つアメリカでの活動が認められ、その上ビザ発行がアメリカにとって利益のあるものであるものを全てポートフォリオと推薦状の紙面上のみで証明しなければならない所です。
そう!資料での説得力、すなわちセルフプレゼンテーションの力なのです!!!!
舞台や踊りや歌など、表現者の魅力は実技で素晴らしさが伝わるものです。それを見ず知らずの移民局の(それも必ずしも観劇とかエンタメに興味がある審査官ではない)赤の他人に紙面上で「うむ、この人はすごい。ビザ発行!」って言わば説得させなければなりません。
ビザ申請に必要なもの
・アーティストポートフォリオ
・自分が大きく取り上げられたメディア、記事
・CV (今までの芸歴全てを記したもの)
・著名人/功績者からの推薦状 4〜6枚
・アメリカでの雇用主からの雇用/採用の手紙 4〜6枚
・アメリカ国籍で在住人からのスポンサー同意書
もちろん、弁護士についてもらってたくさんある書類など間違えないように手順や資料の確認、移民局への提出をサポートしてもらう場合と、完全に個人で提出する方もいるようです。ビザ申請料の他に当然、弁護士を通す場合は弁護士への依頼料も入ってきます。お金のあれこれはまた別の記事でお話しします.......
アーティストポートフォリオ
功績/実績はともかく、その実績をやった証拠(自分の名前が明記されてるリハーサル記録、スケジュール表、メールのやりとり、写真、その実績がなぜ卓越しているのか理由づける為の高評価レビューの記事、誰が関わってるか、劇場/企画の大きさの証拠ナドナド...),
一番ボリュームたっぷり資料集なので資料作りから印刷から全てが大変!!!
これは確かまだ1/4も印刷しきってないとき... こればかりは(なぜか)電子版で提出ではなく、全て印刷して紙面資料での提出となっているので、本当に本当に1ヶ月くらいは毎日印刷してた気がします......
これはとにかく資料を遡って集める他ありません。コツコツ探して、見つけたらPDFで保存して、ちゃんとフォルダ作ってカテゴリ別に分ける...
アメリカでの仕事ですごく助かるのはリハーサルなどの連絡は全てGmailっていうところが主流なのでストレージさえ気をつけていればGmail内のサーチで探してるメールはすぐ見つかる!
特にアメリカの企画のPR部門はとても優秀なところが多いので小さな劇場や公演でも何かしらしっかり批評家や評論家に見てもらってレビューを書いてもらっているところが多いので、この資料集めもgoogleを頼りに時間をかけつつもサクサク揃えました!
紙面上で見ず知らずの人に『私はこういうアーティスト!』ってプレゼンするのにインパクトもたらすのは写真!!!! すごく綺麗にピンで大きく写ってる劇中写真は必須。原本を持ってなくてもスクショでも大丈夫。 あともう一つ写真で意外と大事なのはBTS(Behind the Scenes)、稽古中、撮影中や楽屋で準備中などのオフショット。劇中写真が少ない実績などをポートフォリオに入れる場合、こういうオフショットが現場にいた証拠になるので現場行くたびに数枚は提出できるオフショットを撮っておく癖をつけました。
自分が大きく取り上げられたメディア、記事
これもとてもとても大事な要素でポートフォリオと同じくらい資料集めが大事です。ただ功績実績があって芸歴たくさん!でも数こなせばOKてわけではなくて、移民局的視点からだとこういうメディアに取り上げられてるか、大手記事などに名前が載ってたりフィーチャーされたりしてるかどうかがかなり大きいと聞きます。
英語にさえ訳されていれば、言語は特に制約ありません。
私はかなりラッキーで主演で出演したミュージックビデオがヒットして雑誌や大手記事にレビュー書いてあったり私のパフォーマンスについて好評してくださったものが英語、スェーデン語、スペイン語で既にあったりしました。英語以外の言語で書いてあると国際的な認知の証拠になるのでとてもいいです!
でもそれらに加えて最も入れた方がいいのはインタビュー記事!!
NYCではアーティストビザを取得しようとしてる海外からのアーティストがたくさんいるので、インタビュー取材/記事作成してくださる所はいくつかあります!!!!!!!なので自分で依頼し、インタビューを受けて記事にして頂く♪. その依頼の時にかなり役立ったのが既に手元にある『私はこういう者です』とパッと目を引いて実際に会ってみたくなる資料、そう公式ウェブサイト!!!!
アメリカでの活動重要ポイントその1。ビザ関係だけに関わらず、これはオーディションで資料出す時も仕事メールでもただ文面に芸歴つらねるだけよりも『私はこういう者でこういうことやってるアーティストです!』って色々見れるプラットフォームがある方がプロフェッショナルに受け取られるのでアーティストのセルフプレゼンテーション必須アイテムです!!
日本で個人の公式サイト持ってる人はまだあまりいないけれど、作っておいて損はありません。むしろ周りと一線を画すアイテムになります!!
CV
これも日本ではあまり浸透してないけれど、海外での活動においては絶対に作っておきたい資料。
レジュメは最近の経歴を一枚の紙にまとめたもの、CVは今までの芸歴全てを記したもの!私のは8ページ位です。
大概求められるのはレジュメだけですが、たまーーーにCVを求められるオーディション案件があります。その時に1から作ってると時間がかかるのでいつでも提出できるよう、ある程度まとめておいたものを時々実績に合わせて更新していくのがベストです。
アーティストビザは自分の功績実績を証明するのでCVを求められます。
著名人/功績者からの推薦状 4〜6枚
これはすごく簡単に表面的に言ってしまえば、著名人/功績者からいかにこのビザ申請者が素晴らしくて唯一無二で特別で代わりがいない程ユニークな存在なのかをとにかく主張して頂く推薦状です。
ここでポイントは手紙の最後に本人の直筆のサインがあることです。 サインがあるとタイプした文面でも本人が書いた推薦状だと証拠が強まります。
闇雲に功績者に頼むのでは絶対に引き受けてくれませんよね。 功績があり且つ頼んだら快く引き受けてくれそうな前に仕事を一緒にしたことがある方、自分をよく知ってくれてる方、出演したミュージックビデオのアーティストなどに自ら丁寧なメールや電話でお願いをします。
もちろん断られることもありますが、それは本人の意思なので仕方ありません。 めげずに他を当たって揃えていくことが大切です。また、引き受けてくれたものの、なかなか書いてくれなかったり返信がなかったりすることもあります。その時のために自分でちゃんとチャートを作ってフォローアップのメールやありがとうのメールをいつ送るかプランしてました。
やってることはまさに事務業。自らの秘書になった気分です。でもこういう作業がしっかりできるのとできないのではアーティストとして大きなスキルの違いです!
アメリカでの雇用主からの雇用/採用の手紙 4〜6枚
そもそもこのアーティストビザは3年間の就労ビザなのでアメリカで雇い先がある/仕事がビザの期間の間確保されている事の証明がこの資料たちを包む一番外側のラッピングと捉えても過言ではありません。
でも正直な話、誰も、雇い主も3年間の計画なんて知りませんし、ましてや公演がその間必ず上演される保証もありません。
じゃあどうするのよ。ってなりますよね。
アメリカでの活動重要ポイントその2。コミュニティとコネクションです。 NYCは自分で劇団やパフォーマンス集団を立ち上げている若いアーティストたちがたくさんいます。しかもしっかりウェブサイトやレビュー記事もある。実際に友達が主催のダンスカンパニーや劇団で出演していたので私はそのような仲間たちに「ビザの資料でこう言う証明が必要なんだけど、協力してくれますか?」とお願いして3年間の雇い主になってもらいました。
アメリカ国籍で在住人からのスポンサー同意書
そして最後にこのビザにおいて一番大切な「スポンサー」。 これはアメリカ国籍で在住している家族以外の方なら誰でも大丈夫です。このポジションになる方は3年間ビザの元仕事している間、移民局からくる書類や通告などを受け取ってくださるアメリカでの保証人です。
コミュニケーションが迅速で信頼おける人を選びましょう。
最後に...
アーティストビザの作業は本当に大変!!でもこの長く時に孤独さえも感じる作業工程から学んだ事務的スキル、メール、資料作り、セルフプレゼンテーション、人とのコネクションは最大の学びでありまた一つ上のアーティストになるために有効な武器です。
ただ一番大切で忘れてはならないのは決して一人だけではできない作業という事。
このプロセスは周りの手助けとサポートと応援があってこそのもの。 勿論申請者本人も並ならぬ覚悟きめて相当な時間とお金をかけて結果を残すわけだけれど、本質を見ればそれは人脈だったり友達と同志の熱い支えがあるからエンジンがかかって自分の底力がやっと初めて発揮されるものです。
本当に本当に沢山の人にありがとう。
私は2024年の5月末までビザが有効なので、NYCでのコネクションを再活性化させるため、一旦3/31にNYCへたちます。
でもこの一年半日本でできたコネクションをいきなり拠点移動で一時停止させてしまうのはあまりにも勿体無い。そしてそれを裏付けるかのように大変ありがたいことに夏から秋と日本で大きな劇場でお仕事を頂いております。
ビザが降りたのなら3年間しっかりNYCで存分に使うべき!とも思ったのですが、「東京とNYCを拠点に行き来する」のも実は野望でして。
なので今年は海を渡りつつ仕事のあるところへ行き、2023から2024の一年半はガッツリNYCに拠点を移しての活動にしようと思っています。
将来が楽しみって本当に偉大な活力ですね!!