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古川ほのかさんのこと2

古川ほのかさんのAVデビュー作の、冒頭20分ほどのインタビュー・シーンがとても興味深い。

通常だと私はAVの前半なんて全飛ばしで見るタイプなのだが、このインタビュー・シーンは食い入るように見てしまう。特にデビュー作の冒頭を飾るインタビューなどというものは、その人となりを端的に見せるためのいわばイマジネイティブな繋ぎであり、内容などは常にどうでもいい。何なら話していることが全部嘘であっても、作品上の演出として考えれば、なんら問題はないものだ。そういう意味では、この古川さんのインタビューだって話半分で見るべきものだろう。しかしこのインタビューは、要所で辻褄がきちんと合っているように思える。いずれにしても、今となっては私たちがよく知っている古川さんの、まだ無名だった時から地続きの「素」の姿が押さえてあるわけだから、ここは貴重なドキュメントと捉えて純粋に楽しみたい。

もしかすると今作であっさりと引退してしまいそうな危うさと、時折覗く本人の本質的な部分が同居しながら、緊張と不安がふわふわと揺らいでいるリアルな姿がそこにはある。今もよく話しているようなことをこの時点で既に話していたりもする。しかし今とは別人のように感じさせるような瞬間もある。それは後に大きな心境の変化があってのことだと好意的に捉えることができるだろう。

「人と話すのは得意じゃなくて…」

自分のことを一言で表すとどういう人なんですか?という質問に対して、少し困った古川さんが「えーでも私、めちゃめちゃいい人ですよ」と答えるシーンがある。

「夜、渋谷駅の階段で多分酔っぱらって座り込んでしまっていたお兄さんがいて、終電が近かったのでこの人帰れるのかなと思ってUターンして『大丈夫ですか?』って声をかけた。でもそのお兄さんは意識がふらふらしてて、私はどうしようと思って、飲んでたペットボトルの水をそこに置いて『よかったら飲んでください』って声をかけたんですけど、意識がなかったみたいで」

と自ら「いい人」エピソードを話す古川さん。この時の古川さんと、「ひとり水族館」でサンシャインの下の道の端っこにへなへなと座り込んでしまった古川さんに温かいレモンティーを差し出してくれたお姉さんは、おそらく同じ人であるというのは、私の勝手な考察である。

「付き合った人とは最後、絶対ふられてしまう、恋愛は向いてないかもしれない。私ってめんどくさいらしくて、重くてついていけないらしい」って話も、すごくいい。自分のことを好きでいてくれている人がいつか嫌いになってしまうのではないかと常に怯えているという話もそうだけど、こういった「めんどくさい女」の伏線が回収されるまで、つまり、みすじステーキのオムライスやコンビニのホットスナックの話によって回収されるまで、約2年間を擁するほどに古川さんの魅力は深いところにあるのだ。

話は少し脱線するが、私はこういうめんどくさいタイプの女性はかなり好きというか、超おもしろいと思っちゃう。ユニーク。こんな人、他にはなかなかいないだろうし、この人じゃなきゃダメだと思わせる強い手応えを感じる。たまにはケンカになっちゃうかもしれないけど、最終的にはその人のことを思って本人の見えないところでだけファミチキとか買ってくる人生。そんなの幸せ過ぎて笑ってしまうではないですか。こんな人と出会ってしまったら私は間違いなく普通の人では物足りなくなってしまうだろうし、全てが退屈に思えてしまうと思うんですね。


…といったようにデビュー作のインタビューにしては「何かがありそうな」癖の強そうなキャラクターの原石が光る瞬間は、勘のいいAVウォッチャーであれば見逃さないところだろう。それにしてもまさかこれの1年後に地上波のバラエティ番組にレギュラー出演し、そこから跳ねてアイドルユニットを結成するなんて、本当に何があるかわからないものである。しかし、きっかけがどうであれ、それらの才能はすべて本人に帰結していると言わざるを得ない。実際、この時よりも今の古川さん方が不思議と若々しくて、圧倒的に素敵なのがわかるだろう。「できる」という可能性は本当に大切にすべきものであるという、ある種の教訓さえ感じさせる。

ていうかさ、「人と話すのは得意じゃない」なんて言ってた妙齢女子が今ではポッドキャストのラジオ番組のレギュラーなんて持っていて、知り合いの女優さんをゲストに招いてMCで回したりしてるんだぜ。しかもその番組はわりとよそ行きな感じで繕っていて、本人の素の喋りの方が超絶面白い。そんなの応援したくなっちゃうじゃん。

そう、私は先日そのラジオ番組の公開収録イベントに行ってきたんです。生の古川さんと接するのもこの時が初めて。パーソナリティーとしてはうまくないかも知れないけど、自らホストとして古川さんにしかできないようなエンターテイメントをきちんと成立させている姿に私は心を打たれました。その時の話は番組のネタばらしにもつながってしまうので、いつかオンエアのタイミングに合わせて公開したいと思います。

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