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ラグビーワールドカップと人事・採用の話

※2022年10月10日に再度無料にしました。その後、その他の大規模国際イベントにも携わったのでアップデートしたい気持ちがあります(時間ができたらアップデートします…)

人事・採用業務未経験、かつ、はじめての人事が世界最大規模スポーツイベントということで、非常に貴重な経験をしました。たくさん苦労もしましたし、いろんな方にたくさん助けて頂きました。せっかくなので経験したことや考えたことを全力で共有したい(当然、守秘義務や人のプライバシーに触れない範囲)と思い、文章にまとめてみたいと思います。

時限付きのプロジェクトや急激に規模が拡大している組織の方に少しでも役に立ったら、とても嬉しく思います。

※なお、本文書は個人的な見解・体験・経験・考えを示したに過ぎず、私の所属する、もしくは所属していた会社・組織の見解を示すものではありません。従って、仮に記載事項の誤り、不十分な見識に基づく記載があった場合の責任は私のみに帰せられ、私の所属する、もしくは所属していた会社・組織には一切の責任はありません。


何が課題で大変だったか

あらゆることを考える上で大前提は「ラグビーワールドカップ2019組織委員会が時限組織であり、大会終了後になくなる」ということでした。ただ「組織がなくなる」ということは、おそらく他のイベントやプロジェクトを実施する場合も起きているのではないかと思います。(そういった意味では、この経験がそういった業務に従事される方に、少しは役に立つかな、と思った次第です)。

組織がなくなる、という前提なので「いわゆるGoing Concern(継続企業)が考えなければならないことを考えなくて良い」「短期決戦で良い」という面もありますが、それよりも多くの制約と課題がありました。私が経験した主なものは以下の通りです。

課題その1:お手本が限られている
課題その2:時限付きであるがゆえに、転職のハードルが高い
課題その3:時限付き組織であるがゆえに人事・採用担当が非常に少ない or 兼務
課題その4:人事・採用に対する理解や協力が薄い。なぜなら皆忙しいから。
課題その5:採用以外の打つ手がない


それらをRWCはどう乗り越えたか、そして乗り越えれなかったか

実際に経験をしたことを交えながら、どうやって乗り越えたか&乗り越えることができなかったか(=もう一回チャンスがあったらどうしたいか)を書いてみたいと思います。

課題その1:お手本が限られている

日本で初めてのラグビーワールドカップであったため、全てが初めて。当然お手本はありません。よって、過去の事例や類似のプロジェクトからエッセンスを持ってくるしかありません。

RWCの場合は、イングランド大会時の人員計画リストを役員(前回大会経験者)から共有してもらい、そのポジションリストをもとに①すでに埋まっているポジション、②今後埋めなくてはいけないポジション、③そのポジションをどのように埋めるか(公募、出向、業務委託等)、④その他(日本大会ゆえの特殊なポジション等)、という差異分析を2017年の年末に延々とやっていました。

その差異分析の後、全部署へのヒアリングを通じて、ポジションの必要有無や採用の目星(主に出向の可能性)等の意見を聞き、再度アップデートするという作業を行い、それらを役員に説明し、最終的な人数と採用時期、そしてそれに伴う予算の試算をして、財務部門に予算申請をし、人件費を確保、という流れです。

文字にすると当たり前のシンプルなステップですが、差異分析はそもそも組織が成立した直後にやるべきものなので、途中時点でやる、かつ、イングランドのモデルなので完全合致は難しく、本当に骨が折れました。加えて全部署へのヒアリングは業務時間中にやって、それが終わってから結果をまとめるという作業がしばらく続きましたし、この頃は先も見えないし、分析の価値に関しても立体感がなく、若干心折れそうでした笑

当然、計画は計画なので、最初の作ったモデルと最終的なモデルは大きな乖離はなかったものの、途中でアップデートを繰り返していました。ただ、ベースがあるとないとでは、予算管理も含め、まったく違うのでこの作業は必須だったな、と振り返ってみて、強く思います。

課題その2:時限付きであるがゆえに、転職のハードルが高い

「組織がなくなる」ということは転職者にとって心理的ハードルが高いものです。RWCという冠があるとはいえ、流動性が低い日本の人材市場にたまたま優秀な人がスタンバイしているわけもなく「優秀な人材が現在の仕事を辞してまで来てくれるのか」という疑問がでてきて当然です。その点、ラッキーなことに私の上司がすでに公募実施(私も公募入社)という風穴をあけてくれており、想像を超える人数の応募があったことは非常に有り難い状況でした。今だからRWCに人が集まらないなんて、と思われるかもしれませんが、2017年の認知度で公募を敢行したのは組織としても相当な決断だったと思います。

また、誰もが目にした素晴らしいコピーである「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」は採用においても大きな追い風になりました。我々世代のキャリア感にもマッチしていたのではないかと思います。

なお、「公募じゃなくて出向や業務委託でいいじゃないか」という意見もあろうかと思いますが、公募でなくとも直接雇用でフルコミットの人材は必須だと考えます。

なぜなら、採用の目的は、

①企業の目標および経営戦略実現のため
②組織や職場を活性化させるために、外部から新しい労働力を調達する」
(最も役に立った教科書的存在である「採用学」から抜粋)

であり、活性化のためには多様性(スキルのみならずマインドセットも含む)を担保したほうがいいからです。出向制度については、しばしばいろんなところで話題にあがりますが、個人としては、良い制度だと思います(こちらについては後述)。

課題その3:時限付き組織であるがゆえに人事・採用担当が非常に少ない or 兼務

期限付きのプロジェクトにおいて、人事労務は専属(もしくはアウトソース)していたとしても、採用業務に専属というケースはほぼないのではないかと思います。なぜなら、人事労務は給与支払いも含め、ずっと続くものですが、採用業務はある種の季節労働だからです。私も他業務と並行していました。

そのため、「人が少ない/採用にさける時間がない→満足いく採用ができない」という状況が生まれがちです。おそらく50人以下のスタートアップや競技団体でも同じような状況が生まれていると思います。

それを解消するための手段としては①出向・業務委託を含めた様々な採用チャンネルを持つこと、②人材紹介会社やヘッドハンターと良いパートナーシップを築くこと、③(知り合いや信頼できる人からの)紹介、あたりかと思います。

RWCのケースでは、大変有り難いことにいくつかの人材紹介会社様と、契約を超えた二人三脚ができたと自負しています。すべてのスケジュールがタイト、予算も人も潤沢とはいえない、突然の変更や方向転換が起きる、といった状況下で、きめ細やかに、かつ、想いを共にしてもらったと思います。もちろんビジネスなので、できるできないや先方の売上の問題もありますが、伴走してくれる担当者の方を見つけることも採用活動そのものと一緒くらい重要だったと思います。

課題その4:人事・採用に対する理解や協力が薄い。なぜなら皆忙しいから。

こちらは人事・採用担当経験者ならわかっていただけると思いますが、組織内で重要度を理解してもらえないことは辛いことです。ただ、それは当たり前といえば当たり前で、特にそれぞれのマイルストーンのスケジュールがタイトなプロジェクトでは、皆が自分の職務を全うするのに必死ですし、もしアイドリングしている人材がいれば、それはそれで大問題だからです。面接のセットをするだけでも非常に大変。

「プロジェクトは終わるし、ずっと雇用し続けるわけじゃないから、応募してきた人をそっちで選んで採用すればいいではないか」と悲しくなるようなことを言われたこともありますが、明確なアウトプットがある組織で、自分の職務が達成できない人を選んでしまったら、当然クリティカル、場合によってはプロジェクトが死にます。なので、とにかく重要度を理解してもらうしかない。ただ、理解してもらうのは骨が折れることでして、プロジェクトが佳境になってくると「人」の重要度への理解が高まるのですが、まだプロジェクトがそこまで進捗していないとその実感がないこと、またイベントやプロジェクトだとどうしても直接アウトプットに近い実務業務が重視されがちだからです。

ここに関しては特効薬はありません。とにかく、キーマンを見つけ、採用ポジションの要件の作り込みを含めしつこく巻き込み続ける、場合によってはトップダウンでお願いする、それしかないと思います。

(往々にして、「人材の重要性をわかっている人にはわかる」ので職位が上に上がるほど、また仕事がデキる人ほど協力してくれたイメージです。RWCの場合、一番熱心かつ慎重に人を選んでいたのは2002年の日韓ワールドカップを経験された方でした)

課題その5: 採用以外の打つ手がない

元も子もない状況ですが、採用以外、人事で打つ手がありません。採用でうまくいかなければ、ほぼ終わり、というのが状況です。以下、図で示してみました。

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プロジェクト型の場合、組織設計時に人事制度の設計までできていなければ、ほぼ採用しか手段はなくなります。やろうと思えば、トレーニング(研修)、人事評価、報酬精度等の人事制度を設計できるかもしれませんが、それを変わりゆく組織や毎月人がはいってくるような組織に浸透させて、実行することは至難かつ労力がかかりますし、相当粘り強くやらないとすぐにプライオリティが下がって陳腐化すると思われます。

そういった意味では、採用でいかに適切な人材を間違えずに選択するかが最重要。マッチする人がいないなら、妥協するのではなく、採用そのものを見送るレベルで判断すべき、と今なら断言できます。(ここ最近スタートアップの方々とお会いするケースが多いですが、みなさん口を揃えて同じことをおっしゃいます)

「採用はYシャツの第一ボタンだ。Yシャツの第一ボタンがきちんととめられたとしても、他のボタンがきちんととめられる保証はない。しかし、Yシャツの第一ボタンがズレていたら、どれだけ頑張っても他のボタンがきちんととめられることはない。それと同じで、採用がうまくいったからといって組織がうまくいくとは限らないが、採用の失敗は他のどんな施策でも挽回することはできない」
もっとはやく出版されててほしかった「THE TEAM 5つの法則」より抜粋

もちろん、適切な人材が現れなかったとしても、その瞬間でベストの方を選ばねばならない、ということもあります。採用において100%がないのは仕方がないのですが、特にその他でカバーする施策を打ちづらいプロジェクト型の場合、やはり採用に相当程度の注力をすべきと思います。

上記を経験して考えた雑感(成功したこと、失敗したこと含む)


テクニック的な部分も含みますが、以下経験を通して、雑感を羅列してみました。

1. 構造化面接で同じことを聞き、結果は上司・他部署にわかりやすく共有
もはや、定説だと思いますが、フェルミ推定などの奇抜な質問は意味がないという結果(参考:Google Finally Admits That Its Infamous Brainteasers Were Completely Useless for Hiring)がでており、また採面接時の質問は基本的には構造化面接であるべきです。

初期のスクリーニング(第一次面接)は採用担当がすると思いますが、その場合は可能な限り結果はわかりやすく、構造化面接で聞いたことのレスポンスを数値化するなど、上司・他部署の負担を避ける努力もベターと思います(特に採用人数が多い時)。

なお、採用ポジションの上司が外国人であり、かつ、大量採用があった時は、担当部署の方と協力して、定型質問シートを日英で作り、それに対する重み付けを外国人上司とも合意し、短期間で大量の面接結果をスムーズに行ったのは個人的にはグッドプラクティスだったなと思います。

2. リファレンス文化はもっと浸透すべき
中途採用の即戦力の場合、学歴よりも「これまでの成果」と「ポジションへのマッチ・フィット」が重要です。そもそも上記でも書きましたが、特殊なケースを除いて特定の職務・職責のために採用しているのでそこでマッチしなかったら本人も組織も不幸になります。よって、海外のようにもっと過去一緒に働いた方へのリファレンスをとる文化が根付いていけばいいなぁと今回の経験を通して思いました(今回も本人同意の上で、特定のポジションの方のレファレンスをとったケースもあります)。

なお、人から聞いた話で激しく同意したのは、「一緒に働いた人にリファレンスをとる場合、『仕事はできるよ、と言われれた場合は仕事はできるけれど性格に難あり』、『良い人だよ、と言われた場合は、仕事はできないけれど、性格が良い』ということが多いので、『その人のことを好きか嫌いかで聞くのが有効。その人のことを好き、という場合は、仕事もできて性格も良い確率が高い』」というものです。今なら、大変納得。

3.  説得は自然体で
これは完全に個人の意見ですが、人の一生を決める問題でもありますし、どんなに優秀な人を見つけても、プッシュはしすぎないのがお互いにとって良いと思います。よく採用は結婚に例えられますが、どちらかの想いが強すぎて片方が無理をしすぎると歪みがでます。これは、先方の給与交渉にも同じことが言えると思います。予算枠があり、例えどんなに優秀だったとしても出せる限度額があるので、そこは先方に「この額はあなたの能力への評価ではなく、予算の制約である」という点を正直に伝えるべきと思います。ちなみに、そういった伝え方を教えてくれたのも伴走してくれた人材紹介会社の方でした(その結果、大変優秀な方に来てもらうことができました)。

4. 出向の是非
スポーツの世界にいると「出向が諸悪の根源である」ということをおっしゃられる方がいらっしゃいますが、私はそのようには思いません。出向であろうと業務委託であろうとプロパーであろうと、能力の高い人は能力が高いし、そうではない人はどこまでいってもそうでない、というのが真理だと思います。そもそも現在の流動性が低い日本の人材環境で出向無しで時限付きの組織を回すのは到底無理だと思われます。

ただ、人には得意不得意があり、またどんなに高潔だったとしても最後は戻る出向元との利害関係はあるので、そういった部分のミスマッチが起きるとお互いに不幸になるのは事実だと思います。関係企業や官公庁が出向を出してくださるのは様々な理由があると思いますが、可能な限り出向候補者の方との面談や協議ができるようになっていくとよりミスマッチが減るかな、と思います(とはいえ、現実的にはスポンサー企業が相手だったり、先方の人事サイクルもあったりするので、難しい部分はあると思いますが…)

5. 起きて欲しくないことは起きてしまう
ここはさらっとにしたいと思いますが、「人事関係のトラブルで、これだけは起きて欲しくないなぁ」と想像していたことが大体起きます。多くは頼れる上司の多大なるサポートの上、軟着陸できましたが、「People see what they want to see」なんて言葉がある通り、誰が本当のことを言っているのかわからなくなる瞬間が頻繁にあるので、強いメンタルと受け流せる力が必須だなぁと思いました。

6. ポジションにフィットするかどうかが超大事&人間関係も大事
「人には強みと弱みがあって、あるポジションでは輝けなくとも別のポジションでは力を発揮することができる=ポジションにフィットするかがとても大事」だと個人的に信じています。どんなに能力が高くても、その能力が発揮できない環境や全くその能力を求められていない環境下に置かれた場合は、絶対に活躍できません(ごく稀にそんな状況下でも切り開いていける人もいるのだと思いますが)。特に職務を全うすることが期待されているプロジェクトでは、入り口の時点でそこを間違うと完全に不幸になります。

しつこいくらいに上記にも記載している通り、求められているものにマッチしているのかを可能な限り慎重に見極めることと、また採用される側も自分が発揮できる場であるかを吟味すべきです。

加えて、その場の人間関係・相性もとても重要なファクターです。嫌な言い方ですが、人がメンタル的に辛い想いをする大きな要因は人間関係です(人事異動がないプロジェクトであればなおさら)。これは性格やそれまでのビジネス文化の違いもあるので、事前に予測するのがとても難しい要素ですが、だからこそ採用時には担当部署の巻き込みが重要だと思います。

ちなみに、日本においてある特定の分野で相当な知識を持っている人と、海外のスポーツイベントで同分野の相当な経験をしている人が協業して、全くうまくいかなかったケースを目の当たりにして、難しさを痛感しました。

7. フェーズによって必要なスキルセットが違うことがある
あるスタートアップの方と話をしていて、「フェーズによって、求められる能力が違うので組織が変わりゆく中でついてこれない人がいて、アプローチに苦慮している」という話題になりました。

この現象は、組織の変化のスピードが早ければ早いほど顕著に現れてしまうのだと思います。そして、多かれ少なかれ誰にでも起きうる事象なのではないかと思います。自分自身を振り返ってみても、「このタイミングで自分のスキルセットはあんまり活かせないな」「あんまりフィットしていないな」という瞬間がありました。そういった時に個人でできることは限られていて、「スキルセットに合っていないけれど、とにかく歯を食いしばって頑張る」か「別のかたちでチームに貢献する」くらいしかないかな、と思います。

その他のオプションに「自分の役割を全うしたので組織を去り、自分がさらに活躍できるフェーズにある組織へ行く」という選択肢があればいいなぁと思います。なんとなく、日本社会の共通の認識として、「最後まで頑張る」ということが美化されがちですし、場合によってはプロジェクトが終了するまでいなかったことによって「何か問題があるのでは」と疑われてしまうケースがあるように思います。しかし、もっと流動性が高まり、終身雇用型ではなく、プロジェクト型の働き方が珍しくなくなれば、最後まで頑張ったがゆえに、せっかくの能力を持っている人が辛い想いをし、また組織としてもその人を生かしきれない、という不幸な状況が減るのではないかと思います。

ちなみにRWCでは、大会期間前・大会期間中に終期を迎えた方が多数いますが、それはその人の職務や担当会場が終わったからであり、パフォーマンスに紐づくものではありません。

8. 少数精鋭と最初のプランニング
もし予算に余裕があって、人員計画や採用計画に不安があるのであれば、可能なかぎり初期の段階でコンサルタントを入れた方がいいと思います。特にそのコンサルタントは、絶対に同じような業務をやったことのある人・会社を吟味して選ぶべきと思います。「知っている」と「やっていた」では、全然アウトプットが違います(「知っている」では、それっぽい計画は作ってもらえますが、計画がうまく行かなくなった時の引き出しやトラブルシューティングに大きな差がでます)。

9. エンゲージメントとチームビルディングは初期投資
過去大会を経験した上司陣(外国人)からは口をすっぱく「エンゲージメントとチームビルディングが大切だ」と言われてきました。正直なところ、頭では重要性がわかるし、やった方がいいのだけれど、付加価値的なものだし、ぶっちゃけ忙しいし…というのが当時の本音。

一方、プロジェクトも佳境に入ると全てのメンバーがプレッシャーと強いストレスに晒されます。うまく進んでいるときはいいですが、想定外の事態や想定内だとしても起きて欲しくないと思っていたことが起きてしまった場合、チームはピリピリし、通常なら些細なことでも人間関係にヒビが入り、コミュニケーション不全が発生し、さらに状況を悪化させることがあります。

実際に大会直前というプレッシャーの高い状況に晒されて初めて「ああ、あの時に言われていたのは、この状況下で心理的安全性を確保するための、リスクサイドにたった初期投資だったんだなぁ」と理解できました(さすが何回もスポーツイベントを回している経験者は違うな、と)。もう一度プロジェクトが回せるのであれば、個のガッツに頼るのではなく、チームとしてモチベーションを高く保ち、助け合えるような仕組みづくりを必死に考えると思います。

10. チームプレーヤーとトライゲッター(エディ・ジョーンズ監督の話を聞いて)
「能力は非常に高いけれど、チームプレーヤーでない人」か「能力はそこまで高くないけれど、チームプレーヤーな人」のどちらを採用するか、は永遠の課題だと思います(もちろん両方揃った人を採用するのがベストですが、なかなかそうはいかない)。

この問いに対して、ラッキーなことに、ちょうどRWCの開幕前に、イングランド代表監督のエディーさんに質問する機会がありました。「あなたのチームに、チームにおいて相当分の得点を挙げているエースがいて、ただその選手がチームプレーができず、様々な問題が起きている場合にどのようにアプローチしますか」と質問したところ、クリアカットに「3つのステップでアプローチする。まずは①我々が何を目指しているかというビジョンの共有、②そのビジョンに照らして、その選手の行動がマッチしているのかどうかを指摘し、本人に変わるチャンスと時間を与える、③万が一本人が変化しなければ、すぐにクビにする」というものでした。

実際はそうあるべきと思っても、実行はなかなか簡単にできることじゃないと思いますが、記憶に残る金言の一つです。

11. グローバルの壁は言語じゃなくてカルチャー
ラグビーワールドカップ2019組織委員会がユニークであったことのひとつとして、日本的な組織と外国人専門人材との協業があると思います。一方で、言語の壁もあり、全部がうまく行ったとも思えないですし、最後まで専門人材が持っているナレッジを100パーセント引き出しきれなかった部分もあったのも事実です。

自分自身を振り返ってみても、言葉の壁以上に、相手の価値観や文化、さらには決断や発言の奥にある考え(や自分の考えとの違い)を理解した上で立ち回ることの難しさと重要性を学ぶ場でした。今後は、言語以上に「ナレッジを持っている側のやりたいことを実行に移せる架け橋となれる人材」の需要が高まっていくのだと思います。

また、例えば「欧米系」や「アングロサクソン系」とあまりに大きく括りすぎるのもよろしくないと思います。括ることで、傾向は理解できるかもしれませんが、そもそもそれぞれの国や歩んできたキャリアによっても考え方やビジネスカルチャーは全然違いますし、バイアスをもって接すると相手を理解するのがさらに難しくなる気がします。

まとめ

全く自分が人事・採用のプロフェッショナルとかいうつもりはなく、限られた経験の範囲なのでこちらが正しい視点とも思いません。ただ、どこかで苦労してる、人事の方に役に立てばいいなぁということと、自分自身の棚卸し的な要素を含めて、書いていたらこんなに長文になってしまいました。

人事・採用って業務的にもメンタル的にも結構大変なところがありますが、努力次第で組織に大して大きなインパクトも出せますし、組織横断的に仕事もできますし、奥が深いですし、自分が採用に携わった方が活躍している姿を見るのはめちゃくちゃ嬉しく、誇りに思えますし、総じて楽しかったなぁというのが率直な意見です。

以上、かなり長くなってしまいました。どこかのプロジェクトの人事・採用担当者の方の何かの役に立ちますように!

参考になったもののまとめ

1. 「採用学」
着任当初、採用の本を読み漁りましたが、こちらが最も参考になりました。私の教科書的存在。

2. 「Google re:Work」
これだけの情報を惜しげもなくオープンにしているところにGoogleの懐の深さを感じます。さすが。

3. 「異文化理解力」
まさに必須、かつ、今後おり必要になってくる教養だと思います。ラグビーワールドカップのみならず、前職の海外赴任前に読んでおけたらなぁと思った本。この本を元にしたワークショップにも参加しましたが、とても勉強になりました。

4. 「THE TEAM 5つの法則」
良いチームを作るためのヒントだらけで、2017年以前に出版されていて欲しかった…、というのが本音。


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