アーリーフェーズのスタートアップ企業における外国籍エンジニア採用という選択肢について
遅れましたが、エンジニア採用 Advent Calendar 2023 10日目です。
ずんだまる(仮)(@zuncha318)さん、今年も企画ありがとうございます!
manateeです。スタートアップのエンジニア採用に従事して6年目です。現在は、RBF(Revenue Based Finance)を用いた未来査定型資金調達プラットフォーム 『Yoii Fuel』を提供する株式会社YoiiでHR全般を担当しています。
今回は、外国籍エンジニアの採用に関して思うことをテーマに書きます。
(正直、外国籍エンジニアという定義は排他的なニュアンスがあり好ましくはないですが、日本国内の企業の多くが日本国籍社員のみで構成されているという前提のもと、外国籍エンジニアという表現を用います。)
以前からぽつぽつと多国籍チームで構成されるスタートアップは散見されていましたが、ここ数年は、一定程度成長したスタートアップ・ベンチャー企業でも社内英語化に力を入れている動いている例が見られます。
前者の例:Wovn Technologiesさん, Rapyuta Roboticsさん, Cogent Labsさん, インフォステラさん, etc.
後者の例:マネーフォワードさん, HENNGEさん, メルカリさん, etc.
現在既に外国籍エンジニアの採用に取り組んでいる企業、または今後外国籍エンジニアの採用を検討している企業どちらもあると思いますが、当社の取り組みがいち事例として参考になれば幸いです。
Yoiiの組織的特徴
Yoiiは、将来的に国内外問わず利用いただけるサービス展開を目指しており、社内は英語を第一言語としてコミュニケーションを取っています。
そのため、採用においても国籍や出身地を問わずに採用しています。当社の1号社員であるソフトウェアエンジニアも、フランス人メンバーです。
社内コミュニケーションは英語がベースであるものの、日本国内で金融商材を提供しているため、日本の金融法規制の専門用語などを業務で取り扱うのはYoiiの特徴だと思います。
創業3年目で現在写真数約20名の組織ですが、これまでの3年弱の間で分かってきたことがあります。
メンバー間の語学力・言語力に差があると、情報・コミュニケーションの質はどうしても粗くなる
デイリーベースの業務コミュニケーションに関しては日常会話レベルの英語でまかなえるが、細かいニュアンスの説明に関してはより高度な英語力が必要になる。かつ、こちらの意図が相手に正確に伝わっているかどうかも掴みづらい
プロダクトユーザーの利用言語(当社で言うと、つまり日本語)で得られる情報が圧倒的に多いため、一次情報をそのまま読み取れるかどうかという点は開発・提供スピードに置いて不可避である
現在は、組織の拡大・成長に合わせて組織の整備を急ピッチで進めているところです。
外国籍エンジニア採用のpros
さて、外国籍エンジニア採用においてのprosをあげていきます。
採用チャネルが広がる
当社は、LinkedIn, JapanDev, GitTapなど外国籍エンジニア採用の主力チャネルからかなりの数の応募がありましたし、それらの採用チャネルからの採用決定実績もあります。
特に、ITスタートアップでLinkedInを使っていて安定的に採用できているという事例はあまり多く聞いたことがないのですが、当社はLinkedIn経由で継続的にテックリードクラスの方々との接点を持つことができました。
日本人採用チャネルのみに限定すると、どうしても応募の「数」の獲得には波がある印象ですが、Yoiiの場合は「数」の獲得には苦労していないと感じています。
採用対象が広がる
採用チャネルの話に似ているかもしれませんが、採用対象が日本国内から全世界に広がります。
特に、データエンジニア, プラットフォームエンジニアのような比較的新しい職種に関しては日本国内の人材でかつスタートアップ採用の適性に合う人材となるとイリオモテヤマネコくらい稀少ですし、競合性もかなり高いです。
日本で働きたいエンジニアや日本国外で求人に合うスキルを持つエンジニアを探すとなると検索対象が大幅に増えるので、採用優位性がまだ低い会社には1つの手段かと思います。
外国籍エンジニア採用のcons
prosの裏返しに近いものもありますが、consもあげます。
採用基準の言語化ができていないと応募「量」をさばくのが大変
一定リクルーターのリソースがあり、採用基準・採用フローが整備されている場合だと処理しやすいと思いますが、特にこれらが不足していたり未熟な場合が多いアーリーフェーズのスタートアップにおいては、応募量を処理するのが大変だと思います。
例えば、YoiiでLinkeIn上にSoftware Engineerの求人を公開したときに、一晩で50名程度の応募があったことがありました。その時には、1つ1つの応募を見て、国籍・言語・居住地・スキル...などをそれぞれ確認していくのはかなり時間がかかりました。
日本だと一定エンジニアの職歴書のフォーマットが似ていて、プロジェクトごとに書かれている場合が多いのですが(こういったもの)、グローバルになるとレジュメのフォーマットも様々なので、個人的にレジュメの情報処理に頭を使い時間がかかりました。
Webエンジニアのコミュニティ性みたいなものがない
日本だと、開発言語ごとに各社がコミュニティ運営をしたりスポンサーになったりして間接的に採用ブランディングとしている例が見られますが(例が多いので実例紹介は省略)、グローバルになると、WebエンジニアよりもSoftware Engineerが主流だからなのか、開発言語ごとのコミュニティ性みたいなものはあまり見られない気がしています。
そのため、技術推しの採用ブランディングは相性が悪いと思います。プロダクト・カルチャー・ビジネスベースの採用に立ち返って最も本質的な採用ブランディングを丁寧に地道にやるのがグローバル採用のやり方だと思っています。
外国籍エンジニア採用はあくまでも手段。採用の先の組織整備が不可欠であり、それこそが重要
話が逸れるかもしれませんが、外国籍エンジニアの採用に従事していてひしひしと感じるのは、外国籍エンジニアの日本での労働を取り巻く環境についてです。
例えば、母国で優秀な大学を卒業しているのに、日本では派遣・契約のSES案件ばかりでキャリアに伸び悩んでいるケースや、開発の上流工程を担当できるテックリードにキャリアアップしたいが、高い日本語レベルが要求されるケースなど。
Yoiiの場合は、共同創業者の宇野(@Masa_Ukov)と大森(@taskooh)の両名ともにグローバル環境での就業経験があったので、初期の採用開始時に「国籍」という採用バリアがなかったことが、現在のYoiiの採用のベースになっています。
採用する方のその先のキャリアも生活も担うからこそ、外国籍エンジニアを開始する際には、自社のケイパビリティについて深く検討し、それを継続的に進化させていく必要があると思います。
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