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ギルガメッシュ叙事詩について

ギルガメッシュ叙事詩

だいたい五千年ほど前のメソポタミアの物語です。
歴史の授業で、チグリス・ユーフラテス川とか習ったのを覚えていますか?
ザックリ言ってしまえば、あの辺りの物語です。
現代の日本人には縁遠い物語だと思われるかもしれませんが、有名なお話の元になっている部分や、意外にも現代に通じる感覚もあったりして面白いですよ。

あらすじと解説をしていきます。

ウルクという国に、ギルガメッシュと言う名の王がいました。
彼は三分の一が人間で、三分の二が神という存在でした。
なんで三分割?と思われるかもしれませんが、父王は人間だけども神の血を引く者であったようですし、母親は位は低くても女神であったからです。(神様にも、ランクがあるのです)
でも、とか突っ込まない。
そういうもの、と流してください。
とにかく、神の血を引く彼は人間とは力が違うので、遊び相手になるような者もいないまま育ち、諫める事が出来る者も周りにおらず、手のつけられない暴れん坊に育ちます。
身分の高さだけでなく、パワーも人間レベルでない、となれば誰にもどうにも出来ません。
困り果てた人々は神々に願い、ギルガメッシュを大人しくさせるように頼みます。
その声を聞き届けた神々は、土塊から一人の青年を作ります。
彼・エンキドゥは一旦は野に放たれ獣達と暮らしますが、乙女が迎えに来て、共に町へとやって来ます。
獣同然だったエンキドゥは女を知って人間になり、人の世界へとやって来たのです。
そこで、ギルガメッシュと出会います。
二人は戦い、やがて対等な力を持つ者として互いを認め合います。
ケンカで引き分けて友達になり、夕陽の河原で握手を交わすようなイメージ、昭和の少年マンガだよね?みたいな展開です。
対等の友を得たギルガメッシュは、この後は度々エンキドゥと冒険の旅に出て、人々を困らせる怪物を退治したりします。
一つ目の巨人、フンババ退治の話しが有名です。
ある時、女神イシュタルがギルガメッシュに目をつけます。
でも、女神に気に入られても、その女神が飽きた後には手酷い捨てられ方をすると知っていたギルガメッシュはその誘いを断ります。
当然女神は怒り、天の雄牛を差し向けます。
天の雄牛とは、これが地上で暴れると7年も凶作になるという、とんでもない天上の生物です。
プライドの高い女性にヘタに逆らってはいけない、という教訓もこの時代からあるという事です。
ギルガメッシュとエンキドゥはこれを退治してみせますが、今度は天の神々の怒りを買います。
先に仕掛けて来たのはそっちじゃん!ていうのは神々には通じません。
天上の生物を殺した罰を、ギルガメッシュかエンキドゥのどちらかが受けなければなりません。
また、神々の世界から使わされた生物を倒してしまうほどの二人の力量にも危機感を抱いたのでしょう。
アヌンナキ、と呼ばれる神々の会議が開かれます。
そこで、死すべきはエンキドゥであると決まります。
元々彼は、ギルガメッシュの為に土塊から作られた存在なのですから。
元の土塊に帰るだけです。
アヌンナキでエンキドゥの死が決定されると、彼はたちまち病の床につき、あっけなく死んでしまいます。
ギルガメッシュの嘆きは深く、エンキドゥの埋葬を許しませんでしたがやがて身体にウジが湧いてしまい、仕方なく葬ります。
自分と対等の力を持ったエンキドゥでさえ、こんなにアッサリと死を迎える事実に、ギルガメッシュは怯えます。
ギルガメッシュも、神の血は引いていても神ではないのです。
死すべき定めの人の子なのです。
現代よりもずっと死が隣り合わせにあった時代です。
人はアッサリと死んでしまうのだという現実に、気づいてしまったのです。
死が怖くなったギルガメッシュは、不死を得た人間がいると知り、その人物を訪ねる旅に出ます。


長い旅路の果てに、ギルガメッシュはようやくその人物にたどり着きます。
この旅にもエピソードがあるのですが、長くなるので飛ばします。
よかったら、調べてみてください。
リクエストがあれば、そのエピソードも書きます。


ウトナピシュテム、またはジウスドラ、と呼ばれるその人物は妻と二人で暮らしていました。
名前の違いは、同じ話しでも時代や地域で変わるもの、くらいに考えてください。
これも興味があったら、詳しく調べてみてください。
とにかく、彼の元へたどり着いたギルガメッシュは不死の秘密について尋ねますが、そのようなものはない、と言われてしまいます。
彼ら夫婦はかつて神々が人間に怒って大洪水を起こして滅ぼそうとした時に、許されて生き残った者なのです。
それで不死を許されただけなので、何かをすれば、とか、何かを手に入れれば、というものがあるわけではなく、ギルガメッシュに出来る事は何もないのです。
ちなみに、この大洪水の話しがノアの箱船の原形だと言われています。

それでも諦めきれないギルガメッシュにウトナピシュテムは、二週間寝ないでいられるか、と言います。
当然そんな事は無理で、ギルガメッシュはいつのまにか眠ってしまいます。
起きたギルガメッシュは、寝てない!と主張しますが、ウトナピシュテムの妻が毎日焼いてはギルガメッシュの傍らに置いていたパンが、最初の頃に焼いた物はカビているのを見て、眠ってしまった事を認めます。
ギルガメッシュがあまりにもガッカリするので、ウトナピシュテムは海の底にある若返りの草の存在を教えて送り返します。
でも、やっとの思いで海の底から取って来たその草も、ギルガメッシュが水浴びをしている間にヘビに食べられてしまいます。
それを食べたからヘビは脱皮を繰り返して若くいるのだ、と言われています。

不死を得られず、若返りの草も失ったギルガメッシュは大人しく国へ帰り、王としての勤めを全うしたそうです。


自分を持て余した単なる暴れん坊の主人公が、対等な友を得て二人で冒険の旅に出る。
俺たち二人なら無敵だよな、みたいな調子に乗った状態からの友の死。
怖いもの知らずの状態から急転直下。
神でもないのに不死にはなれない事を嫌というほど思い知って、大人しく王としての務めを果たす。

そんな物語です。


色々なマンガなどに引用されている物語の概要はこのようなものです。
メソポタミアの神話に出てくる神々も、古い神としてあちこちに名前が出てきていたりするので、調べてみると面白いですよ。
ギリシャ神話ほどメジャーでなくても、ヨーロッパの文化に影響を与えています。
女神イシュタルなんかは、キリスト世界では魔女のような扱いを受けていたりしますけどね。

また、この物語が見つかった時のキリスト世界の衝撃は大変なものでした。
日本人にはピンとこないかもしれませんが、聖書に書かれている事をそのまま信じていたような人々にとっては、聖書以前の物語にノアの大洪水と同じストーリーがある事は、大変なショックだったようです。

とても古い物語ですが、一通りの物語は伝わっていますので興味をもったらぜひ、フルで読んでみてくださいね。


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