客と店員である前に、人と人であるということ。

パリで買い物をしたり、カフェに入ったりすると思うのがこのことである。

今日は全休だったこともあり、外回りの日だった。朝から薬局、スーパー、お役所(今月2回目)、カフェ、雑貨屋、郵便局へ行った。薬局の人はまあふつうだったのだが、スーパーの会計の人は「ちょっと今日全然集中できないのよ、カードと商品一緒に出さないでちょうだい。一個ずつしかできないから」なんて言うし、お役所の人は「外国人学生の社会保障の登録システムが変わってものすごくめんどくさくなって結局ツケは末端のとこに回ってくるんだよ〜君も大変だよねえ、毎回めっちゃ並ぶし。いやご苦労。」って言うトーンでなんか労われる&愚痴を吐かれる。お役所の人の割に全然感じが悪い人ではなくって、「本当に俺ら気の毒だよね〜」というトーンでむしろ両方被害者としてひとまとめ。帰り際も優しかった。ここにも上下関係なんてほとんどなかった。その帰りにカフェによってテラス席を見ると、唯一空いているテーブルにはまだ食器が残っていたので「ここ座っていいかしら?」と私は聞いて店員さんは「もちろん」と答えて、私はそう返ってくることを念頭に聞いていたのだった。雑貨屋さんに入ってちょっと時間が経てば「何かあったら遠慮なく聞きなさいよ」なんて言われるので「明日のコンサートのためにポシェットが欲しくて」なんて相談に乗ってもらう。結局買うことにして、帰り際に「これでコンサートへ行く準備はバッチリね」と言われたりする。郵便局でオロオロしていれば「Dites-moi!Madame」と迫られる笑。(直訳すれば、「私に要件を言いなさい!そこのあなた!」という感じかな?)迫られると言ってもこれは通常運転だ。

丁寧語を使いこそするが、店員がへりくだりすぎたり、客が横柄になることはなく、会話は率直そのものだし、7大接客用語や接客マニュアルなんて存在しそうもない。もうあとは個人個人の資質による訳で、いい人に当たれば優しいし、なんか今日は調子が悪い人に当たったりすると、遠慮なく注意を受けたりする。こちらだってもちろんフランス語を理解して自分の言いたいことをはっきりと言うのは当たり前だが、たまに聞き取れなくて聞き返しても英語に切り替えてきたり、変にゆっくり話してきたりしない。とは言いつつもここは個人差があって、何かわかってないそぶりをすると途端に機嫌が悪くなる人もいるのはいるのだが。それはこちらがわからないのが悪いのでまあしょうがないし、だいたいそういうときって初めてのときで勝手がわかっていないから。2回目以降が増えれば増えるほど、そういうケースは減っていく。始めて行く場所で問題なく会話が終えられたときは、自分が成長したことがわかって嬉しい。

ちょっと脇にそれたけれど、言いたいことは、店員や係員は企業や機関に属しているとしても、みんな個人個人で動いているわけで、一応は店員と客という社会的な役割を割り当てられてはいるものの、それは表層的なもので、より本質的なのは人と人の関係であるということを感じた1日だった。みんな人間味に溢れていて、それぞれが全然違うことに驚いたのだった。

日本なら、制服があって、発せられる言葉は限られていて、言葉遣いも限られていて、客に愚痴を吐くなんてもってのほかだし、「あと10円持ってないですかね?」なんて絶対聞けない。店員さんは全部同じに見える。フランス基準で見ると、みんなもっと人間になろうよ、なんか不自然だよ、と思うのだけれど。さて、どっちがいいんだろうね。

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