紛争と高等教育

今日の学び

高等教育に対する「ネグレクト」
研究や支援において、高等教育は注目されないことが多い。

1960−70年代 ポストコロニアルにおいて、開発において大学の教育は必要不可欠と考えられた。
1980−90年代 World Bankが、大学に人を送っても一部のエリート層の利益にしかならないとした。
1990−2000年代 初等教育に注目が注がれ、大学については語られなくなった。

2000年にたてられた、2015年までの開発目標MDGsの中でも、初等教育のみ言及されている。全ての項目が大学へのステップとして不可欠ではあるものの、大学進学自体が目標には含まれていない。

2000年代中盤から、高等教育は経済成長の重要な要なのではと語られ始める。
経済界において、高等教育はヒューマンキャピタル(人の知識や技能を資本として捉えた経済学。人財。)と労働市場に結びつくという議論が始まったり、2015年からのSDGsでも学生が支払える大学費というのが含まれている。

ただし、70%の高等教育支援は国際奨学金という形でしか支援されていないし、世界の私立大学の数のうち、70%は「南」の国々に集まっている。つまり、その国の公立の教育の質が低いままにされている。

2011年のシリア難民の長期滞在に伴って、人権、経済保障の面からlife long educationが必要ってより認識されるようになったが、西欧諸国は、自国の大学へは入学しないよう、中東の大学への奨学金しか支援していない。ただ、レバノン・ヨルダン・トルコなどの国々は、奨学金がなくてもすでに多くの難民の学生が入学していて、その大学への施設や教員への支援はない。


紛争による大学への影響
・講義の妨害
・学生の逮捕・亡命・死
・建物損傷
・大学の権威と自由な研究ができなくなる
・内容の傾倒
・閉校
・国際的な研究界からの孤立

〜Birziet大学のケース〜
パレスチナにある大学であり、インティファーダが起きた時に、イスラエルからの圧力がかかって、これまで15回学校閉鎖を余儀なくされた。閉校中、教会・モスク・個人の家に集合して、レジリエンスしていた。
国際社会からの孤立。

ガザの学生が、この大学に入学することも現在としてはほぼ不可能になっているらしい。

〜Lebanese大学のケース〜
唯一の公立大学でありつつ、2/3のレバノン人学生が通っている。
公立であり、社会政治的変革の役割をになっているにも関わらず、政府からの援助はないどころか、政府に対して声を上げることが許されなかった。1975年の内戦でベイルートがキリスト教・イスラム教で宗教分裂も起こり、大学もその影響を受け、いまだに完全なる回復はしていない。

大学が紛争の原因になる例
大学の目的として、①研究(新しいものの発見)、②教授(育成)、③サービス(社会への還元)がある。それから逸脱した時に紛争の原因となる。

・社会的不平等(性・階級・人種etc)
・大学と政府の関わり
・大学による植民地的歴史と続く支配
・政治文化的主導権
・ローカルとグローバルの不平等さ

当たり前なことばかりだけど、現実問題として、
イギリスにいる大学教授のうち「黒人」は1%
女性の教授は25%
23,000人いる大学教授のうち、黒人女性は30人

https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2023/world-ranking#!/page/0/length/25/name/D/sort_by/rank/sort_order/asc/cols/stats

大学ランキング見ても、トップ10はイギリスとアメリカのみ。

トップ400を見ても、ほとんどが西欧に偏っているのが分かる。
誰が、どんな項目のもと、何を持ってランキングを測っているのかは分かりにくいが、教育の不平等性は明確であり、その改善はされていない。


保護に向けて必要なこと
・大学が脆弱な存在であるということの認識を広げる
・人権的なプローチ(データ収集・学生たちの一時的な移動)
・紛争下における大学への政策的サポート


紛争後のリカバリーとしての高等教育
【Knowledge economy imaginary】
大学を出れば、経済問題・ヒューマンキャピタル・「失われた世代」が解決するという幻想。そのため、難民に奨学金さえ出せばいいという考え。
➡︎大学でても、教育の質・労働市場が潤っていなければ、回復につながらない。

【Developmentalist imaginary】
大学を出れば、医療・教育・政治などの公的回復につながるという幻想。
➡︎教育の質・よい指導官のもとでの経験がないと、質が低下したまま。

【Democratic imaginary】
大学でいろいろな人に会ってよい刺激を与え向上していけるという幻想。
大学で学生選挙を実施してモデリングしたり、民主化への再構築と移行ができるという考え。
➡︎「他」を受け入れる素地がないと、課題が残る。

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自分の中での不明点

・「公立学校」の立ち位置:政府の関わりと独立

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個人的見解

今まで、なんで教育機関を紛争に巻き込むんだって怒りしかなかったけど、知識ってものすごい凶器だなって最近思うようになった。
アインシュタインが原爆を作ることができたのも、知識のおかげであり、知識のせいだと思う。知識は自分を強くする!って思っていたけど、それによって自分の身を危険に晒すなら、必ずしもそうだとは言えないかもしれない。ただ、知識は可視化できないからこそ、サイアグル・サウトバイみたいに自分を守ることができることもある。

Knowledge Economy Imaginaryもすごく共感。よく、全ての社会問題の解決を学校教育に委ねる傾向があって。貧困→子どもが教育受けたら、いい仕事がもらえて、お金がもらえるようになる!ジャンダー→早くからLGBTQ+のことを教えたら差別がなくなる!とか。教員やってる時、すーごいこの発想いやだったの思い出した笑。教育も大事だけど、それだけじゃなくて、構造的解決策を。

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