紛争前・紛争中・紛争後の教育

今日の学び

紛争前・紛争中・紛争後の区分け
厳密には、この三つに分けるのは難しい。

理由1
終結したと思っていても、結局その後再発した場合、「紛争後」なのか「紛争前」なのか、どちらのカテゴリーに入るのか分からない。

理由2
同じ国のA地域で紛争が終結したと思ったら、 B地域で勃発したりし、同じ紛争の中でも地域によってフェーズが違うことがある。

とは言え、紛争のフェーズとそれに伴う教育のフェーズを合わせると下の感じになる。

紛争前後の教育で重要になるのは、sensitivity.
取り扱う内容、言い方などに差別的表現がないか、平等に子どもたちと関わっているかetc
紛争後には、メンタルヘルスなども含まれる。

紛争中にでは、安全面などの情報共有、給食などで食を与えることetc

平和構築(Peacebuilding)と国家構築(Statebuilding)
平和構築:持続的な平和と開発を目標に、経済的な国家の能力を広げ、紛争の再発へのリスクの削減をする。

国家建設:国家社会関係によって推進される国家の能力、制度、正統性を強化する内生的プロセス。ポジティブな国家建設プロセスは、国(サービスを提供者)ー人、社会ー政治グループ(国家と協力する立場)の相互関係が良好になる。

ガルトゥングの平和構築論
①消極的平和(negative peace):目に見える暴力がない状態。
② 積極的平和(positive peace):構造的暴力がない状態。

③直接的暴力(direct violence):流血するような暴力。
④ 構造的暴力(structureal violence):社会構造の中に組み込まれている不平等性、格差、貧困、経済的搾取など。
⑤文化的暴力(cultural violence):直接的暴力と構造的暴力を容認する/無関心でいる暴力。

➡︎構造的暴力と文化的暴力が、直接的暴力へとつながる。紛争の根源(root causes of conflict)を打破しないと、持続的な平和(sustainable peace)は構築できない

用語集
①Peacemaking:
暴力的な紛争に終止符を打ち、その原因となった問題を解決しようとする外交、調停、交渉、その他の和解のプロセスを指す。「戦争当事者に合意をもたらすことを目的とした政治的、外交的、時には軍事的な介入。(McCandless, 2007)」
➡外交交渉だけでなく、持続可能な平和にする努力も含む。

②Peacekeeping:
国連によって開発された、紛争に苦しむ国々が永続的な平和のための条件を構築するのを支援する方法。
➡︎軍事的任務だけでなく、より多元的になっているものの、基本的には和平合意の実施と持続可能な平和の初期基盤を作ること。ちなみに、平和構築は、平和維持活動よりも長期化する傾向(UN, 2010)。

③Conflict management:
「当事者の積極的な行動変容を促すことで、暴力の激化を抑制し、将来の暴力を回避することを目指す(McCandless et al., 2007; Fisher et al., 2000)。」

④Conflict resolution:
「紛争の原因に対処し、敵対する集団の間に新しく永続的な関係を築くことを目指す」(McCandless and Bangura, 2007; Fisher et al.、2000)。
➡︎ 実際には、紛争解決は紛争の原因よりも人間関係を優先する傾向があり、平和構築は一般に、人間関係に限らず、より幅広い活動を含むことがある。

⑤Conflict prevention:
暴力の発生を防ぎ(最小主義)、紛争の原因となりうる構造的不公正を根絶する(最大主義)ことを目的とする。」(McCandlessetら, 2007; Fisherら, 2000)。
➡︎ 紛争予防の最大主義的アプローチは、平和構築と共通する部分が多い。しかし、最も多く適用されているのは最小主義アプローチである。

⑥Conflict sensitivity:
組織が持つ次のような能力を指す。
1. 組織が活動している背景を理解する。
2. 介入とその文脈との相互作用を理解する
3. マイナス影響を回避し、プラス影響を最大化するために、その理解に基づいて行動する。(International Alert et al., 2004)。
➡︎ 紛争への配慮は、個別の対応や特定の機関の活動に適用されがちである。
平和構築という概念は、より広範で、個別対応の枠を超え、持続可能な平和を作り出すことを主な動機とする、まとまったアプローチを意味する。

⑦Conflict transformation:
建設的な社会変革とは、「人権と非暴力の根本的な尊重を通じた、正しい関係と社会構造の構築」である。(Lederach. 1995)
「ある紛争の渦中にある、あるいは過去に関わったことのある当事者間の関係と取引に焦点を当て、紛争のより広い、社会的、経済的、政治的原因に取り組み、負のエネルギーと戦争を正の社会変革に転換しようとする」(McCandless et al., 2007;Fisher et al., 2000)。

〜紛争前〜

削減、撤廃すべきもの
・構造的抑圧と統治の見直し(地方分権にする、学校の統制、教育に対する社会参加など)
・経済的抑圧(差別など)
・教育アクセス、その後の進路の抑圧
・教育内容(カリキュラムなど)の抑圧
Conflict sensitiveアプローチの向上
・アイデンティティ(性、言語、市民権、宗教)
・ポジティブな内容を入れる

Save the Childrenが、紛争までのバロメーターを提示している。詳しくはこちら。(なぜか埋め込みできませんでした。)

https://inee.org/sites/default/files/resources/The_Education_that_Protects_Project.PDF

〜紛争中〜

・教育制度への影響
 ー教育費より軍事費に当てられる
 ー人手不足、施設不足、学校へのアクセスの問題
 ー敵対するグループへの教育の欠如
 ー子どものメンタル面の影響
・攻撃の標的にされる教育
・教育への人道支援の欠如
 ー衣(医)食住の優位性が高く、教育にまで手が回らない。

➡︎2015年オスロで行われた、教育と開発サミットにおいて、”Education cannot wait”という名のもと、紛争化における教育の提供の重要性が認識された。

以下の内容を強化する必要があるとされた。
・政治の中での優先度を上げる
・計画と反省を、人道支援・開発援助セクターで協力的に行う
・資金を$8,500,000埋める
・ローカルとグローバルでの協力
・データでの分析

教育の重要性
・子どもが教育を受ける権利と機会の保障
・「日常」の提供:予測がつかない中でもルーティンを作る。
・社会性の構築:社会的行動、関係性などの育成。
・保護、安心できる環境:心身の保護。
・協調性と希望
・情報共有:平和・人権・安全の共有。

Inter-Agency Network for Education in Emergencies (INEE)
国際機関、国際NGO、ドナー、政府、研究者など、さまざまなセクターが協力して情報共有するプラットフォーム。
教育のミニマムスタンダードを作成し、教育環境へのアクセス・教育内容・教員・教育方針などについて記載をした。

他にも、一時的な学びの場の提供、UNICEFのSchool in a box(中にノート、鉛筆などが入った箱)、Child-friendly space、食の提供プログラムなども行って、教育を人道支援の一部としての動きがある。(もちろん、批判も多い)

課題も山積していて、緊急支援(人道的)→長期支援(開発的)への移行、教育の質の担保、衣食住との兼ね合い、子どもの権利対身の安全など。

〜紛争後〜

開発と安全性のバランス
シエラレオネのケース:
和平合意後、政府は治安維持に注力していたが、生活必需品が困窮していて、市民の不安は再度高まっていた。(教育は受けられても、雇用がないなど)

教育的に必要なもの
・政治的バランス
・「日常」に戻ること
・人道支援と開発の橋渡し
・ケア
・武装解除

中長期的に必要なもの
・和解
・政治制度(投票の仕方など)の見直し
・教育の質と内容の検討
・ハードとソフトの再構築
 ーコミュニティ:女性クラブなど
 ー組織:教員研修、カリキュラムの見直し
 ーシステム:開発能力、政治開発、データマネジメント

まとめ
・UNはpeacebuildingについてではなく、持続的な平和について議論が近年ではされるようになっている。
・人材育成だけでなく、社会的統合、協力などが、どのフェーズにおいても重要である。
・持続可能な平和において、教育の質が一つの指標になる。

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自分の中での不明点

・特になし

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個人的見解

紛争前・中・後って、厳密には三つのフェーズに分けられないっていうのは、目から鱗でした。

紛争下のことを考えたら、まずは衣(医)食住が最優先事項ではあるとは思うけど、近年の長期化している紛争を見ると、教育へのアクセスは個人的にすごく大事だと思う。心の拠り所になるし、親からのニーズも高い。ただ、その道中の安全とか、学校は攻撃対象外にするとか、子どもの保護については、しっかり対立している両軍で共通認識をとらないと、教育の提供はいつまでも滞ると思う。そういう、ジュネーブ条約に従って市民を巻き込まない上での紛争を促せるようにするのが、国際機関の役割であり、難しいところでもあるんだろうな。

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