本物に出会ったけれど、やっぱりコッチが本物だった話
ここにも書いたけれど、
そもそも5年前、私は宝塚のチケットを探していたのだ。
だけどその時検索結果に刺さりこんできた、明らかに様子のおかしい歌劇團。
こちらにすっかり心奪われ、宝塚のチケット検索は未完のままで早5年。
そんな私が今年9月、遂に所謂「本物」の宝塚を観ることになった。
初めてのホール、初めての客層。
所在無く、海月のようにひとりフワフワ。
勝手もわからずどうしたものやら。
もう席に着いちゃって、ホンモノに向き合う心の準備でもしようかななんて、客席の入口を探しキョロキョロ。
と、
目の前に並ぶ、ピンクブラウンのさら髪と黒い艶髪。細い指が壁際に貼り出されたグッズのラインナップを指さしているのが見えて、思わず息を飲み立ち尽くす。
そのふたりが振り返る。そう、ふたり。
シークレット歌劇團0931 夢組トップ
銀河祐さまと、紅雅みすずさま。
動揺。歓喜。歓喜!
お互いびっくりしてしまって、笑って。
結局、私が宝塚を求める時、必ずその前に貴族が立ちはだかる運命(さだめ)なんだな、なんて思ったりして。
この星でいちばん大好きなおふたりに会えた喜びに、視界全体が鼓動する感覚をおぼえつつ4階へ。
ステージの3分の1程が見えない、「注釈付き」の見切れ席。それでも、西の歌劇団の華やかさは充分に味わえた。
舞台セット、楽曲、演出、どれをとっても完全で華やかで美しい世界。
夢の国だな、と思った。
でもなんか…なんか足りない。
休憩を挟んで、華やかなレビュー。
すごい!あんなに足が上がるの?!
あんなに跳んで、踊って、大丈夫なの?!と、すっかり北の歌劇團を見る平民目線でハラハラ。
そしてやっぱり…豪華で美しくてダイナミックなのに…なんか、足りない。
キャーキャー叫んでゲラゲラ笑って、うっかり泣いてクタクタになる貴族のレビューが、恋しい。
そう感じ眺めていたレビュー、客席が明るくなり、客降り(演者が客席に降りてくる)が始まった。
その様子を4階から見下ろすと、なんだかものすごく前のめりで大っきく拍手し、団員に向って何か叫び手を振って、それはそれは盛り上がり散らかしている人が真っ先に目に入る。
おぉ…宝塚のファンでもあんなにすっごく楽しむ人いるのか…と思ったら、それは誰あろう銀河さま。
笑った。そしてとても嬉しかった。
最高の楽しみ方を見せてくださっていることも、ご自身も最っ高に楽しんでいらっしゃることも。
終演後、初めて目の当たりにした「本物」を思い返しながらも、想うのは「けして枯れないニセモノの花」の事だった。
架空の世界の話なのに、自分の過去やこの先にぴったり寄り添ってくれるような物語とか、
大の大人を本気で笑わせ泣かせてくれる、貴族の皆様の眼差しとか。
シャンシャンも御多織るもタオルヌンチャクも、ほんっとどうかしていて愛おしい。
私の本物は、やっぱりコッチなんだよな。
後日、平民仲間に宝塚の感想を聞かれて「やっぱりね、貴族に比べてパンチが足りない。」って言ったら大笑いしてくれた。
で、ここからはミラクルな余談。
その平民仲間、少し前に私が夢に出てきて何か貴族のことを喋ってるんだけど、Tシャツが汚れてたんだって。そしたら私が「琥珀が付いちゃったんだ」って言ったらしい。
えー何それ琥珀で汚れるってどういうことー?って思っていたら、
この日の演目が「琥珀色の雨にぬれて」だったという奇跡。
この事だったの…?とゾクゾクしちゃった。というお話でした。
おあとがよろしいようで。