マガジン

  • イナダミホとわたし

最近の記事

鷹村アキラ『えにし独楽』を時代物入門小説としてオススメしたい

正直、時代物が苦手でした文学部国文学科近世文学専攻、ゼミ担当の教授は江戸の出版文化の専門家でした。にもかかわらず、時代劇や時代物はどうにも難しそうなイメージで、エンタメとして楽しむこともなく、「水戸黄門シリーズ」の何話かを子どもの頃に観たかなあ……? といった程度。本当に時代劇・時代物に馴染みがありませんでした。 さて。今年8月に開催された「NovelJam 2021 Online」という小説ハッカソンに参加したメンバー数人で「他のメンバー作品をリレーレビューしよう」という

    • イナダミホ「オルゴール」を最愛の君に聴かせたい

      イナダミホが、22歳のときに作った「オルゴール」という曲がある。「君」を愛する気持ちを、オルゴールのように何度も繰り返し歌う、という曲だ。とにかく、歌詞が美しい。 「いいこと」同様に、独身なら絶対に憧れてしまう歌だ。もう、結婚記念日や11月22日(いい夫婦の日)には、愛する人に歌って聴かせたいと、独身のうちから考えてしまうくらい、素敵な曲なのだ。 これからずっと先もいれるといいね あっという間に明日になって毎日が続いてく 1年 2年 3年 4年 5年... あと10分 そ

      • イナダミホ「傘はいらない」で友情って最高! と思う

        今回は、イナダミホのミニアルバム『ポップネス』から「傘はいらない」という曲を紹介したい。 この曲は、何か嫌なことがあった友人が、大雨の日、おそらく夜中に訪ねてきて、その友人を励ます歌だ。化粧が落ちるまでいっぱい泣いて、食べて、話をして、そして嵐のなかに踊り出て、びしょ濡れになる……という歌詞だ。 生まれ変わって明日を生きるのさ びしょ濡れ傘はいらない (イナダミホ「傘はいらない」『ポップネス』収録より) 辛いことがあった嵐の夜を、一緒に外に飛び出して、パーティーナイトに

        • イナダミホ「トーキョー」は大人への応援歌

          何年か前、京王井の頭線からJR山手線渋谷駅へ向かう通勤ラッシュの人並みを見て、ぎょっとした。視界に映る人々の後ろ姿が、一様に黒いのだ。ほとんどのひとが黒いコートを着込んでいて、まるで葬列のようだと思った。見るだに息苦しくなる、そんな光景だった。 当時、わたしは幸いなことに、電車に詰め込まれて10分ほど我慢すれば、仕事場にたどり着くことができた。でも、前を歩いていた重々しい黒いコートの人々は、もっと遠くまで我慢を強いられていたのかもしれない。大変だ。 その次の冬、わたしは仕

        マガジン

        • イナダミホとわたし
          6本

        記事

          イナダミホ「テレビスタ」とチヤホヤされたい呪い

          ”チヤホヤされたい願望”というのは、誰しも持つものだと思う。持っていないと言うなら、あなたには、すでにチヤホヤされた経験があるのだ。 声優になりたい、ラノベ小説家になりたい、アイドルになりたい、インフルエンサーになりたい……そういうひとは、おそらくわたしを含めて、たくさんいる。 けれど、本当に声の演技を極めたり、作劇法や構造を研究して物語を書いたり、歌やダンスを習ってオーディションを受けたり、分析をして他と差別化を図って三方良しのSNSを駆使したいひとは、もうすでにしてい

          イナダミホ「テレビスタ」とチヤホヤされたい呪い

          イナダミホ「いいこと」に憧れて

          「当たり前」という しあわせ を、言葉にするのは難しい。 イナダミホの『ポップネス』というミニ・アルバムに「いいこと」という歌が収録されている。 人は弱いものです だから君に寄り添っているんだよ 自慢したいけど仕方がわからない 当たり前のことが嬉しいから (イナダミホ「いいこと」『ポップネス』収録) 誰かと寄り添って生きる……それはとてもしあわせなことで、自慢したいくらいなのに、家族と暮らしているひとや、結婚しているひとは、他にいくらでもいる。当たり前のことにしあわせを

          イナダミホ「いいこと」に憧れて

          イナダミホとわたし

          junior sizeのデビューシングル『私になる』の歌い出しだ。これをはじめて聴いたのは、浪人生の頃だった。 自分が頭のいい人間ではないということを自覚した失望感や、友人たちから置いていかれているという焦り、選んだ高校を間違えたという後悔や、これからどうなるんだろうという不安に押しつぶされそうになっていたときだった。 過去を後悔して、自分だけが置いてきぼりだと思い込み、不安で勉強が手につかなかったわたしに、この歌は強く響いた。 高校時代は3年間、ほぼ不登校だった。家か

          イナダミホとわたし