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対岸 2

異国へと向かって飛び立った飛行機(激安大衆庶民派LCC)は順調に航路を進んでいた。

当時、韓国までの短時間でも航空会社専用アプリがあれば音楽や映画が楽しめた。関東を出た頃、機内食が配られた。メニューはプルコギで、おいしくはなかったけど、たったの2時間のLCCフライトでこの待遇は最高だった。

離陸直後から到着まで騒いでCAに文句を言っていた韓国系のオジサンを除けば最高のフライトだった。他の搭乗客も同意見だったのか、日本人夫婦らしき2人が「オジサンがうるさかったね」とだけこぼしていた。

そうこうしている間に飛行機は山口を超え、日本海(韓国での東海)を超え、眼下には釜山の街の明かりが飛び込んできた。徐々に光と私の距離が近くなる。ついに!ついに来たんだ!と心踊った。その瞬間、機内アナウンスが入り、まもなく着陸とのことだった。

ジンジンする耳とは対照的に心は快調で、着陸を今か今かと待ち侘びていた。

飛行機はふわふわとガタンという感じを交互に繰り返しついに金海国際空港(釜山)に到着した。

空港に着いたらウンジェが迎えにきてくれる。

人が少なくてすぐに税関を通過、ゲートの外に出た。

ついにやってきた。日本の対岸の街、釜山に。

早速、SIMカードを入れ替える、、、あれ?使えない?え、なんで?Wi-FiをレンタルしようとWi-Fiレンタルの場所へ行くと、夜の便だったこともあり、もうルーターがなかった、、、詰んだ。

この頃はまだSIMロックが存在しないスマホが主流ではなく、事前の解除が必要だったことをすっかり忘れていた。

仕方ない。お父さん、お母さんごめんなさい。すごい額の請求がくるかも、、、

心の中で父と母に謝ると、空港のゲートを出て外に出る。

モバイル通信をオンにして進むと、ウンジェからバイト終わりに電車に乗ったら空港までの電車がなくて、迎えにいけなくてごめんと連絡が来ていた。その代わり私の泊まるホテルのそばの最寄駅で待機しているとのことだった。

外に出た瞬間、日本ほどではないけど湿った暖かい空気が体を包む。

とりあえず、ホテルのある海雲台までは、電車で行かないといけないけど、なんか電車動いてないのかな?場所がよくわからない。人に頼らずちゃんと調べておかないとダメだよね

うろうろしていてたら、タクシーのおじさんが声をかけてくる。「どこまで?」乗るつもりはなかったけど、私は「海雲台まで」と答えると「30000ウォン。海雲台!30000ウォン海雲台」と繰り返し言われた。(現在であれば4.5-5万ウォンします)

安い。この頃の韓国のタクシーは破格であった。交渉成立。私が拙い韓国語で「お願いします」と言うと、おじさんはキャリーを持ち上げ車に乗せてくれた。

タクシーに乗り込むと早速ウンジェに電話をかけた。タクシーで30000ウォンで海雲台まで行けると伝えた。そこから、飛行機での出来事を話していると、彼が運転手に電話を代わってと言ったので、代わった。よくわからないけど、詳しい場所を伝えていたんだと思う。

窓からビル群を眺めている間に、海雲台の近くに来たらしい。大きな3つのビルを指差しておじさんが「海雲台!海雲台!」と繰り返し言った。

だんだんと大きな3つのビルは近づいてきて、ついに到着した。地下鉄の入り口と思われる場所にウンジェがいて、車の中にいる私に気がついたのか手を振ってきた。私も車の中から手を振り「ウンジェ!!」と名前を叫んだ。

おじさんは嬉しそうに笑いながら車を止める。私が30000ウォンを出すと、5000ウォンを渡し英語で「Eat icecreem」と言われた。私は何度もカムサハムニダと伝え、車を降りた。

半年ぶりに会えたのが本当に嬉しかった!

「久しぶり!」と言うとウンジェも「久しぶりだね」と返した。

お互い、久しぶりの再会で舞い上がっていた。私はさっきのおじさんの話をすると「本当にいい人だね!そこにビスキンラビン(日本での31アイスクリーム)があるから一緒に食べよう!」と言い、その前にホテルがすぐそこなので、荷物を置きに行くことになった。

ホテルには事前に午後10時のチェックイン時間の最終に間に合わないことを伝えておいた。

ホテルに入ると、フロントには人がいなくてデスクの上に鍵がメモ用紙と共に「Manamine 202」とだけ書いてあった。

部屋に入ると、セミダブル?くらいのベッドとサムスンのテレビと小さめのテーブルとイス、バスタブ無しのシャワールームがあった。

「バスタブがない!安いから仕方ないけど」と言うとウンジェは「韓国では普通だよ」とだけ返した。夏だしいっか

まぁホテルは寝れればいい。そんなことよりもとにかく韓国に来たこと、異国の友人と異国で夏を過ごすことへのドキドキが止まらなかった。

部屋を最後にもう一度見てから、キャリーを部屋にぶん投げ、2人は異国の夏の夜へと出かけて行った。

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