愛犬が死んだ
1時間ほど前、食事を取ろうと階下に降りると愛犬が死んでいた。
いつも寝ている場所で眠ったようにしているので一見死んだとは思えなかった。体を揺すって声をかけて、息をしているか確かめて、胸に耳を押し当てて鼓動を確認して、それでやっと、死んでいるとわかった。彼女の口からは少し血が出ていたし、死後筋肉が緩んだのかすこし漏らしていた。
死んでいるとわかってからまず真っ先に、一番彼女を可愛がっていた父に連絡した。おそらく会議中だった父は何度も本当に死んだか問いかけて、状況を説明されてやっと一つ大きなため息をついた。
次にインターネットでペットの死後気をつけるべきことを調べた。死亡した時の状態として、死後硬直で四肢が固まること、筋肉が弛緩して体液が漏れること、目蓋を閉じず死ぬことが書いてあって、それら全てが合致している事を確認して、頭ではやっと彼女の死を悟った。血を拭って、足をゆっくり曲げてやって、タオルケットを敷いてやった。保冷剤等で頭やお腹を冷やすといいと書いてあったが、先日処分したばっかりで何とも見当たらなかった。
そうしてやれる事をやってしばらく死んだ彼女を眺めていた。悲しさより、心をヤスリにかけられたような喪失感と苦しさが襲ってきて、たまらずテレビをつけた。このまま静かなままの空間にいるとどうにかなってしまいそうだから、雑音が欲しかった。
またしばらくテレビを流し見ていたが、気がつけば彼女との思い出を振り返っていた。私が小さい頃に家に来た彼女は、なんだかのんびり屋でいつもボーッとした顔で家族の足元にいた。私の母が死んだ時も、私が中、高、大と進学した時も変わらずずっと近くにいた。
そうして思い返してみるとひょっとして生きてるんじゃないかなんて馬鹿な事を考えてタオルで包んでやった体を覗き込み、頭を撫でてやってもついぞ起きてくれることはなかった。
何かこの喪失感を紛らわせたくてとりあえずnoteにあった事を取り止めなく書き込んだ。書き込んでるうちになんだか悲しくなってボロボロ泣いている。泣いたところでどうにもならないし、死んでいることなんてすぐに気がついたのに、今になって涙が止まらない。彼女の死を悟って切なく、空虚になった心が今になって悲しさで満ちて苦しい。
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