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経営ビジョンを描いて、目標を立ててみよう!【経営Tips#4】
「経営Tips」では、経営に対する考え方を、私の経験や考察を交えてお届けしています。学問的な視点というよりは、考え方のヒントとなるような情報を発信していきますので、記事の内容には個人的な見解がそれなりに含まれています。このコラムがみなさんのお役に立てると嬉しく思います。
前回の経営Tips#3では理念経営のお話をしましたが、今回は経営ビジョンについてお話していこうと思います。
ビジョンとは
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ビジョンの位置づけ
まず始めに、ビジョンがどのようなものかを見ていきましょう。
以前の記事(経営Tips#3)では、「理念は企業の自己紹介文であり、企業を導く羅針盤である」とお伝えしました。
では、ビジョンとは何でしょうか?
ビジョンは、理念よりもさらに具体的な将来のありたい姿を示したものです。言い換えれば、会社が目指すべき未来の姿を言葉にしたものです。
それでは、ビジョンはどのような位置付けにあるのでしょうか。それを示したものが下の図になります。
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この図から分かるように、ビジョンは経営理念と全体戦略の間に位置します。つまり、経営理念を具体化すると同時に、全体戦略の指針となるものなのです。
ビジョンの例
具体例として、パン屋さんのビジョンを考えてみましょう。
このパン屋さんでは「○○地域に笑顔と元気を届ける」ことを企業理念に掲げているとします。
この場合、ビジョンは「人々を笑顔にする、焼きたてパンのある幸せな食卓を創造する」と設定することができます。
では、経営理念とビジョンの違いはどこにあるでしょうか?
経営理念では「笑顔と元気を届ける」とありますが、具体的にどのようにして届けるのかというのは分かりません。一方で、ビジョンを見ると「焼きたてのパン」という商品を使うことが分かります。また、「笑顔と元気」が生まれる場面を「食卓」に作ることも具体化されています。
少し掘り下げて考えると、このパン屋さんは「おにぎり」で笑顔と元気を届けるわけではない、ということが分かります。そして、笑顔と元気が生まれる場所が、会議室や車の中ではないことも示唆しています。
戦略とビジョンの違いがちょっと分かりにくいかもしれませんが、「少し具体化する」というのがポイントになります。
無理に分けなくてもOK
ちなみに、個人的な考えとしては、無理に経営理念とビジョンを分けなくてもいいと思っています。会社がどうありたいのか、社会にどんな価値を提供するのかを明確にできれば、無理に分ける必要はありません。
無理に別々で考えるよりも、自社をどのような状態にしたいかを思い描きながら作ることが大切ですので、考えを素直に言葉にすることを意識してください。
目標を立てよう
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ビジョンができたら、それを踏まえて目標を設定しましょう。この時の目標は3~5年程度を目安にして立ててください。そして、実現可能な数値・状態を目標に定めることが重要です。
それでは、どのように目標設定をするのかについてご紹介します。
目標設定に役立つ「SMARTの法則」
目標を立てるときに盛り込みたい要素を整理したものに「SMARTの法則」というフレームワークがあります。このフレームワークを用いることで、目達成の可能性を高めることができます。
SMARTの法則は、次の5つの項目の頭文字をとったものです。
Specific(具体性):目標は具体的に定める
Measurable(測定可能):目標達成度を測れるようにする
Achievable(達成可能):達成可能な目標を設定する
Relevant(関連性):目標が自分にとって意味のあるものにする
Time-bound(期限):いつまでに達成するか期限を決める
この5つを意識して目標を立てることで、ビジョンの達成に必要な要素をもれなく示すことができます。
よく、目標を立ててもなかなか達成できないことがありますが、その原因の一つに、目標設定があいまいであることが挙げられます。
例えば、「仕事で成果を上げる」という目標を立てたとします。これだけだと具体的に何をすればいいのか、何を達成すれば成果が上がったと言えるのかが分かりません。
一方、SMARTの法則に沿って「3ヶ月以内に、顧客からの満足度調査で90%以上の満足度を得る」という目標を立てたとします。
この目標は、具体的に何を達成すればいいのか、いつまでに達成すればいいのかが明確になっていますし、それをどのように測定するかも明確です。そのため、達成に向けて具体的な計画を立てやすく、モチベーションを維持しやすいというメリットがあります。
定量目標
目標の中で数値化して表せるものを定量目標と言います。SMARTの法則で言えば、Measurable(測定可能)とTime-bound(期限)に当たるものです。
このうち、Measurable(測定可能)で設定したい要素としては、売上高や利益額・利益率になります。特に利益額・利益率を目標設定に入れるというのがポイントです。
売上目標を掲げている企業は多いように思いますが、企業活動で最も大切なのは利益をきちんと確保することになりますので、利益も目標に入れることをお勧めします。
また、Time-bound(期限)で、いつまでにこの目標を達成するのかを明確にしましょう。そうでないと、いつまでたっても目標未達のままズルズルといきがちです。
これ以外の定量目標として、社内に目を向けた数値目標を立てることもお勧めします。例えば、「3年後の離職率5%以下」や「従業員満足度20%アップ」といった人事面での目標を立てられるといいですね。
定性目標
定量目標に対し、数値では表せない目標を「定性目標」と言います。
例えば、「顧客ニーズに合った商品の開発」や「社員が新しいチャレンジに取り組める環境づくり」といったものが、定性目標になります。
定性目標は特に今は全くできていない状況だけれど、5年後にはこうした会社として認知してもらいたいや、新しい企業文化になっていたいという時に使います。
もちろん、それを数値として具体的に示すことができるのであれば定量化することをお勧めしていますが、「まず第一歩を踏み出そう」という時には定性的に目標を定めてみましょう。
おわりに
今回はビジョン作りと目標設定の方法についてお伝えしていきました。
特に、目標設定の具体的な方法をお伝えしましたが、これは会社レベルだけでなく、個人目標の設定時にも役に立つ考え方です。SMARTの法則を使って目標設定をすることで、評価がしやすくなるというメリットもあるからです。
今回、目標設定に役立つ「SMARTの法則」をお伝えしましたが、こうした考え方をフレームワークと言います。このフレームワークを幾つか使えるようにしておくと、みなさんの仕事でとても役に立つと思います。特に企画や調査の業務、そして経営判断をするときには大活躍してくれます。そこで次回はフレームワークについてお話していこうと思います。