【Audio-Space Medicine】Digital Pharmacy: Rain
今回は、僕のアートプロジェクト"Digital Pharmacy"のこと。
視覚と聴覚と体験
Digital Pharmacyはオーディオビジュアル薬と過去のnoteで説明したが、オーディオスペース薬というコンセプトもある。
僕たちは、音や音楽を聴く時、自分の周りの環境に大きく影響を受ける。
騒音の中で聴くバッハと教会の静寂で聴くバッハは、比べる必要もないぐらい、双方の違いは容易に想像できるだろう。
前回のnoteでサウンドスケープ(環境音)は、都市デザインやインテリアデザインなどの視覚情報にも大きな影響を与えると説明した。
要するに、視覚、聴覚、体験は互いに影響しあっていて、この3つの感覚のバランスをデザインすれば、人間に影響を与えることができる。
従来のアートの世界では
僕は電子音響作曲家なんだけど、このジャンルのパフォーマンスでは、オーディオビジュアル(音楽 + 映像)という形がほぼ100%と言っていい。
また、アートの世界で見てみると、映像作家が圧倒的に多く、スクリーン + スピーカーという形が大多数である。
音楽 + 建築
では、僕らDigital Pharmacyの違いとは何か?
それは、音楽 + 建築、というスタイルである。
音楽家と建築家が組むプロジェクトは、皆無とは言わないが、かなりマイノリティである。理由はいくつかあるが、例えば、建築を意識して作曲している音楽家少ないこと。
音楽やサウンドを意識してデザインしている建築家が少ないこと。
そして大きな理由としは、建築には莫大な予算がかかるため、そもそもプロジェクトを立ち上げることがかなり難しい。
だが、僕らは音楽 + 建築という方向性に可能性を見ている。
それに、僕の好きなアーティストChristo and Jeanne-Claudeは、もっと大規模なアートを制作している。ベルリンの国会議事堂に布を被せるなんて狂ってる笑
オーディオスペース薬
Digital Pharmacyは音楽 + 建築というスタイルだが、もう一つ面白いのは、音響心理学や音楽認知をベースに作られてるということである。
例えば、Digital PharmacyのRainという作品(まだコンセプト段階である)を軽く説明しよう。
Rainは人工的に雨環境を音と建築で表現する作品だ。
音は、雨の音を録音して加工して再生するのはもちろんだが、メインコンセプトは、「ピンクノイズの可能性を追求する」である。
ピンクノイズの説明は前回のnoteを見てくれ。
ピンクノイズは、雨の音に似ていてると同時に、赤ちゃんが母親の子宮の中にいたときの音に似ているとも言われている。
こうした理由から、ピンクノイズは人間にとってかなり身近である。
だから、落ち着くのである。リラックスできる。睡眠導入剤になるのである。
そしてさらに、Digital Pharmacyはこのピンクノイズのベストなリスニング環境をデザインする。
これを僕らは、「オーディオスペース薬」と名付け、アートとして発表するつもりだ。
Rainの面白いところは、アートピースにも関わらず、「ベストな瞑想スーペース」であるという面がある。
ラグジュアリなホテルの一室として、Rainを制作できる日が来ればいいな!