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【高校物理】磁気分野② 「電流のつくる磁場」<大幅増補改訂>
「電流のつくる磁場」
公式導出・東京大学 過去問解説
電流のつくる磁場に関しては,
「ビオ・サヴァールの法則」から導かれる公式が3つあります。
この公式は導ける必要はなく(入試問題で導く場合は,誘導がつきます),
その結果だけ覚えておいてほしいのですが,
毎年,導出方法の質問を受けるので,ここにまとめておきます。
【電流のつくる磁場1】(講義)①
— マナ物理 (@manabu_physics) May 4, 2021
電流がつくる磁場については,覚えなければならない公式が3つあります。これらはすべて「ビオ・サヴァールの法則」から導かれるのですが,導き方を覚える必要はありません。眺める程度でOK。その後,最後のツイートにある「例題」(東京大過去問)に挑戦してみよう。 pic.twitter.com/x89YqsIMCm
【電流のつくる磁場1】(講義)②
— マナ物理 (@manabu_physics) May 4, 2021
ソレノイドとは「密に巻いたコイル」のことです。ソレノイドの内部の磁場については,中心軸上だけを導出しましたが,ソレノイド内部は一様です。それを述べるには「アンペールの法則」が必要なのですが,それはまたの機会に(「アンペールの法則」は高校範囲外)。 pic.twitter.com/fnRz7ja1yl
【電流のつくる磁場1】(補足・例題)
— マナ物理 (@manabu_physics) May 4, 2021
「ビオ・サヴァールの法則」から積分をして導かれるということを知っていると解きやすくなる問題を見かけることがあります。例題(東京大学過去問)はそのうちの一つ。また,「さまざまな形の電流がつくる磁場」の問題もたまに見かけます。後ほど扱いましょう。 pic.twitter.com/hbqoBzHaEZ
「電流のつくる磁場」練習問題 その1
大阪電気通信大学(1987年) 過去問解説
「基本とは何か?」とよく考えます。
生徒に入試問題をいきなり解かせると,
「もっと基本からやってください」と意見する者がいます。
その生徒にとっての「基本」とは「反復練習」のことなのです。
物理も数学と同じように,練習問題を解きまくり,
公式を習得していくものと考えているのです。
私は,物理にとっての基本とは「実験」だと考えています。
実験事実から導かれるものが「公式」です。
物理学者が行った実験を追体験する,これが「基本」です。
特に,「磁気分野」は様々な実験が考案され実行されてきました。
興味深い(と私が考える)ものを
ここでは取り上げていきたいと考えています。
【電流のつくる磁場2】
— マナ物理 (@manabu_physics) May 5, 2021
(練習問題)その1
添付ファイル(4枚)は大阪電通大(1987年)の過去問。電流の定義,磁場の向きと方位磁針との関係など,基本事項の確認をこの問題で行おう。磁石を使わず,手を触れないで方位磁針を動かす方法。マジックにも使えそうです(マジシャンは物理を学んでるやろね)。 pic.twitter.com/3vspWDaCXC
磁石の話題ということで,「磁性細菌」の情報を載せておきました。
磁性細菌は酸素が少ない環境を好みます。
1,2本のべん毛を持っています。
体内にある磁石で地磁気を感じ,
北半球にすむ磁性細菌は磁力線に沿って北に向かって,
南半球にすむ磁性細菌は磁力線に沿って南に向かって泳ぎます。
すると,泥の中(酸素が少ない環境)にもぐることができるのです。
この磁性細菌から「脂肪の膜のついた磁石」を取り出すことができたなら,それを何に使いますか?
(「磁性細菌 農工大」で検索すると,さまざまな応用例が見られます。
興味深いですよ)
【電流のつくる磁場2】
— マナ物理 (@manabu_physics) May 5, 2021
(解答・解説)
直線電流のつくる磁場に比べて,円形電流のつくる磁場は出題が少ないです。円形電流の場合は,「円の中心のみ」というところが重要やったね。
最後に,興味深い生物「#磁性細菌」についての情報を載せておきました。1μm以下の大きさの磁石,君ならどう使う? pic.twitter.com/WhuVe0PuhB
「電流のつくる磁場」練習問題 その2
神戸大学(1994年) 過去問解説
19世紀はじめ,エルステッドは,
電線に流れる電流が熱と光を発生させる公開実験の準備をしていました。
たまたまその近くに方位磁石が置いてあって,
電池から電線に電流を流すスイッチを入り切りしたときに,
北を指していた磁針が少し変化したことに気づいたのです。
この現象は,電線に電流を流すとその周りに磁場ができ,
磁針がその磁場の影響で振れるのだと考え,
磁場と電流の相互作用を示す直接的な証拠であると確信しました。
実験を繰り返し,
磁針の上または下に平行に電気を流すと針は大きくふれること,
電流の向きを逆にすると針は逆向きを指すことを確かめ,
そのことをわずか4ページの論文にまとめました。
電磁気学の始まりです!
【電流のつくる磁場3】
— マナ物理 (@manabu_physics) May 6, 2021
(練習問題)その2
添付ファイル(4枚)は神戸大学(1994年)の過去問。実験の方法(問3)や実際に実験をするときの注意点(問5)はこれから出題される可能性の高い問題。実験によって何と何の関係を測定するのか,理想的な状態で実験をするためには,を常に考える必要があります。 pic.twitter.com/KIop1LyeM9
【電流のつくる磁場3】
— マナ物理 (@manabu_physics) May 6, 2021
(解答・解説)
問3の答えは「tanθ」と書くべきなのでしょうが,私にはこれが何文字なのか判断できません。そこで「正接」という言葉で逃げました(笑)
物理はまだマシです。化学だとどうしても,CH3COOH と書かざるを得ない場面があります。これは一体何文字なのでしょうか。 pic.twitter.com/UUP7utRLLa
「電流のつくる磁場」練習問題 その3
滋賀医科大(1992年)・立命館大(1989年)
過去問解説
様々な形の電流がつくる磁束密度(もしくは磁場の強さ)
を求める問題をたまに見かけます。
直線電流,円形電流,ソレノイドに流れる電流のつくる磁場を,
電流素片のつくる磁場(ビオ・サヴァールの法則)
を積分して求めました。
その作業をした者には,
正三角形電流のつくる磁場は「積分区間が変わっただけ」と考えられる
のですが,ビオ・サヴァールの法則は高校範囲外です。
これを前提にすることはできません。
実はこの問題はパズルとして解くことが可能なのです
(練習問題2の別解を参照してください)。
【電流のつくる磁場4】
— マナ物理 (@manabu_physics) May 8, 2021
(練習問題)その3
添付ファイル(4枚)は,滋賀医科大(1992年)と立命館大(1989年)の過去問。様々な形の電流がつくる磁束密度を求めます。これらの問題は「ビオ・サヴァールの法則」を知っていることを前提としていませんが,それを知っていないと自信をもって答えられません。 pic.twitter.com/NKHJLE3SQF
【電流のつくる磁場4】
— マナ物理 (@manabu_physics) May 8, 2021
(解答・解説)
「ビオ・サヴァールの法則」を知っていなくても,パズルとして解くことも可能です(別解参照)。練習問題2(3)は6分の5円の電流と図1の電流のつくる磁束密度の差ですが,どちらが大きいかすぐには判断できません。とりあえず引いてみて正負を確認し,調整です。 pic.twitter.com/Ov2YFJAzof
以上です。お疲れさまでした。
マナブ