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【高校物理】波動分野「波の性質」     <改訂版>

波(波動)とは,「エネルギーが振動として伝わる現象」です。
例えば正弦波は媒質が単振動しているので,
媒質の動きは力学の言葉で説明できるのですが,
波動現象として見ると,干渉,回折,屈折など,
力学現象とは大きく異なるものが多くあります。
まずは,波(波動)の一般的な性質を,入試問題などを解きながら押さえ
ていき,後の講義で,
具体的な波(波動)の例として「光波」や「音波」のふるまいについて
学んでいきましょう!
(それぞれの一連のツイートの後に,
そのツイート内で取り上げた問題&解答解説をまとめた
PDFファイルを添付しておきました
こちらも是非活用してください。)


【波の性質 その1】
「波の基本式」(講義・例題)
 長崎大学(1987年) 過去問解説

波動分野で一番重要な式は何か,
と問われれば,私は「波の基本式」とこたえます。
「波の基本式」は,
波に関する物理量(波長,振動数(または周期),速さ)の関係式
という意味だけでなく,
波が等速運動であるという事実も含んでいるのです。

この長崎大学の問題の中で出てきた
「横揺れ固有周期」について調べてみると,
船長は船が共振を起こさないように,
航路を選んでいる(わざと遠回りするなど)ことが分かりました。
参考URL: 
https://www.piclub.or.jp/wp-content/uploads/2019/04/ロスプリベンションガイド-Vol.45-Light_4.pdf ( 2023年4月1日 最終閲覧)

また,船だけでなく建物にも固有周期があるので,
巨大地震の時の建物の揺れ方に違いが出ることも分かりました。
参考URL:https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/choshuki/choshuki_eq1.html
( 2023年4月1日 最終閲覧)


【波の性質 その2】
「慣性系・非慣性系 波に乗って波を観測」
 (講義・例題) 立教大学 過去問解説

波動分野の入試問題で,
力学分野の知識を必要とするものが少なからずあります。
下の立教大学の過去問は,そんな問題の一つです。

「難問題の系統とその解き方」という本があります。
その本の問題の中で,これが生徒から一番質問の多い問題です。
そして,私はその本の解説に不満があります。
なぜその式を立てるかという必然性が見られない解説だから。

問3の解法のポイントは2つ
1.観測者の座標系が「慣性系」(慣性力がはたらかない)。
  ただし,その座標系での速度は相対速度で求め,
  力学的エネルギー保存則を立てる。
2.波の基本式から 𝒄 は 𝝀 で表せるが,
  𝑻 が 𝝀 や 𝐜 の関数である可能性に注意する。


【波の性質 その3】
「波の強さ」(講義・例題)
 岐阜大学(1995年) 過去問解説

波(波動)とは,「エネルギーが振動として伝わる現象」です。
正弦波は媒質が単振動しているので,
波のエネルギーには単振動のエネルギーが関わってきます。
単振動の復習も兼ねて,
例題の岐阜大学の過去問(1995年)<改題>を解いてみてください。


コラム:「ピコアミノ酸」

音波の振幅がナノレベルであるということで,思い出した話がありました。「ピコ・アミノ酸」です。10年前の話なのですが…。
下のツイートを読んでください。そして,私の妥協案も是非!(笑)


【波の性質 その4】
「横波・縦波のグラフ」(講義・例題)

波(波動)は大きく2つに分けられます。横波と縦波です。
これらは,媒質の振動方向と波の進行方向との関係で定義されます。
縦波を縦波表示のまま理解するのは難しいので,
「縦波⇒横波変換」を行います。
変換の仕方は毎回同じです(左向きに進む波であっても)
「横波⇒縦波変換」もマスターしよう!


【波の性質 その5】
「縦波(疎密波)」(講義・例題)
 信州大学(1987年) 過去問解説
 鹿児島大学(1997年)<一部> 過去問解説

「縦波⇒横波 変換」はもちろん重要なのですが,
縦波を縦波表示のまま分析できる力も必要です。
信州大学の過去問(1987年)を解きながら,
縦波の波長や振幅を,縦波のグラフから読み取る練習をしましょう。

鹿児島大学の過去問(1997年)の一部も載せておきました。
是非,自分の答案をつくった上で解答・解説に進んでください。
そして,この問題に関連した「常識を覆す観測結果」も紹介しています
興味深い事実がここで明らかになります。


【波の性質 その6】
「縦波(疎密波)」(実戦問題)
 千葉大学医学部(2014年) 過去問解説

入試問題を解くことで,縦波の基本を押さえていきましょう!
千葉大学医学部の過去問(2014年)です。
縦波を縦波表示のまま解かせたいときは,
どうしても図が多くなります。
横波のように,複数の時刻の波形を一つの図に入れることができない
からです。

ところで,千葉大学入試問題の出題者,
この問題を20分で解くのも大変なのに,
さらに試験時間を短くするのは止めてください!
千葉大医学部の理科のこの年の試験時間は,
2科目120分(この問題は20分で解かなければならない。短い…)。
2020年,問題の分量は変わらないのに,2科目100分になりました。

何のために試験時間を短くしたのか。
受験生にはじっくりと考える時間を与えてほしい。


【波の性質 その7】
「重ね合わせの原理」(講義・例題)
 東京理科大学 過去問解説

「重ね合わせの原理」で説明される現象は,
私は最も波動らしい現象だと考えています。

「重ね合わせの原理」を間違って使っている人も見受けられるので,
東京理科大学の過去問を通して,
作図方法を確認しておきましょう。

「重ね合わせの原理」および「波の独立性」から,
「かめはめ波」の必勝法が見えてきます(笑)


【波の性質 その8】
「位相・波の式」(講義・例題)
 岡山大学<改題> 過去問解説

波の干渉(強め合い,弱め合い)を語る上で重要な物理量「位相」。
実は,位相を使わず干渉を論じることも可能なのですが,
その説明にはどこかウソが入り込みます。
本格的に干渉を理解したいのであれば,
「位相」は避けて通れません。

物理教員が波動分野で最も教えにくいと感じている
(と私が想像している)のが「波の式(正弦波の式)」です。
なぜそう思うのかというと,2000年代から2010年代に
「波の式(正弦波の式)」が教科書から消えていた時期
があったからです(教えるべき内容から削除されていた)。
2変数関数やからねぇ…。
あれを丸暗記させるのであれば,確かに難しい。

「波の式」は覚えるのではなく,毎回,導き出すのです。

動画も観てください! 「位相」をかみ砕いて説明してみました。

「波の式(正弦波の式)の導出」を動画でも行っています。


コラム:「正弦波の式」

「正弦波の式」で思い出しました。
大学生の時の模試採点のバイト。
理不尽な採点基準に憤りを覚えたものです…。
一時期話題となっていた
「新テスト」の採点者に大学生のバイトを採用するかどうか問題。
採点者が正しく理解していても,
基準がダメならばそのシステムは破綻している場合がある
ということは覚えておいた方がいいです。


【波の性質 その9】
「位相・波の式」(実戦問題)
 富山医科薬科大学 過去問解説

富山医科薬科大学の過去問で「波の式(正弦波の式)」の導出の練習です。
「ある媒質の単振動のグラフ」から「波形のグラフ」
が描けるようになろう!
(逆もできるように,やね)
三角関数が苦手な人用に,途中式も示してあります。
三角関数の公式は覚えるのではなく,毎回導いてもいいね。
大した労力やないよ。


【波の性質 その10】
「定常波の式の導出」(講義・例題)
 福井大学(1996年) 過去問解説

「波の式(正弦波の式)」から「定常波(定在波)の式」を導きます。
通常,三角関数の「和積の公式」を使いますが,
少し工夫すれば「加法定理」だけで導出できます。
定常波の式を見ると,位置 𝒙 と時刻 𝒕 が分離されています。
それぞれの三角関数のふるまいに注目してください。
例題の福井大学の過去問(1996年)では,
波の式(正弦波の式)の位相部分をより深く考察していきます


【波の性質 その11】
「定常波の式の導出」(実戦問題)
 青山学院大学 過去問解説

「波の式(正弦波の式)」から「定常波(定在波)の式」の流れを
青山学院大学の過去問を解くことで,再度確認しよう。

定常波の「節」(「腹」)が半波長ごとに現れることは重要。
この事実が「2点波源問題」や「弦の固有振動」につながっていきます。

解説動画もつくってます!


【波の性質 その12】
「二点波源問題<経路差>」(講義・例題)
   徳島大学(1993年)<改題> 過去問解説

二点波源問題(波の干渉)をまずは「経路差」で議論できるようになろう。
強め合いの条件や弱め合いの条件は,
その式だけ見たら「呪文」です(笑)
「物理ってなんだか難しいなぁ」と思わせるには,
この条件式を見せればいい。

「物理を知らない日本人にとって,
 物理が『呪文』になってしまっている。

 『訳の分からないもの』の代表が物理なんだなぁ」
と感じることが多いです。
テレビドラマでの扱い方にそれが現れています(ツイート参照)。

下の動画は,二点波源問題の経路差による説明です。
【講義】内容とほぼ同じです。参考にしてください。


【波の性質 その13】
「二点波源問題」(実戦問題)
 金沢大学(2011年) 過去問解説

二点波源問題はまずは図を描くことが大事です。
その際,波源間にできる定常波の節と腹を考えよう
これで解決する問題も多いのです。
この金沢大学の問題は,
腹線上を移動する山の速さについて考察する問題が含まれています。
元の波の速さより速くなるという,
なかなか興味深い結論が出てきます。


二点波源問題<経路差>(練習問題)

二点波源問題の練習問題です。
PDFファイルは問題&解答で,その下は解説動画です。


【波の性質 その14】
「二点波源問題<位相差>」(講義)・(例題)
 名古屋大学(2020年)<一部> 過去問解説

二点波源問題(波の干渉)を「位相差」で議論できるようになろう。
位相で考えると,
同位相波源でも逆位相波源でもどちらも同じ解法です。
(反射が絡んでくる問題でも同じ解法です)
この名古屋大学の問題を通してそれを体感してください。
この問題は「位相」を前面に押し出した内容となっています

訂正: 2つ目の投稿で「二点波源問題<経路差>」という題名
をつけていますが,これは「二点波源問題<位相差>」の間違いです。

下の動画は,二点波源問題の位相差による説明です。
【講義】内容とほぼ同じです。参考にしてください。


【波の性質 その15】
「個数差 → 位相差」(講義)・(例題)
 東京大学(1989年) 過去問解説

「個数差」は途中で波の速さが変化する設定などで有効な考え方です。
通常,「位相差」は「光路差(もしくは 経路差)」から求めるのですが,
【講義】で「個数差」から「位相差」が求められることを示したあと,
例題を解いていきます。
特に,設問Ⅱにはいろいろなアプローチがあります。
解説・別解で紹介した以外の解法も考えられると思います。


【波の性質 その16】
「平面波の反射・干渉」(講義・例題)
 大阪大学(1992年)<改題> 過去問解説

平面波の反射・干渉は実際に実験をしてみれば
何が起こっているのか分かるのですが,
問題図だけでは,なかなかイメージしづらいようです。
補助線の引き方のコツさえつかめれば,大丈夫!

「節線(腹線)がなぜ,壁に平行に等間隔に並ぶのか?」
元の問題にはなかった問題をつけ加えてあります。

さらに,問題を解いたら分かりますが,
壁に平行な方向に進む進行波の速さは,
元の波の速さを超えています。
これは非常に興味深い。
この平面波が光だったら,それは「光速を超える」
ということを意味します。本当にそんなことが起こるのでしょうか?
(光速を超える現象については,「音波」のドップラー効果で
 扱う予定です。お楽しみに~。)


【波の性質 その17】
「平面波の反射・干渉」(実戦問題)
 早稲田大学教育学部 過去問解説

平面波の反射・干渉の典型問題をもう一問。
解説動画も参照してください。
最後の2問(問7,8)は,波の基本式にこだわった解説としました。
(別解もあります)

平面波の反射・干渉は,作図をすることから始まります
波面で構成された「ひし形」に注目すると,
さまざまな物理量が見えてきます。
少し時間を経過させ,ひし形を動かすと,
定常波や反射板に平行に進む進行波の様子もとらえられます。


【波の性質 その18】
「屈折(屈折の法則)」(講義)・(例題)
 センター試験本試験(2015年) 過去問解説

「屈折の法則」(スネルの法則)の導出がこの講義の目標ですが,
屈折率の定義からていねいに見ていきましょう。
これは,教科書的な「屈折の法則の導出問題」ですが,
いろいろと疑問の残る導出法となっています。

屈折という非常に興味深い現象は,
光波で「プリズム」や「レンズ」に応用されます


【波の性質 その19】
「屈折(屈折の法則)」(実戦問題)
 東京大学後期日程(2004年) 過去問解説

「屈折の法則」は,どの教科書を見ても,
入射波の波面(が境界面に触れて)から屈折波の波面(となる)まで
の議論から導いています。
ところが,光波での薄膜の干渉問題などでは,
その間に含まれる入射波と屈折波の波の数が等しい(光学距離が等しい)
ことを「屈折の法則」で説明しているものがあります。
これはおかしな話です。
「屈折の法則」を導出する際の「大前提」が成り立つ理由を
「屈折の法則」に求めているのですから
(苦笑)

この無限ループから抜け出すことができるキーワードが
「フェルマーの原理」
(1658年) です。
「光がある点から別の点に進むとき,2点間の光学距離が最短になる
ような道筋を進む」
(その後,「光学距離が極値をとる」に修正された。)
(1661年,フェルマーの原理による光の屈折の説明がなされた。)


【波の性質 その20】
「ホイヘンスの原理・衝撃波」(導入・例題)
 首都大学東京(2007年)<改題> 過去問解説

「衝撃波」は特別な波のように感じますが,
ホイヘンスの原理で説明できます。
さらに,衝撃波の波面は等速度運動します
マッハ角について述べたあと,「マナブ追加問題」を用意しています。
私の解答例を超える答案が出てくるのを待っています(笑)


以上です。お疲れさまでした。
マナブ

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