暗記できているのに成績が伸びない…その理由、わかりますか?
「暗記できているのに、なぜか成績が伸びない」──そんな不安を抱える親御さんも多いかもしれません。私もこれまでの指導のなかで、テスト直前まで一生懸命用語集や参考書を丸暗記していたのに、テストで思うように点数が取れず落ち込む生徒を何人も見てきました。暗記そのものが悪いわけではありませんが、最近の問題は単なる知識の羅列だけでは解けない、深い思考を要するものが増えています。だからこそ「思考ファースト」の勉強法にシフトしないと、いつまでたっても“点数に直結しない苦しい暗記学習”から抜け出せないのです。
たとえば、歴史の問題で「ある戦いが起こった理由」や「それが社会に与えた影響」を問われたときに、年号と名前だけを覚えていても解けません。「なぜその出来事が起きたのか」「結果として社会はどう変わったのか」を筋道立てて考える訓練が必要です。英語でも、単語帳で単語を詰め込むだけでは長文読解で苦戦します。単語の意味だけでなく「本文の文脈」「筆者の主張」をしっかりと推論しながら読まなければ、問題意図を見誤ってしまうのです。
「問題集を何周も解いて同じ問題を覚えるだけ」では太刀打ちできない問題が、入試では当たり前のように出題される時代になりました。つまり、テクニックの暗記ではなく、学んだ知識を組み合わせ、新しい解法を“自分で創り出せる力”こそが求められているのです。それは大学受験や社会で活躍するためにも欠かせない基盤。暗記だけに偏っていると、こうした思考プロセスを鍛える時間が奪われてしまい、結果として成績が頭打ちになることが多いのです。
思考ファーストの勉強法とは、まず考えてみること。答えがすぐにわからない問題に出合ったとき、ヒントや類似する知識を探して「なぜそうなるのか」「どこでつまずいているのか」を掘り下げる姿勢を大切にします。もちろん、子どもが自力で答えにたどり着くのは簡単ではありません。でも「なぜこうなるの?」と親御さんが一緒に問いかけてあげたり、子どもが説明するのを聞いたりするだけでも、思考力は確実に育まれます。むしろ、親御さんがすぐに「これはね、〇〇だから~」と結論だけを言ってしまうと、子どもは考える前に答えをもらう習慣がついてしまい、思考を深める機会が失われます。
さらに、思考力を伸ばしていく過程では、どうしても試行錯誤が増えますから、スピードも落ちるかもしれません。最初は「早く覚えちゃった方が手っ取り早い」と感じる場面もあるでしょう。それでも、ここで腰を据えて「どうしてかな」「自分はどう思うか」と考えさせる指導をしていくことこそが、真の学力を育てる道です。結果的にテストや入試だけでなく、人生の大切な場面でも役立つ“自分で考えて動く力”が身につきます。
高校受験は子どもにとって大きな挑戦ですが、テクニックに追われるばかりでは本質を見失ってしまいます。暗記を重視するより、思考にエネルギーを注ぐ学習へとシフトしてみてください。いわば「自分の頭で深く考え、納得する」勉強への転換です。
子どもの将来を思うと、親としては焦りも出てくるでしょう。でも、目先の点数のためだけにたくさんの知識を詰め込んで、その先に何が残るのか。自分でも何が正解かよくわからないまま暗記を繰り返す日々を、今このタイミングで変えてみませんか。いまこそ、“暗記ファースト”から“思考ファースト”へ切り替える絶好のチャンスかもしれません。ぜひ、その一歩を踏み出していただけたらと思います。子どもの「なぜ?」「どうして?」を親子で楽しむ、そんな学習姿勢こそが最終的に大きな差を生むと、私は信じています。