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Dave Berry『This Special Sound of Dave Berry』
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デイヴ・ベリー。ローリング・ストーンズなどと同じデッカ・レコードのシンガー。すごく聴きやすい60年代イギリスのポップスで、全体としてはポピュラー寄りでありつつ、ノリのいい曲も入っている。やはりというかなんというか、この時期の歌唱力のある若いシンガーは特にその傾向が強いのだけど、R&Bのスタイルを本領としつつもその路線はなかなか受け入れられず、レコーディング・アーティストとしてはポップで軽い楽曲や、ポピュラー・ヴォーカルのような若干古めかしい曲を唄っていた方らしい。実際このアルバムにはゲーリー・ルイスの「Green Grass」のカヴァーが入っていて、元々の曲が良いので楽しく聴けてしまうが、このシンガーの個性とマッチしているとはちょっと言い難い。
このアルバムをどういう経緯で発見したのかというと、ジェリー・ゴフィンとキャロル・キングのコンビにしてはちょっと知名度の低い「So Goes Love」という曲をキャロルのデモ音源集『The Legendary Demos』で知って、誰が最初に歌ったのかが気になって調べた結果、ここに行きついた。先のデモ音源集には「Pleasant Valley Sunday」や「Crying in the Rain」といった有名な楽曲に混じって収録されていた。モンキーズやタートルズが採り上げて結局ボツにしたり、ウォーカー・ブラザーズからソロに転じたジョン・ウォーカーがファースト・アルバムで歌っていたり。実はもうとっくにレコードで聴いていた曲でお恥ずかしい限りだった。ここで聴けるデイヴ・ベリーによる初出バージョンの「So Goes Love」も実に素敵な出来。ビブラフォンみたいな音がすごく不穏で妖しい。
プロデュースは同じくデッカ所属のトレメローズなども手掛けたマイク・スミス。デッカから4枚ほど出ているアルバムのうち、この作品は単独でのCD化はされていない。もしかしたら編集盤などである程度はフォローできるのかもしれないが、とにかくありがたい。どうやらレコードはモノラル盤しか出ていないようだが、配信ではいくつかの曲はステレオミックスになっている。
ジャケットの画家、Emmerich Weningerのdiscogsはこちらhttps://www.discogs.com/ja/artist/3559946-Emmerich-Weninger