『ジャングル大帝 劇場版』1997
『ジャングル大帝』の劇場版。それまでのTVシリーズとは一切つながりのない長編オリジナルで、原作通りの結末を忠実に映像化するという触れ込みだったという記憶があります。いま思うと、ディズニーの『ライオン・キング』があったからこそ成立した企画なのだろうと思います。でも、なんと言っても話としてはこちらが先ですから、こうして堂々とオリジナルであることを主張するのは大事なことです。
原作通りにやるということが地味な印象に繋がっていて、映画が公開された時にはそれほど話題にはなっていなかったはずです。声優陣が超豪華で、エンディングテーマが松たか子さんで(役者じゃなくて歌だけで参加というのもまた豪華。いま思うと作詞が坂元裕二さんだったりもする)、かなり鳴り物入りで作られたのだろうなという印象をいま観ても感じます。
ところがこれが大傑作だったのですよ。映画館では観ていなくて、後にTBSで放送した時に観て、もっと早く観ればよかったと後悔したのを憶えています。立川談志さんが声を演じている悪役のハム・エッグがとにかく凶悪なのですよ。そうそう、この談志さんの起用も今で言う「タレント吹替問題」のように最初は不安に思っていたんですがとんでもない。ハム・エッグが持つユーモアと残忍さに命が宿ったという感じで、最凶最悪のキャラクターに仕上がっています。
スタッフに生前の手塚先生を知る人が集まって作られたというのも大いに納得です。陳腐な言葉ですけど、いわゆる原作愛というやつですよね。キャストもスタッフも、今となっては亡くなった方も何人もいらっしゃって、このタイミングで作られたことの価値が時を経るごとに高まっているような気がしています。