「センス」や「生まれ持ったもの」を理由に歌を諦める必要はない!プロを教えるボイストレーナーが語る!
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今回は、ボイストレーナーの長塚全先生と、サックスプレイヤー、沢井原兒先生の対談をお送りします。
長塚先生はバンドのボーカルや俳優としてのご活動を経て、現在は、都内のプライベートスタジオでプロの歌手や声優のボイスレッスンを行っているトップボイストレーナーです。
対談では、長塚先生がボイストレーナーとしてのお仕事を始められたきっかけや、実際に指導されている理論的なボイストレーニングについて、また、今の日本のボイトレ事情やそれに対する思いなどをたっぷりと語っていただきます。
ぜひ最後までお楽しみください。
(以下、敬称略)
【対談者プロフィール】
長塚 全(ナガツカ ゼン)
1バンドのボーカルとして活動、俳優としてロックミュージカル「ピンクスパイダー」(グローブ座)や「TIGER & BUNNY THE LIVE」(Zepp DiverCity)「THE SOUND OFTIGER & BUNNY」(東京国際フォーラム)等へ出演、その後都内ボイストレーニングスタジオで5年間トップトレーナーとして活動、2018年から渋谷に自身の理論的ボイストレーニングを追求するプライベートスタジオをオープン。
音声学&発声学を基盤とし感覚的ではない理論的なメソッドで声や歌の問題解決とレベルアップを行い、多くのプロ歌手や声優を指導中。
また「芸能音声教育」の質の向上に向け音声や言語、感情を扱う大学教授達と連携を取り音声の研究にも携わる。
沢井原兒(サワイ ゲンジ)
20代より多くのジャズバンドに参加。
アルバムのプロデュースは40枚を超える。
矢沢永吉/RCサクセション/鈴木雅之/加山雄三/今井美樹/米倉利紀/REBECCA/中村雅俊/上田正樹/シーナ&ロケッツ/吉川晃司/小林克也 他、Stage Support / Produceを行う。
インストラクターとしてはヤマハ、音楽学校メーザー・ハウスなどで40年以上。現在は株式会社MOP代表、IRMA役員。
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沢井:今回はよろしくお願いいたします。
長塚:よろしくお願いいたします。
沢井:月並みな質問からさせて頂きたいんですが、長塚先生は、元々声に関するお仕事である歌手や俳優のお仕事を経験されてきて、現在はプロのボイストレーナーとしてご活躍されていますよね。なぜボイストレーナーになったのかそのきっかけを教えていただけますか?
長塚:実はボイストレーナーになったきっかけは、本当に誇れるものではなくて、元々歌などのお仕事をやっていたのですが、それだけでは食べていけないのでずっとアルバイトをしていたんです。
でも、ある時に「僕はずっとこのまま技術で食べていくことができないんじゃないか」と思って、アルバイトというものを全部やめたんですよ。
それで、「何でも良いからとにかく技術で食べよう」と思って、最初はセブンイレブンのコピー機で新日本プロレスのブロマイドを売るという仕事をしていたんです。
その傍ら、まだボーカルと役者をやっていたのですが、その時に習っていたボイストレーニングの先生の下で働いていたボイストレーナーの方が、たまたま一気に辞めてしまった時期がありまして、その先生に習い始めてから本当に1、2回のタイミングで「あなた先生やりなさいよ」って言われたんです。
沢井:それはその先生が、長塚さんがボイストレーナーに向いていると思ったからですよね?
長塚:そうだったのかもしれないですね。
まだその先生からほとんど何も習っていない状態だったので、言われた時にびっくりしてしまいました。
元々僕はボイストレーナーという仕事だけはやることは無いなと思っていたんですが、その方はプロを教えている先生だったので、なかなかそういう先生の弟子になるっていう機会も無いなと思って、「やるか!」と決心しました。
沢井:それはいくつの時ですか?
長塚:34の時ですね。
沢井:先生を務めるには、基本的に教えるということが好きじゃないとなかなかできないのではと思いますが、その辺はどうだったんですか?
長塚:もともと教えるのは好きで、相談されたことに答えるとか、バンドのメンバーとかにも「こんなステージングするとかっこいいよね」と提案しながら話すのもすごく好きでした。
沢井:なるほど。
きっかけとしては、習っていたボイストレーニングの先生に「先生になりなさいよ」と言われて、そこから色々と学んで、ボイストレーナーとしての活動を開始されたんですね。
実際に先生から学んだり、生徒に教えていく中で、ボイトレで1番大事なことは何だと考えていますか?
長塚:ボイストレーナーになった最初の頃は、きっかけとなった先生のメソッドや言い方を一言一句変えずに全部覚えてそれを生徒に教えていたんです。
でも、それは結構感覚的なボイストレーニングだったので、教えていく中で辻褄が合わなかったりとか、「どうやって教えたら良いんだろう」っていう部分が出てきてしまったんです。
そこで音声学というものに出会って、しっかり理論的に教えると言う風に方向転換したんです。
なので、結果的に僕が1番大事だと思うのは、まずは理論かなと思っています。
沢井:理論というのは、人間の体でいうと声帯をいかに技術的に上手く鳴らすかということですか?
長塚:まず、教える側として考えると、「そもそも声とはどんな仕組みで出ていて、どこの筋肉が関わっているか」「この筋肉とこの筋肉が関わるとこういう音になる」っていう理論を熟知していないと、しっかりとしたレッスンはできないと思いますね。
沢井:スポーツのような感じなんですね。
長塚:そうです!
完全にスポーツ医学と一緒で、海外だとボコロジーという呼び方をする「発声学」というものがあるんです。
内容は、スポーツ医学の声版という感じですね。
沢井:なるほど、そうなんですね。
ということは上手く筋肉を使わないと無理が来てしまう、ということですね?
長塚:そうですね。
すごく無理が来たり、出したい声が出せなかったりします。
実際の人間の耳はそんなに正確ではないので、感覚で教えていると、発声周りの感覚と実際起きていることにかなりズレが出てきて、上手くなりにくいんですよね。
だから、理論的に「こうだよ」というものを明確に教えないと、良いパフォーマンスには繋がらないかなと思います。
沢井:感覚的じゃなく、理論的に理解することが大事だということですね。
長塚:そうです。
ただし、既に感覚的にできていて、自他ともに素晴らしいと思えるパフォーマンスができる方はそのままその感覚を大事にしてもらいたいと思います。
ですが、僕が最初そうだったように、感覚で教わっても全然できない人は、どうしても「センスがない」とか「持って生まれ持ったものが違うから」という風に思ってしまったり、思わされてしまったりします。
僕はそういった状況になってしまうことが良くないと思っています。
沢井:ということは、センスがないとかそういうような理由で諦めなくても良いということですか?
長塚:はい。僕は本当にそう思っています。
例えば、バスケットボールやバレーボールとかは、身長が高い方が間違いなく得だと思うんですけれど、歌やお芝居など、声で人を感動させるために必要なものを考えると、発声器官があって肺があって、横隔膜があってお腹の筋肉があって、声帯周りの筋肉があって、舌があって、唇、鼻がある…って、構造上他の国の方たちと比べてもそんなに差がない部分なんですよ。
だから、個人差とか持って生まれたものは、そこまで大きく関係していないと思うんですよね。
沢井:ということは、理論さえ理解して、きっちりトレーニングをすればみんな良い声が出せるということですか?
長塚:そうですね。例えば同じアジアで比べても、日本もものすごく上手い方は沢山いらっしゃいますけど、やっぱり韓国とかフィリピンとかの方が、上手い人が多いんですよね。
例えば韓国は、一般の人でも歌がとても上手いんです。
聞いた話ですと、日本で小さいころ野球などを習う感じで、韓国では歌を習うらしいんですよ。
なので、生活の中に歌が入っているんですよね。
あと芸能教育も小さい頃から厳しくやっていて、その中の一握りがようやくK-POPみたいな所に進出できるという感じなので、教育内容が違うということが「歌の上手い人が多い」という現状に大きく関係していると思います。
沢井:じゃあ、日本もそういう教育をしっかりやれば、他の国に負けないということですか?
長塚:本当にそう思います。
「なんとかして日本の発声教育を、もう1段2段底上げしたい!」というのが今の僕の夢ですね。
沢井:良いですね!頑張っていただきたいなぁ!
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今回の対談では、ボイストレーナーとなった意外なきっかけと、長塚先生が考えるボイストレーニングにおいて最も重要なことについてお話いただきました。
ボイストレーニングと聞くと、私も例に漏れず、「良い発声を感覚で教わりそれを自分で習得していく」というようなイメージがありました。
しかし今回の対談に立ち合わせていただいた中で、確かに、どうなっているかわからないものを感覚だけで自分のものにしていくということは、よくよく考えてみるとかなり難易度の高いものですし、一度上手く行ってもずっとその感覚を保ち続けるのはさらに難しいことだと思いました。
その点、長塚先生の「理論に基づき発声の仕組みを理解した上でトレーニングを重ねるレッスン」は、段階を踏んで納得しながらレベルアップをしていけるので安心感があり、何より「持って生まれたものやセンスはあまり関係ない」という言葉にとても勇気付けられました。
次回も引き続き、長塚先生と沢井先生の対談の様子をお届けします!
お楽しみに!
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