カンデル神経科学1章 解説
0.カンデル神経科学について
Principles of Neural Science, 6th Editionという、世界中の神経科学の研究室に置いてある医学書の日本語翻訳版です。約1600pあります。
神経科学に興味がある人は読んでみると良いかもしれません。
全64章です。
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1.カンデル神経科学1章(脳と行動)の概説
この章では分子生物学的にミクロに説明するのではなく、解剖学的なマクロな説明と脳科学の歴史的な説明が主です。
1.1 脳と行動の関係については2つの相反する見解がある
ニューロン(神経細胞)が神経系の基本的な構成単位ですよっていうニューロン説が19世紀末に唱えられました。
1950年代半ばに電子顕微鏡が導入され、ニューロン説は確固なものとなる。
(電子顕微鏡は電気を使う顕微鏡。小学校とかで使う光を照らしてみる光学顕微鏡より遥かに解像度が高い。)
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行動に関する心理的な考察には、歴史的に2つの説が存在します。
1つは有名なデカルトさんが考えた二元論です。心は人間に特有な意識体験で、脳やその他の肉体機能とは別物ですよ!ってのが彼の主張です。
要は心と身体は別物だと考えたんですね。
心を、松果体を介して脳と交流する霊的な存在だと信じていたそうです。
現代の哲学や神経科学的には違うらしいです。
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2つ目の説が、1800年ころにFranz Joseph Gallが唱えた、”脳は心の器官であり、あらゆる精神機能は脳に由来する”というものです。
大脳皮質が精神機能に対応していることも主張していたらしいです。
このGallさんは、幼少期に暗記が得意な同級生の眼が突出していることに気づいて、頭蓋骨の形状から脳機能を調べようとしたらしいです。
そんなGallさんの意志を受け継いで、フランスの生理学者のFlourensさんが、実験をしたところ、脳機能全体論が生まれました。
脳の全体があらゆる精神活動に寄与している、というものです。
で、この後にこの説も批判されて、最終的にコネクショニズムという考えが出てきます。脳機能は特定の領域で局在しているんやっていう主張です。
うーん、よくわからないですね。てか、翻訳が読みにくい・・・。
調べてみると、二元論に対しては唯物論(精神現象を物質的な脳の働きに還元する)が主流らしいです。
また、脳機能全体論に対しては、脳は機能局在してるけどそれがネットワーク的相互作用してます!!って説が支持されています。(言われてみればそうですね)これがコネクショニズムですかね。
ニューラルネットワークを思い出してもらえると分かりやすいかもしれません。
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1.2 脳は異なる機能を持つ領域に分けられる
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脳の主要な構造は、大脳・間脳・中脳・小脳・橋・延髄です。
大脳と小脳の表面には、大脳皮質と小脳皮質と呼ばれる、神経細胞が折り畳まれたシートみたいなのがあります。脳のしわしわの部分ですね。
そんな大脳皮質くんの下に、大脳基底核や扁桃体などがあります。
ここら辺の機能とかは別の章であると思うので飛ばします。
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前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉といった分類もあります。
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大脳皮質については以下の2点の特徴があります。
・各大脳半球は体の対側の感覚や運動に関与する。(これは神経が交差しているためです。進化的に何か意味があるのかも?)
・左右の大脳半球の外見は似ているが完全に左右対称というわけではない。
1.3 認知能力の局在に関する最初の有力な証拠は言語障害の研究から得られた
失語症の研究から大脳皮質領域の研究は始まった。フランスの神経学者Brocaは、失語症の臨床症状を死後に見つかった病変部位と関連付けた。Gallの骨相学とは異なる神経心理学を作った。
1861年にBrocaは、単語を発音することやメロディーを口ずさむことはできるが、文法的に正しく話すことや完全な文章を作ること、考えを書き表すことができない、タイプの失語症患者を調べた。すると、左前頭葉後下方に病変が見つかった。(現在ではブローカ野と言われている)
また、1874年にドイツの神経学者Wernickeは、逆に単語を並べることはできるが言語を理解できない、受容の障害を持つ失語症患者を調べると、側頭葉と頭頂葉の接する部位に障害が見られた。
その後、Wernickeは現在考えられている分散処理を唱えました。
その後もなんか色々唱えられてきたみたいです。
20世紀初頭のドイツではBrodmannという人が、ヒトの大脳皮質を52の領域に分けました。
1950年までは脳機能全体論が主流だったみたいです。その理由は多くの学者が支持してたみたいですね。アメリカの心理学者Lashleyは、量作用の原理を提案しました。彼はラットが特定の脳領域を破壊しても迷路をクリアできることから脳機能全体論を唱えましたが、現在では見直されています。
1930年代の後半にネコの身体を触ると、触る部位によって異なる箇所の大脳皮質が電気活動を起こすことなどが分かり、機能局在の方が支持されていきました。
今日ではfMRI(機能的磁気共鳴画像法)などで非侵襲的に健常者の脳の分析ができるようになり、ある機能を発揮する際に少しでも活性化される領域が分かるようになった。
1.4 精神機能は脳内の基本処理単位間の相互作用の結果である
脳内では以下のようにネットワークを形成しモジュール処理が行われている。
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ここら辺の話は以下の本を読んでみるのがおススメです!統合情報理論(IIT)っていう、人間の意識に関する理論を紹介した本です。
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ざっと説明すると、トノーニという人が人間脳が意識を持つ理由を、情報統合量の単位φを使って定量化して説明しようとしています。(たしかそんな感じ)
トローニによれば以下の要素を満たすと意識レベルが高くなります。
①揺さぶりをかけられるほど異なる反応を示す。(情報)
②構成要素の片方に伝わった情報がもう片方に伝わる(統合)
つまり、情報量はその事象に代わって起りえたのに起こりえなかった数が大きければ多いです。無限の可能性があるほど良いです。人間の暗いという発言には、無限の可能性が他に両立しえます。デジカメでは、モジュールのONとOFFがあるだけなので、2^nの情報量。
統合の部分はまさしくネットワーク構造の話ですね。このネットワークは、対称性が崩れていて複雑であれば複雑なほど、統合されていることになります。
これを計測するために、fMRIではなく新たな計測手段が必要などが述べられていました。
ここに書いたのは私が読み取った内容ですので、正確に知りたい人は上の本か以下のトノーニの論文を読んでみてください。
また、IITを研究している研究室が実は東大にあります!!!(これ見つけた時はまじビビりました)
「意識 = 情報」なのか? 〈意識の統合情報理論〉を東京大学准教授・大泉匡史が解説 | 佐藤喬「クオリアをめぐる冒険」 | よみタイ
Oizumi Lab - MEMBERS
気になる方は、是非読んでみてください。
1.5 まとめ
神経科学の歴史の話が主でした。あんまり面白くはないですね。
次の2章が”遺伝子と行動”というタイトルです。どっちかっていうと分子生物学ではって感じなので軽く説明して次に行こうと思います。
反響あるとやる気出るので、是非いいねお願いします!!!