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【大きな木】

真面目な人ほど ストレスに犯されやすく
鬱になる可能性も大きいです
 
 
それは全てに対して
真っ向から向かってしまうから
 
 
柳のように流れに任せることができれば
どんなに楽だろうか
 
 
そんな想いを詩にしました
 
 
【大きな木】
 
僕が産まれる前から
ここには大きな木がある
 
 
樹齢50年
ビル4階程の大きさだ
 
 
保育園へ行くときも
小学校へ行くときも
電車や車で出掛けるときも
僕の部屋の窓からだって見えている
 
 
どんなに暑くても 枯れることなく
頭に雪を被っても 振り落とすことなく
突風が吹いたって 
真っ直ぐその身で受け止める
 
 
僕は思った
彼はきっと 真面目なんだ
 
 
背を向けることもしない
挫けることもしない
ただひたすら 自分の役割を全うする
真面目でがんばり屋なんだと
 
 
ある日 過去最高の嵐が来た
 
 
家は揺れ 窓も揺れ
雲は光を遮って
無差別に吸い込む 混沌の渦は
今も尚 そのスピードを上げる
 
 
殴り付ける 水のつぶては
ノイズのように音を消す
 
 
木は無事だろうか
 
 
そんな心配を他所に
僕は眠りについた
 
 
『さようなら』
 
 
そんな声で目が覚めた
 
 
時計は6時
カーテンの隙間から 朝日が射す
嵐は過ぎたようだ
 
 
窓を開け 僕は目を疑った
あの大きな木が無い
 
 
木があった方角で
ざわめきが起こっている
僕は慌てて飛び出した
 
 
集まる人混みを掻き分け
その場所へ向かうと
横たわる木の姿があった
 
 
『耐えきれなかったんだ』
 
 
周りに立つ柳の木は
垂れながらもその身を残している
 
 
真面目な木は
雨を受け止め 風を受け止め
全てを真っ向に受け止めた
 
 
そして遂に倒れてしまった
 
 
柳のように しなやかに
重たい荷物を下ろしたら
風が吹いても 立ち向かわず
その身を風に任せたら
 

そうすれば倒れずに済んだのに
真面目な彼には それが
どうしても出来なかったんだ
 
 
そして
あれから10年
 

小さな命が芽を出そうとしている

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