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皆川明「つづく」展を見て

先日、ミナ ペルホネン/皆川明の「つづく」展を見に行った。以前、東京の現代美術館で同じ展覧会を見たことがあるが、神戸で展覧会があると聞いて行く機会をうかがっていた。会場は神戸市灘区のHAT神戸にある兵庫県立美術館で、安藤忠雄氏の建築物の中でも個性的なものの一つだ。新型コロナウィルス対策のため事前予約が必要だったが、会場の広大さに比べて見学者は少なく、かえって落ち着いて展示を楽しむことができた。

美術館の中が広いので展示が整然と陳列されていたおかげか、それとも二回目の見学だからなのか、今回は企画の意図をより明確に感じられた気がした。意匠を凝らした洋服やその生地、丁寧に描かれた絵画や挿絵、詳細なデッサンの図面と実際の生地の比較、実験的な宿所まで、皆川明氏のクリエーションの広がりに改めて驚く。そうした展示に込められた、ものづくりへの思い、テキスタイルへの愛情、製造工程における職人たちの真摯な姿勢、そして洋服を着る顧客の喜びに満ちた顔。デザインはエモーショナルな体験に繋がっていくための道筋を示すもの、という同氏の主張が強く打ち出されていた気がした。

洋服のデッサンたち

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絵画のような作品も

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カフェの求人票にも氏の人柄が感じられる

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満足して家路につこうとした時、ふと見上げると安藤忠雄氏の建築に関する展示があることに気がついた。一日のうちに二人の巨匠の展示を見る機会も、そう多くない。陽はすでに落ちていたので急いで見ることにしたが、結局は長居することになった。

あまり期待せずに入ったが、予想に反して中の展示は充実しており、兵庫県立美術館の中にこうした常設展があるとは思わぬ発見だった。大阪の光の教会、直島の地中美術館、ベネチアのプンタ・デラ・ドガーナ、淡路島の淡路夢舞台といった代表的な建築に関する模型がある他、安藤忠雄氏のこれまで作品が時系列で紹介されていた。一見すると、どれを見ても安藤建築の書式が貫かれているようにも見える。しかし、それは作品の個性を規定する作家の根幹が確かに存在するという実証であるような気がした。

活躍する領域が違っても、デザイナーとして、そして建築家として、多くの仕事に取り組み様々な作品を残すことで、自身を雄弁に表現する豊かな蓄積を持つことができる。同じ表現者の末席にいる者として勇気づけられる一方で、自身の仕事を通じて何を表現したいのかと考えさせられる経験でもあった。皆川明氏の表現を借りるならば、「つづく」のは表現することだけではなく、その悩みもまた「つづく」ということなのだろう。

帰り道、ひとまず行く先の悩みは横に置いて、今晩の食事という目先の楽しみに頭を切り替えた。

皆川明氏の豊かなテキスタイル・デザインが垣間見れる

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