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アテニュエータで真空管ギターアンプをもっと自由に

真空管ギターアンプは大きな音で弾かれる前提で設計されているので、自宅で低音量で使用する際に良い音を出すためには工夫が必要です。音量が制限された環境では実はアンプの設定自由度は極めて低く、Gainを少しでも上げたいならMasterをとことん低く設定せざるを得ないのが実情です。

対策としてよく知られているのは、スピーカーに流れ込む電流の一部を熱に変換することで音量を落とすアテニュエータという装置を用いる方法です。

アテニュエータ導入にあたってはステージあるいはスタジオで使用する設定に対して「何dB下げられるか」「音質は劣化しないか」という2点に焦点が当たりがちですが、真空管アンプの歪み具合はGainとMasterの値の組合せで大いに変わりますので、自宅での使用においては色々な設定を試せることのメリットの方が大きいと思われます。

そこで、ここでは実際の音量が同じになるGainの値とMasterの値の組合せを調べ、アテニュエータによって如何に設定の自由度が上がるのかを示そうと思います。

私が所有している20Wの真空管アンプヘッド Egnater Rabel 20 にはもともとワット数を1〜20Wの範囲で調整できるノブが付いています。これに加えてスピーカー行きの出力を100%〜18%まで調整出来るPalmer Power Pad PDI06 MkIIというアテニュエータを用います。

※ 単純計算だと1W-100%の音量は20W-5%に相当するはずですが、実際には20W-35%と同じくらいの音量になりますので、今回は便宜上1Wまでアンプのノブを絞っても7Wまでしか絞れていないと考えることにしてグラフを描きました。

  • 音声信号はストラトの7F Bのコードをルーパーに入れて繰り返し再生しました

  • 音量はスピーカーの前に置いたiPhoneのアプリで監視しました

  • Masterを11%〜100%の範囲で5水準設定し、同じ音量レベルになるGainの値をワット数とアテニュエータの段階を変えながら探してプロットしていきました。

ワット数が20Wに固定された普通のアンプにおけるGainの調整可能範囲は20Wの線上のみとなります:
 Master 100%: Gain 17.4%
 Master 50%: Gain 30.4%
 Master 11%: Gain 43.9%
かなり限定されてますね。Gainを50%にまで上げたい場合、Masterは10%以下に絞らなくてはなりません。

ワット数の調整が可能なEgnater Rabel 20の場合、Gainの調整可能範囲は20Wの線と7Wの線に挟まれた領域となります:
 Master 100%: Gain 17.4%-26.8%
 Master 50%: Gain 30.4%-38.0%
 Master 11%: Gain 43.9%-65.5%
少し広がりました。もしGainを50%にまで上げたい場合、Masterは10% - 20%くらいから選べます

アテニュエータ PDI06 MkIIを用いるとこれが劇的に広がり、Gainの調整可能範囲は20Wの線と1.3Wの線に挟まれた領域となります:
 Master 100%: Gain 17.4%-49.3%
 Master 50%: Gain 30.4%-100%
 Master 11%: Gain 43.9%-100%
もしGainを50%にまで上げたい場合、Masterは10% - 100%の範囲から選べます。

ということで、アテニュエータを用いることでMasrerとGainの値の組合せを広範囲に選べるようになることがお分かり頂けたと思います。

Masterを上げるとパワーアンプでの歪みが加わるので、Gainで調整するプリアンプの歪みと組合せることで音作りの幅が大きく拡がります。

ご自身のアンプから良い音を引き出す一助となれば幸いです。

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