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ガロアのディアジオ特集と、ジャパニーズウイスキーの現状、その法制化について

 風邪が治らず、体調イマイチの中、イヤーブック、ガロア、コニサークラブ、ウイスキー検定の問題作り等々に追われてきた。イヤーブックは来週の入稿まで待ったなしの作業が続いているが、ようやくこの2~3日で、巻頭の「この1年を振り返って」という、総評原稿を書き終えた。原稿用紙400字詰めで、約15枚。ほぼ例年どおりの分量だが、どうしてもデータを必要とすることが多く、その数字の確認に時間を取られてしまう。2024年の日本ウイスキーの輸出金額については、昨年11月までのデータは出揃ったが、12月分がまだ発表になっていない。その発表は1月30日で、それを待って数字の修正をするつもりだ。

 ただ11月までを見ても対前年比15%くらいのダウンで、最終的には460億円前後に落ち着くと見ている。2022年が過去最高の561億円だったことを考えると、たった2年で100億円くらい落ちたことになる。輸出第1位の国も中国からアメリカに変わって、中国は第3位となる見込みだ。対して輸入ウイスキーの金額・量は輸出を大きく上回っていて、特に量が、近年大きく伸びている。もちろん、これはほとんどがスコッチだと思われるが、ではスコッチは、そんなに日本で売れているだろうか。そのうちの一定の割合は、日本で日本のウイスキーに混ぜられ、売られているのだろう。

 一社については、このところマスコミでも注目されはじめ、20日の月曜日には朝日新聞の大阪経済部からも取材を受けた。マクアケの件も、この間の一社の動きも、かなり詳細に追っていて、改めて一社の立ち上げの経緯、なぜ今、ジャパニーズウイスキーの法制化が必要なのか、どんな方法で法制化するのか、法制化したのち、どんな活動をするのかなど、1時間半ほど話をした。詳しくはまた新聞に載ったら、お報せしたいと思うし、イヤーブックの2025年版の巻頭の総評でも、そのことに触れている。ポイントはただひとつ。日本ウイスキー、ジャパニーズウイスキーと呼称する場合は、原料(原酒)は日本国内の蒸留所で造られたウイスキー以外は、使ってはいけないということだ。

 あたり前のように思われるかもしれないが、現在日本で流通しているウイスキーの7割くらいが、そうではないだろうし、海外のスーパーや酒屋では、「明確な」や「渋い」といった奇妙キテレツなジャパニーズのニセモノが我がもの顔で流通している。現在一社では、60名近くいる評議員の皆様に、海外に行ったら、ぜひそのようなウイスキーを見つけて、本部に報告してほしいとお願いしている。つい最近もスペインで、その手のウイスキーを見つけた。

 ウイスキーはここ3~4年、世界的にバブルであった。しかし、すでにいくつか警鐘が鳴らされている。スコッチの輸出も2022~23年をピークに(ピーク時は日本円にして1兆円を記録した)、30%近く落ちているし、日本も他人事と考えていたら痛いめに合う。それを実感したのは、昨年の中国であった。1日で3ヵ所の蒸留所を回ったが、現在中国で稼働中の蒸留所が20以上あり、計画中も含めると40数ヵ所になるというのだ。

 たとえば、そのうちの1つの中国福建省の大芹蒸留所はポットスチル20基を擁する巨大な蒸留所で、年間生産能力は台湾のカバラン蒸留所の900万リットルに匹敵する。しかもカバラン同様、シングルモルトに特化した蒸留所である。さらに驚くべきは、現在第2蒸留所として広東省に計画されている蒸留所の規模は年間3000万リットルに近いという。すでに蒸留所の隣に1000室規模のホテルまで建てている。とにかく、あと4~5年で中国ウイスキーは質・量ともに日本ウイスキーに迫るか、それを凌駕してゆくだろう。いや10年以内にスコッチやアイリッシュと同等、あるいはそれ以上になるかもしれないと私は考えている。

 さらに、その中国がこの2月にも、モルトウイスキーで樽熟2年、グレーンは1年とレギュレーションを決めようとしているのだという。ウイスキーを造りはじめたばかりの国ですら、それは当たり前のこととして考えている。ちなみに台湾はシングルモルトで2年、インドは1年である。対して日本は世界5大ウイスキーといっているが、本格ウイスキーを造りはじめて100年以上となるのに、法的根拠を持った、いわゆるグローバルスタンダードとしてのレギュレーションを持っていない。だから海外で、そうではないニセモノが横行するし、それはこれからも変わらないだろう。

 気がついたら、日本のウイスキーだけが、世界からソッポを向かれてしまう。そうならないことを願うばかりで、そのためにもグローバルスタンダードな「法的規制を伴った真のジャパニーズウイスキー」が、必要なのだと思っている。

 と、日本のウイスキーの先行きばかりを憂いているわけにもいかず、とにかく眼の前のイヤーブック、そしてガロアの原稿を書きまくっている。次号ガロアの巻頭特集は、再びスコッチのモルトウイスキー蒸留所で、今号と次号の2回に分けて、ディアジオ社の30の蒸留所を取り上げる。まずはクライヌリッシュ、ブローラ、グレンオード、ダルウィニー、ブレアアソール、ロイヤルロッホナガー、ティーニニック、オーバン、タリスカー、そしてグレンキンチーで、その10ヵ所の蒸留所と、ディアジオ社、およびその前身であるDCL社の歴史と現状について、原稿用紙にして70~80枚ほど書いてしまった。乞うご期待である。

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