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イヤーブックとガロアの取材で山形の遊佐町を訪れる

3連休明けの先週火曜日からはミーティングが集中していた。さらにガロアの企画で、このところグレンロセスやデュワーズのダブルダブルのテイスティングや、さらにアメリカのABバイオテックの新しいウイスキー酵母のテイスティングも行っていた。ABバイオテックはマウリも傘下に持っているので、同社のピナクル酵母を進化させたディスティンクションという、8種類のウイスキー酵母(ドライ)を今回新発売。そのテイスティングを依頼されていたもので、詳しくはすべて、次号のガロアを見ていただきたい。

 火・水とミーティングやテイスティングに忙殺されていたが、19日の木曜日は午前中、ウイスキープロフェッショナルの試験問題を作り、午後4時すぎのフライトで山形の庄内空港へ。今回はライターのOさんが一緒で、空港でレンタカーを借り、その日は酒田の駅前のホテルで一泊。翌20日の金曜日に、まずは遊佐町の北端にある月光川蒸溜所を訪れる。イヤーブックの取材も兼ねており、土砂降りの雨の中、9時半に到着。

 月光川を訪れるのはちょうど1年ぶりで、前回は無かったウェアハウスが出来ていて、今回はそれも含めて、たっぷりと見せてもらった。今年の夏、山形の庄内地方を洪水が襲ったが、蒸溜所の横を流れる月光川は無事だったという。月光川と書いてゲッコウガワではなく、ガッコウガワと読ませるのは、ガロアでも紹介したが、これは月光菩薩からきているネーミングだ。山形では鳥海山を薬師如来と見たて、その鳥海山から流れ出る2本の川に月光菩薩、日光菩薩の名前を付けているのだ。

 日光川はたしか日向川と字が変えられているが、こちらの川は先の豪雨で氾濫している。まさか字を改めたせいではないと思うが...。それにしても高校の修学旅行で行った奈良の薬師寺が懐かしい。国宝の薬師三尊が鎮座していた。

 それはともかく月光川蒸溜所の取材の後、すぐの所にある立川製麺所で名物の板そばを食べ、午後いちでこんどは遊佐蒸溜所へ。前回はコロナ前だから4~5年ぶりということになるだろうか。2018年の生産開始からもう8年になる。月日の経つのは本当に早いものだ。今回も佐々木社長の案内で、じっくりと見て回り、今年の10月に出る新商品をテイスティング。これはこれまでのシングルモルトではなく、初のブレンデッド・ジャパニーズウイスキーだ。

グレーンは遊佐製ではないが、国内のある蒸留所で造られた正真正銘のジャパニーズウイスキーだという。さらに、ウイ文研がウイスキー検定合格者向けに新しく詰めた、グラバーコレクションの完成品も用意してくれていた。サンプルをテイスティングして樽を選んだのは私だが、完成品を見るのは初めて。今回も前回同様、グラバーコレクションの1本で、ラベルは鮮やかな黄色。選んだ魚はクロダイ(黒鯛)である。理由は庄内藩のクロダイ釣りが、釣り師の間で有名な話だからだ。

 庄内藩は内陸の藩だが、江戸時代、武士の鍛錬のひとつとしてクロダイ釣りが奨励された。藩士は竹の竿をかついで山を越え、庄内の海に出て、磯や浜からクロダイを狙っていた。今と違ってカーボンのロッドやリール、ナイロンラインなんて無かった時代である。磯浜の波打ち際に立ち、伸べ竿で狙うクロダイは、なかなか手強い釣りだったに違いない。

 私事だが、私の祖父が釣りキチで、山に行って自ら竹を選び、それを竿にしてクロダイを狙っていた。佐渡の磯から狙うクロダイだが、幼稚園児の頃、その祖父のお供で釣りに行ったことがある。竹の竿も重かったが、そこに30~40cmのクロダイが掛かると、小さな子供には上げるのも難しかった。クロダイの引きは強烈で、それゆえに熱中する人も多い。そんなことを思い出してしまった。結局、時間ギリギリまで取材し、そのままレンタカーで空港にもどり、夕方のフライトで東京に帰ってきた。

 で、この3連休はいよいよガロアの原稿書き。巻頭のアイリッシュの蒸留所、アーダラ、クローリー、ボイリーク、そしてグレートノーザン、スレーンの5本の原稿を書いてしまう。と同時に並行して、中国版のウイスキー検定のテキスト作り、さらにウイスキープロフェッショナルの問題作りも行う。どちらも締切が迫っていて、休むわけにはいかないからだ...。


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