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中国浙江省千島湖で開かれた国際フォーラムに参加し、中国ウイスキーに圧倒される

9月に入ってあまりに忙しく、また社内でスタッフの移動もあり、このブログを書くことができなかった。毎日数件のミーティング、そして原稿、あらゆる案件を処理しなくてはならず、時間がまったく取れなかったからだ。

9月5日から9日までの5日間、中国の浙江省・杭州市の千島湖に行っていた。中国初の国際ウイスキーフォーラムが3日間、千島湖畔のリゾートホテルで開かれ、そこにスピーカーとして招待されていたためだ。中国を訪れるのは1990年代半ばにウーロン茶取材で福建省に行って以来、ほぼ30年ぶりとなった。

5日の昼に羽田を発って上海。そこから中国版新幹線の高速鉄道に乗って2時間ちょいで淳安県の千島湖駅。そこから車で40分ほどの所に目指すホテルがあった。

千島湖は1950年代のダム建設で誕生した人造湖で、千の島があること(誕生した)で、そう呼ばれるのだとか。湖畔には多くのリゾートホテルが立ち並び、中国随一の観光地となっている。今回のフォーラムは中国酒造業組合が主催したもので、世界中から多くの専門家、関係者が招待されていた。3日間に渡り100人近い人たちが壇上でスピーチを行った。私のテーマはジャパニーズウイスキーの現状と、中国ウイスキーの可能性、そのポテンシャルに
ついてということで、スピーチ前日の6日の金曜日には、朝から千島湖にある3つの蒸留所を見学、取材に訪れた。

ひとつは千島湖蒸留所で、これはオーナーが昆明出身の中国人。すでに生産開始していて、将来的にはモルトでだけでなく、グレーンウイスキーも造るという。そればかりか、驚いたことに隣に100室規模のホテルも建設中で、滞在型のウイスキーツーリズムを目指すという。

もうひとつは、すでに「千島金」というジンを製造販売している千島金久醸造・蒸留所で、こちらは台湾人オーナーである。ウイスキーやジンの製造コンサルにはスウェーデン人のヘンリックさんが当たっていて、ヘンリックさんとも話ができた。みずからもスウェーデンで「HVEN」というクラフトウイスキーを造っている。そして最後に訪れたのが、アンガスダンディー社の淳岸蒸留所。ここはまだ工事中だったが、その建築プラン・コンセプトを聞いて、そのユニークさ、スケールに驚いてしまった。他にも千島湖エリアには合計10ヵ所くらいの蒸留所の計画があり、杭州市や淳安県の担当者は、「いつか、ここをスペイサイドのような一大ウイスキー産地にしたい」と、その抱負を語っていた。

蒸留所見学だけでなく7日のスピーチの合間をぬってフォーラムに参加していた各企業のブースも見て回ることができた。

今回は一般愛好家が対象ではなく、ほぼすべてがサプライチェーン関係の会社だったが、一番多かったのが設備、生産施設などを作るスチルメーカー、そして樽を供給する樽会社、クーパレッジである。スチル関係が6~7社。樽関係も同じく6~7社は出ていただろうか。これには驚いてしまった。

というのは120近い蒸留所がある(計画中も含め)日本にはスチルメーカーはたった1社しかなく、樽を作って販売するメーカーも有明産業の1社しかないからである。まだ稼働中の蒸留所が10にも満たない中国に、すでにそれだけのサプライチェーンがあることは驚き以外の何モノでもない。しかも、その一つ一つが、例えば日本の三宅製作所やスコットランドのフォーサイス、そして有明産業よりはるかに大きいのだ。

そしてもうひとつ。中国には日本と同じようにミズナラが生えている。ミズナラはクエルクスモンゴリカという学名で、もともと中国東北部からロシアの沿海州にかけて広く分布しているオークの木である。話を聞いたところ北朝鮮との国境沿いにある長白山脈が、ミズナラの一大産地で、この材を使って樽を作るメーカーがすでに中国に10社近くあるというのだ。

畏るべし中国だ!! たったの3日間の滞在、弾丸取材だったが、そのスピード感、スケール感、そして中国人のウイスキー造りにかける情熱、パワーに圧倒された3日間だった。
 
  


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