珠おどるホロライブ
ホロライブがにわかに五目並べで沸いている。
幼少期から五目並べをやり、中学で連珠の世界に飛び込んだ自分からしたら、この上なく嬉しい。
非常に楽しく「最弱決定戦」を見ることが出来た。
ただし、エンタメにより過ぎていて、いささかショーじみてるなぁ、と思ってしまうのもある。
エンターテイメントとしては圧倒的に正しい。
正しいけれど…と思ってしまう悲しい連珠マンなのだが、しかし、コレほどまでに五目並べが注目されて、さらにホロライブ有志から「連珠ルールで最強戦やりたい」と意見が出てきたのは、世の連珠関係者の人々は一番歓迎すべき点ではなかろうか。
試合でも、ときのそらちゃんは真面目な手を打っていたし、ちゃんと定石手にも触れてきていた。
試合参加は無かったが、星街すいせいちゃんも「(最強戦やるなら)連珠ルールでやろう!」と提案していた。
そして、中でも音乃瀬奏ちゃんが秀逸で、連珠ルールに賛成します!と表明した上で、その後自身の配信で五目並べのソフトを遊んでいたのだ。
その中で、私が今の連珠界隈に詳しくないので、周りの言説から察するしか無かったのだが、どうも元名人がスナイプしたらしく、きゃなでぃ(音乃瀬奏の愛称)と一戦交えていた。
最弱戦に関しては、散々YouTubeの切り抜きで「面白い」ところは擦られるだろう。どうせだから、自分はこうしたホロライブの「強いところ」の勘所について、文章で「推察できる意図」を汲み取ってみたい。
さて、この一戦。きゃなでぃは白。元名人が黒である。
受ける白の二手目、そして続ける黒の三手目で「定石形」と言われる「星」や「月」の名がついた「基本珠型」が作られるのだが、名人の選択したこの形は「疎星」である。
先手にしろ後手にしろ、対等に勝負するには非常に良い手で、流石に打ち手の力量にもよるが「どちらが有利」みたいな展開があまりない。序盤どちらか一方に勢いが傾いたとしても、劣勢側が挽回する局面が十分にある…という形だ。つまり、長期乱戦も上等、という構えになる。
名人がこの手を打ったのは、推測でしかないが「長く楽しみましょう」という意味合いが大きいと邪推する。余りにあっさり終わってはもったいない、と思ってしまうからだ。
きゃなでぃは、トボけたおちゃらけキャラではあるが、かなり頭が良い。頭が良いので、五目並べにおける勝ち方はうっすら分かっているものの、展開の定石研究や、ある種の必勝形の暗記などは、おそらくしていない。こうなると、もはや勘づいてはいるのが流石と言わざるを得ないが…
そういう相手に、力量を試しつつ、あわよくば長く戦って面白くできる定石を選んだというのは、物凄く好感だ。
あと、何よりこの形は「対戦で好んで打つ人がいない」という(認識古かったらすみません…自分の現役時代は30年前なんじゃ…)形でもある。
これで花月(黒定石の展開が研究され尽くされている、と言って良いと思う)にとったら、それはそれでブーイングものだろう…と思うし、自分も「大人気ないなぁ」という感想になっただろう。
ただ残念なことに、きゃなでぃは察しの良さを悪いほうに発揮してしまい、相手の段位を知ってしまった恐れと深読みで、どうして良いか分からず…という展開になってしまった。
そして、迷いに迷って打った四手目、初手黒の裏側に回る位置を選ぶ。
実際にはここを取ると、後手の後手に回ってしまう。この後中央に展開される黒の布石に対応が間に合わなくなるからだ。ただでさえ一手遅れる白石なのに、名人相手にそれ以上に遅れるのは致命傷となる。
案の定、黒は中央に布石となる手を打ち、きゃなでぃは防御に回るしかなく、結末はあっさりと四三に取られた。
勝負自体は実にあっけないものだが、しかしきゃなでぃが偉いのは、引いた方に止める(連珠における格言にもなっている)という基本を踏まえていたことだ。
相手が手を引いた方、伸びている方を止めてやる、というのは五目並べの「わからん時」でも有効打となり得る。
こうした戦法を見ているので、名人側が「どうしよう」と少し迷っていたのが分かった。次の手であっけなく四三を取れるタイミングだ。あれは煽りというより、ちょっとした逡巡にも見えた。もうちょっと長く打ちたいな…という。
しかし、きゃなでぃは反転攻勢に出られるタイミングでも、しっかり踏みとどまって吟味していた。ここまで見せている打ち筋から、下手に加減すると逆にやられかねない形でもある。
かくして、四三。きゃなでぃはやはり、取られた事を即気づいて「ええー?」と驚いていた。
ここで、ホロライブの面々が拘っていた「必勝法」だが、連珠ルールにおいては、黒は四三を作る事にある。白は禁じ手がないので、三三、四三、四四、長連などなんでもありだ。なんなら黒へのハメ手もできる。
これを把握した上で、相手の打つ場所を限定してコントロールし、自分の攻めが途切れないようにして、勝ち筋にもっていく…というのが流れだ。
こうした高度な試合になると、少々面白くないかなー?と思うかもしれないが、最弱を決めたのだから最強を決めても良いじゃない、という発想は十分アリだろう。
何なら、誰が一番強いか、というのはゲーマーなら誰しも気になる。
ホロライブ五目並べ最強戦、ぜひやって欲しいなあ。