『インド神話物語 -マハーバーラタ- 』 デーヴァダッタ・パトナーヤク 著
こんにちは。写真家のMiNORU OBARAです(自己紹介はこちら)。本日は、久しぶりの『おすすめ書籍シリーズ』。
さて、今回は『インド神話物語 -マハーバーラタ- 』(原書房)のご紹介です。書籍は上下の全2巻。
『マハーバーラタ』とは、紀元前400年代から紀元後400年代ごろに成立した古代インドの叙事詩です。10万を超える詩節が全18巻にまとめられています。ヴィヤーサという人物が語り、ガネーシャが書き記したと言われていますが、詩が歌われている期間が800年間にも及ぶことから、ヴィヤーサひとりではなく、多数の人間が関わっているとも言われています。
また、『マハーラーバタ』は、膨大に詠われた神を讃える詩のほんの一遍に過ぎず、それ以外の詩節の全てを知る資料はもうこの世には存在しないと言われています。
『マハーバーラタ』は、バラタ王族の王位継承を巡る18日間に及ぶ大戦争「クルクシェートラの戦い」の話がそのメインですが、インドの宗教や哲学における重要な書物として、ヒンドゥー教のもっとも重要な聖典とされています。
それもそのはず、内容はかなり哲学的で、人間の存在意義の深淵に幾度となく触れています。中でも、インドに於いて『神の歌』とされる『ヴァガヴァット・ギーター』を歌い上げるシーンは、圧巻です。(戦いの最中に神の化身クリシュナによって歌われます。)
「マハー」は「偉大な」の意。つまり、『マハーバーラタ』とは「偉大なバラタ族の物語」。インドではドラマや映画に当然のように取り上げられているようです。
クルクシェートラの戦いは、いとこ同士であるカウラヴァ兄弟とパーンダヴァ兄弟のと間に起こる、王位を巡る戦い。とはいえ、全18巻の中でクルクシェートラの戦いの描写は13章から16章のみです。13章以前ではそれぞれの兄弟たちの生い立ちの物語が、17章と18章では戦いを生き抜いた者たちの余生が描かれています。
18章のどこをとっても、とても哲学的で、普遍的真実を剥き出しにされているようで面白い。
以前、記事にしたこのエピソードも、この『マハーバーラタ』の序章として語られています。
クルクシェートラの戦いは、18日間の激闘末に決着を見ます。そして、勝者には王位と国が与えられます。
しかし、「この戦いに本当に勝者はいたのか?」
それが、『マハーバーラタ』の本当のテーマでもあるように思います。
この物語の語り手とされる、ヴィヤーサの弟子であるヴァイシャンパーヤナは、こう言います。
この世には二種類の勝利があります。それは物質的な勝利と霊的な勝利です。物質的な勝利には敗者が存在します。しかし霊的な勝利には敗者は存在しません。
また、こうも言います。
争いは怒りから生じ、怒りは恐れから生じ、恐れは信念の欠落から生じます。
ヒンドゥー教では、伝統的にプルシャールタという「人間の存在意義」を思考します。プルシャールタは4つに分けられます。それは、アルタ(経済的な活動)、ダルマ(社会的な活動)、カーマ(喜びの追求)、モークシャ(精神的な活動)です。
モークシャは、つまりは悟りの境地。
『マハーバーラタ』は、人間の存在意義の深淵に触れ、モークシャにたどり着くまでの物語です。
最初の方は、とにかくカタカナが多すぎて速読どころではありませんが、それにも時期に慣れてきます。
全18章からなる膨大な古代物語は、現代人にとても読みやすく編纂されています。
読み終えたあと、僕は自分の精神世界が広がっていくのを感じました。
世間の雑音や騒音に心を乱されてしまいがちな世の中だからこそ、手にとっていただきたいおすすめの1冊です。
本日も文末までお付き合いいただき、ありがとうございました。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。
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