『アフターコロナに会いましょう -note版- 』 #10 - タイ 山奥の小学校で -
こんにちは。写真家のMiNORU OBARAです(自己紹介はこちら)。記事をご覧いただきありがとうございます。本日はシリーズ『アフターコロナに会いましょう -note版- 』を久しぶりに更新。第10話です。
バックナンバーはこちら。
第10話は、タイの山奥での出逢い。
このシリーズは、写真集『アフターコロナに会いましょう -完全版- 』とともにお読みいただくとより一層お楽しみいただけます。
さて、今回のエピソード、まずは朗読版をご覧ください。
彼女に出逢ったのは、タイを旅している時のことでした。
その時僕は、タイのずっと北の方の山奥の村に滞在していました。その村できた友人に紹介された船頭さんに連れられてやってきた村。その村の小学校で出逢いました。
英語も日本語も全く話せない船頭さんのとても小さな木の船に乗せられて、川を昇りました。
船の上にはもちろん、僕と船頭さんの二人だけ。黙々と船を漕ぐ船頭さん。船先が水を切る音以外は何も聞こえないほど静かな川をひたすら上の方へ進みました。
その頃は何月だったのでしょうか。もう忘れてしまいましたが、真上から降り注ぐお日様と、水の音、のんびりと後ろに過ぎていく景色とそして、過ぎていく時間までもが、とても綺麗でした。
2時間は進んだでしょうか。船頭さんは船を岸につけました。
どうやら村に到着したようでした。
川から一本道が伸びているだけのとても小さな村に見えました。ここはミャンマーとの国境にほど近い山奥のようでした。
村の人たちは、笑顔で僕を迎えてくれました。
タイにはたくさんの山岳民族が住んでいます。そのため、言語も複雑で、タイ人同士でも言葉が通じないほどと聞きます。タイ語もロクに話せない僕が、この村の言語を話すのは不可能でした。
それでも、通じ合えた気がします。
村には、道が一本しかありませんでした。僕はその道をずっと上まで登りました。
「小さな村なんだな。」と思っていると、僕を見つけたおじさんが、笑顔で手招きしてくれました。
そして、おじさんに近づくと、おじさんは自分の家と隣の家の間のとても細い隙間を指差しました。
どうやらこのおじさん、「この先に行ってみろ。」と僕に教えてくれているようでした。
なので僕は、家の軒をくぐり、生い茂った草をかき分けて奥ヘと進んでみました。
まるで、おとぎ話のようでした。
草をかき分けて進んだ先は、広い空を木々で覆われた山の中でした。
そして、そこには、小さな教会が建っていました。
教会の脇には小さな川が流れていました。僕はその川に沿って進みました。
どうやら村はこちら側にも広がっていたようで、山の中には家々が見えました。
やがて、空が開けてきた頃、その川を向こう岸に渡る木でできた小さな橋が見えてきました。
その橋を渡った向こう側で、僕は彼女に出逢いました。
橋の向こうは眩しいぐらいの草原でした。
大きな牛が、どれだけ食べても永遠になくなりそうにないほどの草を数本ずつ丁寧にはんでいました。
そして、その片隅にポツンと建っている小学校。その手洗い場。
お昼時間の彼女は、お弁当箱を丁寧に洗っていました。最初は蛇口の水を出しすぎて水色の服を濡らしたりもしていました。
小さな手のひらを丸めてコップがわりにして、うがいをしたりもしていました。
そんな仕草を見るともなしに見ていた僕に、彼女は気がつきました。
すっかり仲良くなった僕たちは、残りのお昼休みを目一杯使って、草原や橋や学校で遊びました。彼女がガイドになって、僕を案内してくれました。
雲ひとつないいい天気。風もないのに漂ってくる草の香り。それだけじゃなくて、照りつける太陽も良い匂いがするんだと気がつきました。
学校のみんなとも友達になりました。
帰り際には、僕を橋のところまで見送ってくれました。
始まりは、家と家との間の細い隙間。
おじさんが教えてくれた道は、まるで秘密の抜け穴のように、物語みたいな素敵な世界に通じていました。
橋のところで別れる時、村の言葉で彼女は言いました。
「次は、一緒にお弁当を食べようね。」
小さな手を大きくたくさん動かして、彼女はそう伝えました。
きっと僕たちは、そう約束をしました。
なので、僕はまたここに帰ってこなければなりません。
そうです、これは、『アフターコロナに会いにきた』への序章です。
本日も文末までお付き合いただき、誠にありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう!
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