テレビ番組記録「サイエンスZERO 漂着するクジラたち ストランディングがひも解く海の世界」
テレビっ子なので、これはと思った番組を保存したり記録したりしています。
■NHK番組HP(2023年7月9日放送)
https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/episode/te/W671J8G3Q3/
「サイエンズZERO」はよく観るほうで、今回はNHK「おはよう日本」で予告もあり拝見したのですが、体系的に理解でき、良い機会となりました。
また、解説の田島先生を「淀ちゃん」の時にワイドショーで拝見して魅力的だったので、その点も良かったです。
出演解説:国立科学博物館 田島木綿子(ゆうこ)研究主幹
鯨類の研究者で、これまで2,000頭以上のクジラを解剖
クジラ等の漂着報告を受けると現地に駆けつけ、標本として持ち帰ることもある
「ストランディング」
クジラなどの海岸漂着を「ストランディング」という(stranding=座礁)
江戸時代から「寄鯨」という言葉もある
集団漂着は「マスストランディング」と呼ばれる
日本で年間300件報告されている
クジラなどは生態に不明点が多く、ストランディングで研究が進む
原因調査ケーススタディ
2023年4月、千葉にイルカ「カズハゴンドウ」がマスストランディングした
もともと南方の海域に生息し、春先に食物を求め北上する
親潮と黒潮のぶつかる場所は、プランクトンを求め多くの魚が集まる魅力的な餌場
が、その沿岸付近で水温の低い冷水塊が発生するため、低体温症のような状態になるケースもある
回収したのは6頭で、解剖完了した3頭中の1頭に重篤な寄生虫性肺炎が見つかり、死因となった可能性がある
但し、それがマスストランディングの原因だと断定できない
クジラは社会性が高いため、体調悪化の仲間をかばって予定外の場所に行くことも考えられる
最近、人間のアルツハイマーと同じ所見がイルカの脳から見つかった
もしそれが群れのリーダーの場合、誤った方向に行ってしまう可能性も(病気リーダー仮説)
2018年由比ヶ浜に上がったシロナガスクジラは生後6ヶ月程度の乳飲み子で、恐らく母親とはぐれてしまったと考えられる
その個体の中からは、小さなプラスチックも見つかった
新種発見につながったケース
2008年にストランディングしたクジラを分析したところ、新種であった(クロツチクジラ)
DNAから新種であると想定されたが、骨格標本があったことで他種と異なる特徴を持つことが分かり、新種認定につながった
2003年にはヒゲクジラの新種「ツノシマクジラ」も発見した
クジラの胃は複数の部屋に分かれている「複胃」だが、解剖すると過去の論文と異なる数だったりするなど、未解明のことは多い
クジラから検出される高濃度汚染物質
愛媛大学の生物環境試料バンク(通称:es-BANK)には、1,500種・12万個体のサンプルが冷凍保存されている
ストランディングの個体もあり、クジラから残留性有機汚染物質(POPs)が高濃度で採取される
POPsは体内で分解されず蓄積し、内分泌系や免疫系に有害
大気や土壌流出で海に出たPOPsが、生物濃縮の頂点であるクジラなどに蓄積される
クジラは体脂肪が多く、脂に溶けやすいPOPsが皮下脂肪に蓄積しやすい
また代謝能力が弱いため排出が困難なのも、高濃度となる要因
海洋環境調査への寄与
鯨類は、海洋汚染をいち早く敏感に映し出す指標となっている
2004年に国際条約でPOPsが禁止され、その後は臭素系物質も禁止登録されている
が、2009年に禁止された臭素系「PBDEs」を調べると、それ以降も検出濃度が高止まったまま
禁止されていない類似構造の化合物も、鯨類から複数見つかっている
母乳を介して子へPOPSが渡ってしまう危険性や、免疫力を落とすリスクもあり、ストランディングに影響してる可能性も
その因果関係を証明することが難しいが、捕獲個体数が増えれば研究も進む
他にも、TBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」出演時のポッドキャストがありました。
https://www.tbsradio.jp/articles/69445/
知的ながら盛り上がったトーク内容ですが、なんと田島先生はご両親がTBS社員だったそうです。
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